https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjspe/2005S/0/2005S_0_800/_pdf/-char/ja
SiC の臨界切込み深さに及ぼす結晶方位及び UV 照射の影響
Influence of Crystal Orientation and UV-Ray Irradiation on Critical Depth of Cut of SiC
ジャーナル名 & 発行年
2016 年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集, 2016
著者 (第一 & 最後の著者のみ)
Toshiyuki KOTSUJI, Keishi YAMAGUCHI
所属機関 (第一著者のみ)
Kyoto Institute of Technology
概要 (Abstract)
シリコンカーバイド (SiC) は次世代パワー半導体材料として期待されるが、高硬度と化学的安定性のため加工が困難である。本研究では、UV 照射を利用した研削法 (UV アシスト研削) を考案し、SiC の臨界切込み深さ (Dc 値) に及ぼす結晶方位および UV 照射の影響をスクラッチ試験によって調査した。その結果、UV 照射により Dc 値が増加することが確認された。
背景 (Background)
SiC はワイドギャップ半導体として高い電気的・機械的特性を持つが、その高硬度と安定性のため加工が難しい。特に、ポリシングや CMP (化学機械研磨) に膨大な時間がかかるため、前工程での加工変質層の低減が重要である。本研究では、UV 照射による光化学反応を利用した新たな研削法を提案し、その効果を検証する。
方法 (Methods)
スクラッチ試験を実施し、UV 照射の有無および結晶方位による Dc 値の変化を評価した。
試験装置:
ビッカース圧子を用いたスクラッチ試験機
試料移動方向: X方向、Z方向
角度調整可能な傾斜ステージ
試験条件:
材料: 4H-SiC (Si-rich face)
切込み方向: [10-10], [11-23], [-12-10]
UV 照射時間: 30 分
UV 照射強度: 4300 mW/cm²
温度条件: 400℃
評価手法:
レーザー顕微鏡 (KEYENCE VK-X200) によるスクラッチ痕の観察
測定顕微鏡 (OLYMPUS STM6-LM) によるクラック発生点の測定
X線光電子分光法 (XPS, JPS-9010MC/SP) による酸化膜形成の分析
結果 (Results)
結晶方位の影響
[11-23] 方向で最小の Dc 値を示し、0.02µm であった。
SiC を延性モードで研削するには、砥粒の切込み深さを 0.02µm 以下にする必要がある。
UV 照射の影響
UV 照射なしでは Dc = 0.02µm
UV 照射 + 400℃加熱では Dc = 0.04µm (約 2 倍)
UV 照射と熱によって軟質な酸化膜が生成され、Dc 値が拡大。
XPS 分析結果
UV 照射なしでは SiO2 の形成がほとんど見られない。
UV 照射と 400℃加熱を併用すると、SiO2 の膜厚は 約 1.1nm であり、Dc 値はその 約 20 倍 拡大した。
考察 (Discussion)
UV 照射と熱による酸化膜の形成により、研削時の延性モード領域が拡大し、クラック発生を抑制できる可能性が示された。酸化膜が形成されることで法線抵抗が低減し、脆性破壊の発生が抑えられると考えられる。
従来研究との新規性 (Novelty compared to previous studies)
UV アシスト研削の有効性を初めてスクラッチ試験で実証。
400℃加熱 + UV 照射が SiC の臨界切込み深さを 2 倍に増加させることを確認。
XPS による SiO2 酸化膜の形成を詳細に分析。
限界 (Limitations)
研削時の法線抵抗の変化は測定していないため、今後の課題。
実際の研削加工における影響についてはさらなる検証が必要。
応用可能性 (Potential Applications)
高能率な SiC 研削技術への応用 (CMP 時間の短縮)
SiC を用いた次世代パワー半導体の精密加工
UV アシスト技術を活用した他の高硬度材料の加工技術開発
試験条件を教えてください
試験条件 (Experimental Conditions)
項目 条件
試料材料 4H-SiC (Si-rich face)
圧子 ビッカース圧子
送り速度 0.3 mm/s
送り長さ 2.2 mm
傾斜ステージ角度 0.05 度
スクラッチ方向 [10-10], [11-23], [-12-10]
UV 照射時間 30 分
UV 照射強度 4300 mW/cm²
試験温度 400 ℃
この条件のもとでスクラッチ試験を行い、SiC の臨界切込み深さ (Dc 値) に及ぼす影響を評価しました。