https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjspe/2005S/0/2005S_0_800/_pdf/-char/ja スクラッチ試験によるガラスの延性/脆性遷移に及ぼす雰囲気の影響調査 Effects of Atmosphere on Ductile-to-brittle Transition in Glass Scratch Tests 学会名・発表年 精密工学会 2005年 第一著者・最終著者 Toshiaki KANEEDA(第一著者) Kenji KAIDA(最終著者) 第一所属機関 Okayama University of Science(岡山理科大学) 概要(Abstract) 本研究では、スクラッチ試験と4点曲げ試験を用いて、ガラス(BK7)の延性/脆性遷移に及ぼす雰囲気の影響を調査した。表面に塗布剤(n-ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、以下アミン)を適用することで、曲げ強度が増加し、延性領域が拡大することが確認された。これにより、ガラスの延性モード加工におけるアミンの有効性が示唆された。 背景(Background) 光学部品などに使用されるガラスやセラミックスの高精度加工には、脆性破壊を抑制し延性モード加工を実現する技術が求められている。しかし、延性モード加工には極めて小さい切込み量(約0.1µm)が必要であり、加工条件が厳しくなるという問題がある。金枝らは、脆性材料の雰囲気制御により機械的性質が変化することを発見し、本研究ではBK7ガラスを用いた詳細な評価を行った。 方法(Methods) 曲げ試験 試験機: インストロン社製万能材料試験機 クロスヘッド速度: 0.5 mm/min 試料: JIS R1601規格に基づき研磨したBK7ガラス(3×4×36mm) 塗布剤: アミン、および比較対象として蒸留水 スクラッチ試験 装置: NC2次元精密切削装置 試料傾斜角度: 0.2°±0.05° スクラッチツール: ヴィッカース圧子(スクラッチ方向に対して稜線が一致) 最大切込み深さ: 10µm 観察方法: 光学顕微鏡およびAFMによるスクラッチ痕観察 結果(Results) 曲げ試験 アミンを塗布した場合、BK7の曲げ強度が向上。 蒸留水を塗布した場合、強度に変化なし。 アミンが試料表面の欠陥への応力集中を緩和し、破壊強度を向上させたと考えられる。 スクラッチ試験 スクラッチ速度が高いほど延性領域長さ・臨界切込み深さが増加。 塗布剤(蒸留水・アミン)を適用すると、延性領域が拡大し、臨界切込み深さも増加。 アミン塗布が最も効果的であり、延性領域の拡大と臨界切込み深さの増加が顕著。 アミンは潤滑作用だけでなく、表面欠陥への応力集中を緩和し、クラック成長を抑制する可能性がある。 考察(Discussion) ガラスの延性/脆性遷移は加工条件(スクラッチ速度・塗布剤の有無)に大きく依存する。 スクラッチ速度が低い場合、塑性変形領域の拡大により弾性回復量が増加し、引張応力が大きくなるため、クラックが発生しやすい。 アミン塗布は潤滑作用と表面欠陥の応力緩和により、ガラスの延性モード加工を促進する可能性がある。 従来研究との新規性(Novelty compared to previous studies) BK7ガラスにおいて、アミン塗布が延性モード加工に有効であることを示した。 スクラッチ速度と延性/脆性遷移の関係を定量的に評価した。 従来の石英ガラスでの研究と比較し、BK7でもアミンの有効性が確認された。 限界(Limitations) 本研究ではBK7ガラスのみを対象としており、他のガラス材料に対する一般性は未検証。 スクラッチ試験における摩擦や温度変化の影響についての詳細な検討が必要。 長期間の環境影響(湿度・温度変化など)を考慮した追加実験が求められる。 潜在的な応用(Potential Applications) 光学部品の高精度加工における延性モード加工技術の向上。 ガラス基板の機械的強度向上による耐久性の改善。 マイクロ加工分野における表面改質技術の開発。
試験条件を教えてください。
試験条件(Experimental Conditions) 曲げ試験(Four-Point Bending Test) 試験機: インストロン社製万能材料試験機 クロスヘッド速度: 0.5 mm/min 試料: オハラ社製 BK7 ガラス 試料寸法: 3 × 4 × 36 mm(JIS R1601に準拠) 塗布剤: アミン(n-ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド) 蒸留水(比較対象) 塗布方法: 紙製産業用ワイパーで試料の引張応力がかかる底面中央部に薄く塗布 スクラッチ試験(Scratch Test) 試験装置: NC2 次元精密切削装置 試料傾斜角度: 0.2° ± 0.05° スクラッチツール: ヴィッカース圧子(スクラッチ方向に対して稜線が一致するように設置) 最大切込み深さ: 10 µm スクラッチ速度: 100 mm/min 1000 mm/min 観察方法: 光学顕微鏡 原子間力顕微鏡(AFM)