条件

  1. モーメントのつり合い(A点周り): Pl=S1a+S2bP l = S_1 a + S_2 b 
  2. 変位と張力の関係(変位比と張力比が比例する): λ1:λ2=S1:S2=a:b\lambda_1 : \lambda_2 = S_1 : S_2 = a : bよって: S1=abS2S_1 = \frac{a}{b} S_2 

計算

モーメントの式に S1=abS2S_1 = \frac{a}{b} S_2 を代入すると: Pl=abS2a+S2bP l = \frac{a}{b} S_2 \cdot a + S_2 \cdot b Pl=a2bS2+bS2P l = \frac{a^2}{b} S_2 + b S_2 Pl=S2(a2b+b)P l = S_2 \left(\frac{a^2}{b} + b\right) Pl=S2a2+b2bP l = S_2 \frac{a^2 + b^2}{b} S2=Plba2+b2S_2 = \frac{P l \cdot b}{a^2 + b^2}   S1を計算すると S1=abS2=abPlba2+b2S_1 = \frac{a}{b} S_2 = \frac{a}{b} \cdot \frac{P l \cdot b}{a^2 + b^2} S1=Plaa2+b2S_1 = \frac{P l \cdot a}{a^2 + b^2}   鋼線にかかる張力は以下の通りです: S1=Plaa2+b2,S2=Plba2+b2S_1 = \frac{P l \cdot a}{a^2 + b^2}, \quad S_2 = \frac{P l \cdot b}{a^2 + b^2}   [解答] ⑤ 参考:技術士第一次試験-令和2年度機械部門Ⅲ-3解答例 | 技術士のたまご

モーメントのつり合いと、力のつり合いではもとめられないですか?

結論:モーメントつり合い+力つり合いだけでは求まりません。

なぜ?

未知量は
  • 鋼線の張力 (S_1,S_2)(2つ)
  • 支点Aの鉛直反力 (A_y)(1つ)
計3つです。 静力学の式は [ \begin{aligned} &\text{鉛直力つり合い: } A_y+S_1+S_2=P \ &\text{Aまわりモーメント: } S_1 a+S_2 b=P l \end{aligned} ] の2本しかないため,このままでは未知数が1つ多く不静定です。 (水平力は0で自明。) そこで,変形の適合条件(剛体回転 ⇒ 伸び比 (\delta_1:\delta_2=a:b))を使い, 同一鋼線より (S_1:S_2=a:b) を与えて初めて [ S_1=\frac{al}{a^2+b^2}P,\qquad S_2=\frac{bl}{a^2+b^2}P ] が一意に決まります(選択肢⑤)。

よくある誤り

Aの鉛直反力 (A_y) を勝手に 0 とおく(=Aをローラー支持とみなす)と, [ S_1+S_2=P,\quad S_1 a+S_2 b=Pl ] から が出ます。しかし本問のAはピン支持で (A_y\neq0) も取り得るため不適切。 実際,①は (a=b) で発散し,物理的に不合理です。
まとめ:この手の「剛体棒+複数のバネ(鋼線)」は静力学+適合条件が必須です。