(1)機械要素に関して調査、検討すべき事項
製品の具体例として、異常時に流体を放出し、管路内の圧力を下げる安全弁を挙げる。安全弁はおもに流体圧力とのバランスをとる圧縮コイルばね(以下ばねという)と、流体を密閉する弁体で構成されている。
1)ばねについて
差動圧は組み込み時のばね荷重によって決定する。ばねは特性上、全たわみ量の20~80%の範囲で作動することが望ましい。そのため、安全弁の作動する圧力範囲が、ばねの特性に適合するように検討しなければならない。
2)弁体について
強い酸性を示すものなど流体の種類によっては、弁体の材料を侵食し、漏れの要因となる可能性がある。弁体は常に流体と接触するため、流体の性質を把握したうえで、十分に耐性のある材料を検討しなければならない。
(2)業務を進める手順について留意、工夫する点
ばねは加工条件によって無荷重時の全長(以下自由長さという)にばらつきがあり、組み込み時のばね荷重が安定しない。そのため、狙いどおりの差動圧になるよう、製品ごとに組み込み長さを調整する。しかしながら、差動圧の高い製品では自由長さのばらつきが大きく、組み込み長さの調整では対応することができない。規格から外れたばねは不良品となり、製品のコスト増になる。このような問題は手戻りの要因となるため、上流工程である設計段階で十分留意しなければならない。対策として、設計の初期段階で加工のばらつきがどのように影響するかを検討するパラメータ設計を行う。具体的な方策として、ばね定数を小さく設計し、自由長さが作動圧に与える影響を低減した。この方策により、調整可能な自由長さの範囲を拡大し、ばねの不良率を低減することができた。
(3)業務を円滑に進めるための関係者との調整方策
パラメータ設計を行うためには管理困難な要素を十分に把握しておく必要がある。そのために設計初期段階で、後工程を担当する製造および品質管理部門を含めてデザインレビューを実施する。製造部門は過去の不具合に基づく再発防止策などについて指摘する。本事例では、ばらつき改善策としてばねの加工速度低減を検討したが、製造コスト増に見合う効果が得られないことを確認した。多くの視点で問題を指摘、共有することにより、後工程で起こり得る問題を事前に解決し、開発を円滑に進めることができる。
以上
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