エネルギー発生は石油の800万倍

核融合反応とは、高速で進む原子核どうしが衝突・融合し、元々あった原子核とは異なる原子核ができる反応のことである。

核融合反応が起きる際に発生する膨大な熱エネルギーを使って発電を行うのが「核融合発電」である。
核融合発電の燃料1グラムは、何と石油8トンを燃やしたときと同等のエネルギーを発生させることができるのだ。

核反応では、反応前後の質量は明確に変化する。
反応後のほうが軽くなり、この質量減少分が、膨大なエネルギーに転化しているのだ。
これは「質量とエネルギーは、たがいに移りかわることができる」という、相対性理論の有名な式E=mc2の帰結だと言える。

 

核融合発電には1億℃以上のプラズマが必須

太陽は主に水素プラズマでできているが、その中心部では、水素の原子核4つが融合して、ヘリウム原子核1つができる核融合反応がおきている。
この反応によって生じる熱で、太陽は高温になり、光り輝いているのである。
太陽の中心温度は約1500万℃である。

 

核融合発電の場合、地上での大気の密度の10万分の1程度のごくごく希薄なプラズマを使うことが想定されている。
このような希薄なプラズマでは、原子核どうしが接近する頻度が少なく、核融合反応を起こすにはプラズマの温度を極端に高くする必要がある。
1億℃以上の温度が必要だと想定されている。

 

重水素は無尽蔵 トリチウムは炉内で増殖

核融合反応の燃料の一つである重水素は、水素のうち0.015%の割合で自然界に存在している。
そのため、みすから重水を化学的に分離し、重水を電気分解することで、重水素を得ることができる。
水から得られるのだから、資源量は実質的に無尽蔵だ。

もう一つの燃料であるトリチウムは、自然界での存在量はきわめて少なく、水から分離するという方法では十分な量は得られない。
しかしリチウムを使って、核融合炉の中で人工的につくりだすことが可能だ。

リチウムは海水中にも1立方メートルあたり約0.2グラム含まれており、海水からリチウムを採取できれば、ほぼ無尽蔵だ。

プラズマは、電磁石の「磁力線」であやつる

プラズマ中の原子と原子核は、磁力線に巻き付きながら進む、という性質がある。
そのため閉じた円形の磁力線を作ってやれば、原理的には、電子と原子核は、円形の磁力線に沿って延々と回り続けることになる。

現在、核融合の研究で主流になっているのが「トカマク方式」である。
トカマク方式は、ドーナツ状に並んだコイルが作る磁場と、環状のプラズマ電流がつくる磁力線によってプラズマを閉じ込める。

中心に電磁石を通すことで、プラズマに電流を流す。

原子力発電との違い

原子力発電では、核分裂反応で発生する熱を利用して発電をおこなう。反応で生じた中性子が次の反応を促し、連鎖的に反応が進むのが特徴だ。そのため、中性子を吸収する「制御棒」を使って反応の進み具合を制御する必要がある。

核融合炉では、連鎖反応は起きない。燃料は供給し続ける必要があり、供給を止めれば、すぐに反応は止まってしまう。

 

原子炉では「高レベル放射性廃棄物」が発生する。高レベル放射性廃棄物は放射能がきわめて高く、製造直後の場合、表面での放射線量は人間がわずか20秒で死に至るほどである。放射能が十分に減衰するまで膨大な時間が必要なため、地下300メートルより深い地層に埋設処分し、数万年の間、人間社会から隔離することになっている。

 

核融合炉では「高レベル放射性廃棄物」は発生しない。
核融合炉でも大量の放射性廃棄物が発生する。ただし半減期がきわめて長いものはできないため、原発の高レベル放射性廃棄物に相当するものは発生しない。

 

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