令和3年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-16 ねじり振動系の固有角振動数

著者:副業の宮殿|製造業に携わる現役エンジニア。技術士試験対策書籍をKindleで複数出版。技術ブログ「副業の宮殿」にて製造業DX・AI活用の情報を発信中。

[解答]③

参考

回転軸まわりの慣性モーメントと固有角振動数(H26)

回転軸周りの1自由度系の運動方程式(H25)

答え:③ (\displaystyle \omega=\sqrt{\frac{k}{J}})

理由(最短ルート)

  • ねじりばね:軸ねじれ角 (\theta) に比例して復元トルク
    [
    \tau = -k,\theta \qquad[k:\ \mathrm{N,m/rad}]
    ]
  • 運動方程式(回転のニュートンの式)
    [
    J,\ddot{\theta}=\sum\tau = -k,\theta
    \quad\Rightarrow\quad
    J,\ddot{\theta}+k,\theta=0
    ]
    (軸自身の慣性は無視 ⇒ 慣性モーメントは円板の (J) のみ)
  • したがって固有角振動数
    [
    \boxed{\omega=\sqrt{\frac{k}{J}}}
    ]

エネルギー法でも同じ

[
T=\frac12 J\dot{\theta}^2,\quad U=\frac12 k\theta^2
]
→ (J\ddot{\theta}+k\theta=0) → (\omega=\sqrt{k/J})。

※円板半径を (R) とすると (J=\tfrac12 mR^2)(参考)。

詳しく教えて下さい

 

いいですね。図の装置は**ねじりばね + 慣性体(円板)**の“1自由度ねじり振動”です。式づくりを最初から丁寧に追います。


1) 物理モデルと記号

  • (\theta(t)):円板のねじれ角(微小角、[rad])
  • (k):ねじりばね定数(トルク/角度) ([,\mathrm{N,m/rad},])
  • (J):円板の回転慣性モーメント(軸まわり) ([,\mathrm{kg,m^2},])
    ※軸の慣性は「無視できるほど小さい」とあるので採用しない。

2) 復元トルク(フックの法則のねじり版)

ねじれ角 (\theta) に比例してばねの復元トルクが働く:
[
\tau_{\text{spring}} = -,k,\theta
]
符号マイナスは、変位と逆向き(元に戻そうとする)という意味。


3) 運動方程式(回転の運動方程式)

回転版ニュートンの第2法則:
[
\sum \tau = J,\ddot{\theta}
]
ここではばねトルクだけなので
[
J,\ddot{\theta} = -k,\theta
\quad\Rightarrow\quad
\boxed{,J,\ddot{\theta}+k,\theta=0,}
]
これは**1自由度の単振動(ねじり版)**の標準形です。


4) 固有角振動数

標準形 (M\ddot q + K q=0) の解は (\omega=\sqrt{K/M})。
ここでは (M\to J), (K\to k) なので
[
\boxed{,\omega=\sqrt{\frac{k}{J}},}
]
(選択肢③)


5) 単位チェック

[
\frac{k}{J};:;\frac{\mathrm{N,m/rad}}{\mathrm{kg,m^2}}
= \frac{\mathrm{kg,m^2/s^2}}{\mathrm{kg,m^2}}
= \frac{1}{\mathrm{s^2}}
\Rightarrow \omega=\sqrt{k/J};[\mathrm{rad/s}]
]
OK。


6) 解の形と意味

微分方程式の一般解:
[
\theta(t)=\Theta\cos(\omega t-\phi),\quad
\omega=\sqrt{k/J}
]
周期 (T=2\pi/\omega) で減衰なしの等振幅ねじり振動(理想化)。


7) エネルギー法(別解)

  • 運動エネルギー:(\displaystyle T=\frac12 J\dot{\theta}^2)
  • ばねのひずみエネルギー:(\displaystyle U=\frac12 k\theta^2)

ラグランジュ法(( \frac{d}{dt}\frac{\partial T}{\partial \dot\theta}-\frac{\partial T}{\partial \theta} + \frac{\partial U}{\partial \theta}=0 ))
→ (J\ddot{\theta}+k\theta=0) → 同じ結果。


8) 参考:円板の慣性モーメント

半径 (R)、質量 (m) の一様円板の軸まわり慣性モーメントは
[
\boxed{,J=\frac12,mR^2,}
]
(図の“軸心周り”)
これを入れると (\omega=\sqrt{\dfrac{2k}{mR^2}})。


9) 直感チェック

  • ばねが硬い((k\uparrow))→ 速く振動((\omega\uparrow))
  • 円板が重い/大きい((J\uparrow))→ 鈍重((\omega\downarrow))
  • 線形近似は微小角((|\theta|\ll1))が前提

必要なら、数値例や**減衰(ねじり粘性 (c_\theta))**を入れた場合の
(\lambda=-\frac{c_\theta}{2J}\pm i\sqrt{\frac{k}{J}-\left(\frac{c_\theta}{2J}\right)^2}) まで展開します。

 

回転と並進運動の式を比較すると、Jはmと対応しますか

 

はい、その理解で完璧です。

✅ 結論

回転運動における慣性モーメント (J) は、並進運動における質量 (m) に対応します。

より正確に言うと、

  • 並進運動(直線運動)の「動きにくさ」=質量 (m)
  • 回転運動(角運動)の「回りにくさ」=慣性モーメント (J)

です。


✅ 対応表(これが本質)

並進運動 回転運動
変位 (x) 角変位 (\theta)
速度 (\dot{x}) 角速度 (\dot{\theta})
加速度 (\ddot{x}) 角加速度 (\ddot{\theta})
質量 (m) 慣性モーメント (J)
力 (F) トルク(モーメント) (\tau)
運動方程式:(m\ddot{x}=F) 運動方程式:(J\ddot{\theta}=\tau)
ばね:(k x) ねじりばね:(k\theta)
固有角振動数:(\sqrt{k/m}) 固有角振動数:(\sqrt{k/J})

完全に「置き換えの関係」になっています。


✅ 直感的イメージ

質量 (m) が大きいほど動きにくいように、
慣性モーメント (J) が大きいほど回りにくい。

たとえば…

  • 同じ 1 kg でも
    → 半径 10 cm の円板より
    → 半径 1 m の大きな円板の方が回しづらい

これは「質量が遠くに分布しているほど (J) が大きくなる」ためです。


✅ エネルギーの式でも完全に対応

並進の運動エネルギー
[
T=\frac12 m\dot{x}^2
]

回転の運動エネルギー
[
T=\frac12 J\dot{\theta}^2
]

どちらも「慣性項 ×(速度)²/2」で同じ形。


✅ ばね系の固有振動数も完全対応

並進系:
[
m\ddot{x}+kx=0
\quad\Rightarrow\quad
\omega=\sqrt{\frac{k}{m}}
]

回転系:
[
J\ddot{\theta}+k\theta=0
\quad\Rightarrow\quad
\omega=\sqrt{\frac{k}{J}}
]


✅ まとめ

  • **(\theta \leftrightarrow x)(変位の対応)
  • (J \leftrightarrow m)(慣性の対応)
  • (k \leftrightarrow k)(ばね定数)
  • (\tau \leftrightarrow F)(駆動力の対応)**

だから回転運動の方程式は、並進運動の方程式を「角度版に置き換えたもの」と考えれば理解が速いです。


必要なら、
✅ 質点だけでなく棒・円板・球などの J の導出
✅ 並進と回転が混ざる複合振動の例(倒立振子など)
も解説できます!

回転による運動方程式はどのように導出されたのですか?

 

回転の運動方程式
[
J\ddot{\theta}=\sum \tau
]
(角運動量の時間微分=外力モーメント)
これは 並進運動の式 (m\ddot{x}=F) の「角度版」です。

でも、なぜこの形になるのか?
ここをゼロから導出してみます。


✅ 1. 最も基本に戻る:質点の運動方程式から導く

回転軸から距離 (r) の所にある質点 (m) を考える。

質点は円運動していて、角度 (\theta(t)) に応じて位置は
[
x=r\theta
]
と書ける(小角度だけでなく一般でも成立)。

並進の運動方程式は
[
m\ddot{x}=F_{\text{tangential}}
]

ここで
[
x=r\theta \Rightarrow \ddot{x}=r\ddot{\theta}
]

代入すると
[
m(r\ddot{\theta}) = F_{\text{tan}}
]

接線方向の力のモーメントは
[
\tau = r F_{\text{tan}}
]

両辺に (r) を掛けると
[
mr^2 \ddot{\theta} = r F_{\text{tan}} = \tau
]

つまり
[
\boxed{mr^2 \ddot{\theta} = \tau}
]

ここで
[
mr^2 \equiv J
]

これは軸まわりの慣性モーメントの定義

すると
[
\boxed{J\ddot{\theta}=\tau}
]

これが回転の運動方程式そのもの。


✅ 2. 質点がたくさんある一般物体へ拡張

剛体は質点の集まりだから、
各質点に対して
[
m_i r_i^2 \ddot{\theta}=\tau_i
]
が成り立つ。

全部足せば
[
\sum m_i r_i^2 \ddot{\theta} = \sum \tau_i
]

左辺:
[
\left(\sum m_i r_i^2\right)\ddot{\theta}
]

これは物体の慣性モーメント
[
J=\sum m_i r_i^2
]

なので
[
\boxed{J\ddot{\theta}=\sum \tau}
]

こうして一般の剛体にも拡張される。


✅ 3. もっと根本(角運動量)からの導出

剛体の角運動量 (L) は
[
L = J\dot{\theta}
]

ニュートンの運動方程式の回転版は
[
\sum \tau = \frac{dL}{dt}
]

なので
[
\sum \tau = \frac{d}{dt}(J\dot{\theta})
]

もし J が一定(剛体)なら
[
\sum \tau = J\ddot{\theta}
]


✅ 4. エネルギー原理からの導出(ラグランジュ方程式)

運動エネルギー
[
T=\frac12 J\dot{\theta}^2
]

ポテンシャル(ばねや重力など)を (U(\theta)) とすると
[
\frac{d}{dt}\left(\frac{\partial T}{\partial \dot{\theta}}\right)
+\frac{\partial U}{\partial \theta}=0
]

[
\frac{d}{dt}(J\dot{\theta})+k\theta=0
]

J が一定なら
[
J\ddot{\theta}+k\theta=0
]

これも同じ式。


✅ 5. 並進運動との比較で全体像をつかむ

並進運動 回転運動
質量 (m) 慣性モーメント (J)
変位 (x) 回転角 (\theta)
加速度 (\ddot x) 角加速度 (\ddot\theta)
力 (F) トルク (\tau)
エネルギー (\frac12 m\dot{x}^2) エネルギー (\frac12 J\dot{\theta}^2)
法則 (m\ddot{x}=F) 法則 (J\ddot{\theta}=\tau)

この“完全に対応する”構造が、回転運動の式の根っこです。


✅ 6. 最後に一言でまとめると

回転の運動方程式は、質点に対する (m\ddot{x}=F) を
「角度で書き直しただけ」から生まれた。

  • (x=r\theta)
  • (\ddot{x}=r\ddot{\theta})
  • (\tau=rF)
  • (mr^2=J)

これを組み合わせたら自動的に
[
J\ddot{\theta}=\tau
]
が出てくる。


必要なら、
✅ 慣性モーメント (J=\int r^2 dm) の背景
✅ 剛体の角運動量の空間ベクトル版
✅ 並進+回転が混ざる例(倒立振子、ロボットアーム)
も詳しく説明できます!

 

ここで mr^2 \equiv J これは軸まわりの慣性モーメントの定義。とありますが、jには1/2という係数がつきませんでしたか?

 

とても鋭い質問です。
結論から先に言うと

1点質量の慣性モーメントは (J = m r^2)(係数つかない)
円板や棒など“形のある物体”の慣性モーメントには、形状による係数がつく(1/2, 1/12 など)

つまり、「1/2 がつくとき」と「つかないとき」は状況が違うのです。


✅ 1. 1点質量の場合は必ず (J = mr^2)

たとえば、ひもで結んだ“点”のような質量が半径 (r) の円周を回るときは
[
J = m r^2
]

これは最も基本の定義。
[
J = \sum_i m_i r_i^2 = \int r^2,dm
]


✅ 2. 「1/2」「1/12」などの係数は“質量分布の形”による

例えば…

● 一様円板(垂直軸まわり)

[
J = \frac12 m R^2
]

● 一様棒(端を通る軸まわり)

[
J = \frac13 m L^2
]

● 一様棒(中心まわり)

[
J = \frac{1}{12} m L^2
]

● 中空円筒

[
J = m R^2
]

これらの係数は
[
J = \int r^2 dm
]
を実際に積分した結果によって決まります。


✅ 3. 係数がつく理由(質量分布の違い)

たとえば円板の場合:

  • たくさんの質量が「中心に近い r で」分布している
    → (mr^2) より小さくなる
    → 係数が 1/2 に

一方、

  • 全質量が外周に集中している(輪のような物体)
    → すべて r = R
    → (J = mR^2)(係数 1)

要するに
係数は「質量がどこに分布しているか」によって変わる


✅ 4. あなたが見た式「J = m r^2」はどのケースか?

前の説明で出てきた
[
mr^2 \equiv J
]
1質点のモデル の話です。

これは

  • 物体が「1つの質点」とみなせる
  • または回転運動を微小質点ごとに分解して導出している途中

という状況でした。

このときは絶対に
[
J = m r^2
]
しか出てきません(係数なし)。


✅ 5. 円板や棒の慣性モーメントに係数がつく理由を直感的に

例えば円板:

真ん中の質量 → 半径小さい → Jへ貢献少ない
外周の質量 → 半径大きい → Jへ貢献大きい

全部合わせると
[
J = \int_0^R r^2 , dm = \frac12 m R^2
]

これが係数の由来です。


✅ 6. まとめ

モデル 慣性モーメント
1点質量 (J = m r^2)(係数なし)
同心円上に質量集中(輪) (J = m R^2)
一様円板 (J = \frac12 m R^2)
一様棒(中心) (J = \frac{1}{12} m L^2)
一様棒(端) (J = \frac13 m L^2)

係数がつくかどうかは質量がどこに分布しているかで決まる。


もしよければ、
✅ 各形状の J を実際に積分で導く
✅ 動く物体の“並進+回転”の一般式
✅ 剛体の角運動量のベクトル形式
なども続けて説明できます!

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