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国際標準化における課題と具体的な取り組み
(1)国際標準化に関する課題
国内規格による製品の具体例として、流体を密封するために機器に取り組まれるOリングを挙げる。Oリングに関する代表的な規格を以下に示す。
・国際標準化機構規格(ISO)
・日本産業規格(JIS)
・日本自動車技術会規格(JASO)
・米国自動車技術者協会規格(SAE)
開発する機器にOリングを使用する場合は、規格のサイズから選定し、機器に組み込めるように設計する。上記の企画は一部が重複するものの、生産国や業界によって規格が異なり、グローバル化をすすめるうえでの障害となっている。Oリングの国際標準化に関する課題について述べる。
1)希少サイズへの対応
流通量の少ないサイズはコストが高く、調達にも時間を要する。このような希少サイズは国際標準化の際に規格から除外される可能性がある。しかしながら、希少サイズは医療機器などの特定分野に集中して使用されている場合があり、該当サイズを使用している機器はさらにコスト増となる。希少サイズは市場への影響を十分考慮して、統廃合を検討しなければならない。
2)微小サイズへの対応
小型化が求められる機器では、設計者はできるだけ小さいサイズのOリングを選択する。国際標準化によって選択肢が減少した場合、規格外のOリングを採用することになり、標準化効果が得られない。小さな機器ほど、Oリングサイズが小型化に与える影響が大きいため、微小サイズの範囲では種類を多く設定することが望ましい。
3)標準化部品の不具合防止
国際標準化を行うことで、Oリングを組み込む関連部品の設計が共通化され、一定の機能を持つ構成要素(以下モジュールという)の標準化が進むと考えられる。一方、設計が同じでも過酷な使用条件ではOリングの性能が低下し、モジュールに不具合が発生する可能性がある。標準化によって、不具合が拡大しないようにしなければならない。
(2)最重要課題と解決策
前述の課題のうち、最も重要な課題として標準化部品の不具合防止を挙げる。モジュールに不具合が発生した場合、対象となる機器の台数が多くなり、対応に時間がかかる。具体的な解決策を以下に示す。
1)使用条件の明確化
モジュールが使用可能な環境温度や想定寿命を明確にし、Oリングの性能を超える条件下での使用を制限する。Oリングの標準化において、使用条件を明確にし、用途を制限することで、モジュールの不具合発生を防止できる。
2)信頼性の向上
Oリングのサイズ許容区間に応じて公差域クラスを設定する。Oリングは線径に占める圧縮量の割合が密封性能に影響するため、小さい公差域クラスを選択することで、高い密封性能が得られる。その結果、それらを組み込んだモジュールの信頼性を向上させることができる。適切な公差域クラスを選択することで、過剰な品質によるコストアップも抑制できる。
(3)新たに生じうるリスクと対策
国際標準化されることで、Oリングを使用したモジュールが低コスト、短納期で調達できるようになると考えられる。その結果、モジュールの設計が固定化され、改善や進化の機会を失うというリスクがある。また、モジュールの設計技術が伝承されずにブラックボックスとなり、不具合が発生した際に対処できないという恐れもある。モジュールを設計に組み込む場合は、その技術を理解し、有効に機能を発揮するよう配慮しなければならない。
対策として、標準化された規格の定期的な見直しを行う。加工技術が進化し、極小サイズのOリングが製造可能になった場合、それらを規格化することでモジュールの小型化が進む。これにより、モジュール設計技術の進化と伝承が促進される。標準化は基本設計を共有して効率化を図る有用な手段である。適切に運用し、技術の向上に努めなければならない。
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