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イオン導電体 の探索 の歴 史は,電 池 との関連 を抜 きに語
ることがで きない.イ オ ン導 電体は電解質 と して利用で き
るために,早 くか ら応用 分野の重 要性 が認識 されてい た.
しか し,固体電解 質の代表 的な応用例 と して よ く引 き合い
に出 され る全 固体電 池やSOFCな どが,夢 と して語 られる
こ とはあ って もデバ イス と して広 く一般 に実用化 され て
い る とは言い難 い現 実が あ る(全 固体 電 池 は心臓 ペ ー ス
メーカー用の電池のみ である).そ の実現 に向けての課題
は,技 術 的 な問題 の 解決 も さる こ となが ら,こ の ような
デバ イスに対 する社会か らの要請 も必 須であ る.
リチ ウム電池 は,携 帯 電話やハ イブリ ッ ドカーの電池 と
して一般 に認知 されてい る.し か し,容 量増 加や,高 電流
の達成,大 型化 に際 しての安全 性確保 などの深刻 な課題 が
あ り,材 料面で の飛躍 的な進歩が期待 されている.電 池 は
正極,負 極,電 解質 などの機能 の違 う材料の集合体 である
ため,開 発 には さまざ まな要 因が絡み 合い単純 では ない.
その次世代電 池 を可能にする材料の展望 は,す でに総 説で
詳 し く述 べ られ てい る.27)・28)安全性 が確 保で きる究極 の
電 池は 固体電解 質 を用 い た全固体 型で,電 池 を開発す る
研究者 に とっての夢で ある.
日本 では リチ ウム イオン電池が生産 され,大 型化 のプ ロ
ジェ ク トも進んでいるため,そ の問題点 である安 全性 の改
善 のために固体電池へ の期待 が高 まって いる.一 方,欧 米
では リチ ウム イオ ン電池 その もの を生 産 してい ないため
に,現 在の イオン電池 とは別 の形態 と用途 を 目指 した全固
体 薄膜型電 池の 開発 が進 んでい る.い ずれ の電 池系 で も,
これ まで の固体電解 質の イオ ン導電率 は ドラ イポ リマー
系 では10-4Scm-1,無 機電 解質系で は10-6 Scm-1と かな り
低 く,室 温 で の電池 の作動 が 困難 な ため,薄 膜 電池 では
スパ ッタリングな どの真 空中での 薄膜作製 に よってその
欠点 を克服 している.し か し,電 池 はあ くまで もエ ネルギ
一の缶詰 であるため,超 小型で薄膜 にす る利点 はあ ま りな
く,薄 膜電池 の用途は限 られ る との認識 もある.通 常 の電
池 の電解 質 として固体 を使用す る試み は,イ オ ン導 電率の
高 い固体 電解質 を利用 して初め て可能 になる.こ の ような
バ ルク型 の固 体電 池研 究 は 日本 の研 究 グル ープのみ で,
使 用 す る電 解 質 も硫 化物 ガ ラス系 に限 られて いた.11),13)
さらに高 い イオ ン導 電率 と電気化学 安定性 を兼ね備 えた
物 質の出現が待 ち望 まれていた理由であ る.
5.2全 固体電池 への第一歩
固体電解 質 と して優れ た基 本性 能 をもつ チ オ リシ コン
系 の発 見 によ り,この物 質を固体電解 質 として利 用 した全
固 体 電 池 の 試 み が 始 ま っ た.正 極 に 銅 シ ュ ブ レ ル
(Cu2Mo6S8),負 極 に リチ ウム金属 を用いた2V級 電池(構
成:(正 極)Cu2Mo6S8/(電 解質)Li325Ge0.25P0.75S4/(負極)
Li)は,正 極 に対 してほ ぼ理論 容量(80mAhg1)で,0.5
mAcm-2の 高 い充放 電電流でサ イクル特性 の劣 化 な く作動
が可能であ った.29)銅シュブ レルの電極電位 は低い ものの,
高 い電子 伝 導率 と速 い イオ ン拡散,優 れた充放電 可逆性
をもつ正 極で あ り,そ の特徴 が固体 電池で も現れ てい る.
このほか にも,チ オ リシコンと硫 化物 ガラスの双方 を固体
電解 質 として使 用 した4V級 全 固体電 池 も報告 されてお
り,30)今後 この系の全 固体 電 池研 究 が大 き く進 展 す る と
期待 され る.
固体電池の最大 の欠点 は,電 極/電 解質界面での接触で
あ る.接 触 抵抗 をい か に軽 減 させ るかが,電 池 か ら高 い
充放電電 流密度 を得 る ことがで きるか どうかを決定す る.
粉体 同士の接触 は,薄 膜 作製法 による界面作製 に比べ て困
難であ るため,バ ル ク型 固体 電池で高電流密度 を とるこ と
は難 しい とされて きた.し か し,銅 シュブ レル電池で は比
較的高電流が室温 で得 られてお り,イ オン導電率 の高 い固
体電解質 を利用す る と,こ れ までの固体電池の欠点 を克服
す るこ とも可 能であ る.
6.将 来 へ の 展 望
チ オ リシ コン物 質群 に関 して は まだ不 明 な点 が 多 い.
最大 の課題 は,高 イオン導電状態 を示す組成 の結 晶構造 が
明 らかでない点で ある.複 雑 な超 格子 構造 が実 際 に存在
す るのか,存 在す るな らば何 に起 因す るのか,高 イオ ン導
電 性 と関連す るのかな ど,肝 心 な点が まった く解 明 されて
いない.実 際 に固体電 池 の電 解 質 と しての優 れ た特性 が
明 らかになったため,今 後,物 質の詳細 な知見 も得 られる
だろ う.
新物 質を探索 して世 に提 示す る研究分野 にお いて,同 じ
電 気伝 導性 を示す 物 質の うち,電 子伝導 や超 伝導 の関与
す る物 質 に比べ る と,イ オ ンが電気 伝導 に関与 す る物 質
は,ど ち らか といえば地味で あった.し か し,リ チウム電
池 や燃料 電池な どの応用研 究の展 開につ れて,電 気一エ ネ
ルギー変換 に関 す る物 質 は,今 後 ます ます重 要 になって
ゆ くであろ う.こ の分野 では,物 質探索 に関 わる研究者 人
口が少 ない こ とか ら,物 質探 索 を生 業 とす る研 究 者 が,
応用 に も深 く関与 しなが らその重要性 をア ピール しなけ
れ ばならないが,逆 に,単 なる物 質のア ピー ル性のみ に目
を向け ることな く,現実 に即 した材 料開発が可能で ある利
点 もあ る.物 質は,実 際 に使 われて こそ材料 となる.今 後
とも実際 に利用 可能な物 質の探索 をめざ したい

もっと知るには・・・https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcrsj1959/46/1/46_1_9/_pdf/-char/ja

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