参照:超精密加工機械の高精度化の研究

この研究論文は、超精密加工機械用の自成絞り方式空気静圧スピンドルの性能向上に関する研究結果を報告しています。自成絞り孔径をφ0.05mmに小さくすることで剛性が約1.7倍になり、空気流量は1/5になること、心振れ測定にSPAM法を用いることでmgfオーダーの修正が可能になること、スピンドルの回転数や軸受すき間の条件、材料によっては数十度の温度上昇が発生するが、熱変形量を数µmに抑制できることなどが示されています。また、軸受すき間と空気流量の調整により温度上昇を抑制する対策が有効であることを明らかにしています。

エアベアリングとは

エアベアリングは、薄い空気の層を利用した非接触の潤滑方法です。ベアリング面とガイド面の間に加圧空気を送り込み、ベアリング面側またはガイド面側を浮上させます。非接触なので機械的な摩擦や摩耗が発生せず、実質、空気の粘性抵抗のみとなります。従来の転がり軸受等接触式のベアリングと比較して、非常に小さな抵抗での潤滑を実現します。

 

参照:超精密加工機の現状と加工事例

「多軸・複合・高機能・超精密加工機および関連技術の最前線」というタイトルのもと、超精密加工機の現状と加工事例に関するものです。特に、ファナック株式会社で開発された超精密5軸加工機「ロボナノ」の機能と適用状況について解説されています。ロボナノは様々な超精密加工に対応可能で、静圧空気軸受、リニアモータ、同期ビルトインサーボモータによる非接触ダイレクト駆動を特徴としています。消費電力を極限まで抑える設計と、長期間の使用による摩耗の問題を回避する構造が紹介されています。また、超精密金型加工への適用例や、その精度と効率性についても詳細が述べられています。

 

精密工学におけるリニアモータ

リニアモーターは、直動で高速かつ高精度な動きが可能で、精密工学での利用が進んでいます。そのメリットとして、減速機構が不要で精度劣化が少なく、長尺軸が可能な点や複数のモータを一軸上に配置できる点があります。一方で、直動による外乱の影響を受けやすい、大きな力を得にくい、防塵防水対策が必要であること、点検・保守が難しい点がデメリットです。しかし、制御機能の向上や機械設計ツールの発展により、これらのデメリットは軽減されつつあります。最新のリニアモーター搭載機は、環境対策や高推力化、保守性向上など、さらなる進化を遂げています。

 

超精密加工システムの最新動向

 

 

超精密加工機およびその要素技術の今後について

この記事では、超精密加工機およびその要素技術の現状と将来展望について議論しています。特に、精密な位置決めが必要な加工機械要素の技術的進歩と、超精密加工機への適用事例が紹介されています。この中で、すべての機械要素に油静圧軸受を使用した全油静圧軸受方式と、静圧ねじ方式による高精度な送り位置決め装置が取り上げられています。また、自由曲面加工機の構成と、機上計測システムを活用した加工例についても説明されており、リニアモータ方式と静圧ねじ方式の比較、今後の要素技術の動向についても展望が述べられています。

 

静圧軸受のおもしろさ

この論文は、静圧軸受とその関連技術についての詳細な概観を提供しています。以下、各セクションに分けて要約します。

1. はじめに
著者は、大学の卒業研究時に静圧機素と出会い、その後も静圧機素の研究を続けてきた経歴を紹介。
静圧軸受や静圧案内面などの静圧機素は、超精密工作機械や計測機器に不可欠な要素として位置づけられている。
2. 静圧機素の動作原理について
静圧機素は、流体を高圧に加圧し、軸受面に供給することで軸の運転速度に関係なく流体潤滑状態を実現する。
静圧機素の特徴として、摩擦係数が低く、摩耗が生じず、軸受面の加工誤差が潤滑膜で平均化される点などが挙げられる。
3. 静圧ねじについて
工作機械の位置決めシステムにおいて、静圧ねじが重要な役割を担う。
静圧ねじの設計課題として、おねじとめねじの正確な製作、めねじのフランク面にポケットを設けること、ポケットに流体絞りを付属させることなどがある。
4. 静圧軸受の能動制御について
通常の静圧軸受と能動型の静圧軸受の違いについて説明し、能動型の静圧軸受が持つ剛性無限大化や回転精度向上の可能性を紹介。
5. おわりに
静圧機素の基本的な構造や特性の解説と、静圧ねじや能動型静圧軸受の重要性を強調。
静圧潤滑の原理を踏まえた軸受や絞りの構造設計の重要性を強調し、設計の“パズル”を解く楽しさを表現。
この論文は、静圧機素の基本原理、設計課題、およびその応用可能性に関して深い洞察を提供しています。特に静圧ねじや能動型静圧軸受の開発における技術的な課題と解決策に重点を置いています。

 

軸受けの剛性を発生させるために、作動流体を減圧するのはなぜですか?

軸受けで作動流体を減圧する理由は、静圧機素の構造と機能に基づいています。静圧軸受けでは、作動流体(通常は油や空気)を軸受け面に供給し、軸と軸受け面の間に潤滑膜を形成します。この潤滑膜は、軸と軸受け面の直接的な接触を防ぎ、摩擦を大幅に減少させます。

軸受けに作動流体を供給する際、流体は一定の圧力で供給されます。この圧力は、軸受けの面積と流体の粘度によって、軸に対して必要な支持力(剛性)を提供します。軸受け面に絞り(小さな穴やスリット)が設けられており、これを通過する際に流体は減圧されます。この減圧は、軸受け面上に均一な圧力分布を作り出し、安定した支持力を生み出します。

減圧の主な目的は、次の通りです:

均一な圧力分布:絞りを通過することで流体の圧力が均一化され、軸受け面全体で均等な支持力が確保されます。
支持力の調節:流体の圧力を調節することで、軸受けの支持力を適切に制御できます。これにより、軸の位置精度や運転性能が向上します。
熱の管理:減圧は、軸受け内の熱発生を抑制し、熱変形を最小限に抑えるのにも役立ちます。
以上のように、軸受けにおける作動流体の減圧は、高精度かつ高性能な運転を実現するための重要な機能です。