1. 日本の太陽光発電導入量に関する記述
記述:
「日本の太陽光発電導入量、太陽電池の国内出荷量に占める国内生産品の割合は、いずれも2009年度以降2020年度まで毎年拡大している。」
解説:
この記述には事実と異なる部分があります。
日本の太陽光発電の導入量は増加傾向にあるものの、太陽電池の国内出荷量に占める国内生産品の割合は、近年、むしろ減少しています。
特に2010年代後半以降、中国製の安価な太陽電池が市場を席巻したため、国内生産品の割合が低下しています。
したがって、「毎年拡大している」という記述は不適切です。
2. 日本の原油輸入の中東依存度
記述:
「2020年度の日本の原油輸入の中東依存度は90%を上回り、諸外国と比べて高い水準にあり、特に輸入量が多い上位2か国はサウジアラビアとアラブ首長国連邦である。」
解説:
日本の原油輸入の中東依存度が90%を超えているのは事実であり、これは他国と比べて非常に高い水準です。
サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)が主要な輸入先であることも正しい。
正しい記述といえます。
3. LNG輸入の供給源
記述:
「2020年度の日本に対するLNGの輸入供給源は、中東以外の地域が80%以上を占めており、特に2012年度から豪州が最大のLNG輸入先となっている。」
解説:
日本のLNG輸入先は、中東以外の地域が大部分を占めています。特にオーストラリア、マレーシア、ロシアなどが主要な供給国です。
2012年度以降、オーストラリアが最大の供給国となっているのも事実です。
正しい記述といえます。
4. 日本の風力発電導入量
記述:
「2020年末時点での日本の風力発電の導入量は4百万kWを上回り、再エネの中でも相対的にコストの低い風力発電の導入を推進するため、電力会社の系統受入容量の拡大などの対策が行われている。」
解説:
2020年末時点で日本の風力発電導入量は約4百万kW(4GW)程度であり、記述内容は正確です。
風力発電のコストが比較的低く、系統受入容量の拡大などの課題に取り組んでいる点も事実です。
正しい記述といえます。
5. 地熱発電に関する記述
記述:
「環境適合性に優れ、安定的な発電が可能なベースロード電源である地熱発電は、日本が世界第3位の資源量を有する電源として注目を集めている。」
解説:
日本は世界第3位の地熱資源を持つ国とされており、地熱発電が注目されているのは事実です。
地熱発電は環境適合性が高く、安定的な発電が可能なベースロード電源としての特徴があります。
正しい記述といえます。
[解答]①
参考:過去問ドットコム
電力会社の系統受入容量の拡大などの対策について教えてください
電力会社の系統受入容量の拡大とは、再生可能エネルギー(再エネ)から発電された電力を効率的に電力系統(送配電網)に取り込むために行われるさまざまな対策を指します。再エネは発電量が天候などに左右されやすく、そのままでは電力系統への接続や安定供給に課題が生じます。このため、以下のような具体的な対策が取られています。
1. 系統の容量拡大
送電線の増設や強化
再エネの発電所がある地域(多くは地方や過疎地)と、電力需要が多い都市部を結ぶ送電線を新設・強化します。
例: 北海道や東北地方で発電される風力発電を首都圏に送電するための設備増強。
広域連系の強化
地域間で電力を融通できるよう、電力系統を広域的に結びつける連系線を強化します。これにより、需要が低い地域から高い地域へ電力を送ることが容易になります。
2. 系統運用の柔軟化
需給バランスの調整技術
再エネの発電量が多い時間帯(例: 日中の太陽光発電)に余剰電力が発生する場合、需要に合わせて供給を調整する技術が求められます。
調整力発電としての火力発電や蓄電池の活用。
需要側での柔軟な対応(デマンドレスポンス)。
再エネの出力抑制
系統の容量を超えた電力が発電された場合、一部の再エネ発電設備の出力を抑制する措置も取られます。
3. 蓄電技術の活用
大規模蓄電池の導入
発電量が多いときに余剰電力を蓄電し、不足時に供給します。これにより系統の安定化が図られます。
例: 電力会社が設置するバッテリー設備。
揚水発電
夜間や発電量が余ったときに水を上流にくみ上げ、需要が高いときに水を放流して発電する方法です。
4. 再エネの地産地消の促進
分散型エネルギーシステムの導入
発電所から遠方へ送電するのではなく、発電した地域で消費する「地産地消」の仕組みを拡大します。
マイクログリッド(小規模な独立型電力網)や地域での蓄電池の導入。
需要地近くでの発電
需要地に近い場所で再エネ発電設備を増設し、送電網への負担を軽減します。
5. デジタル技術の活用
スマートグリッド(次世代送配電網)
ICT(情報通信技術)を活用して電力需要と供給の状況をリアルタイムで管理し、効率的に電力を配分します。
予測技術の高度化
天候や需要の変動をAIなどで予測し、効率的に系統運用を行います。
日本での具体的な取り組み例
北海道本州間連系設備(北本連系線)の強化
北海道で発電された風力発電を本州に送るための送電設備の拡充。
広域的運営推進機関(OCCTO)の設立
日本全体での電力需給の調整や系統運用を効率化するための機関。
再エネ特別高圧線プロジェクト
再エネの導入を加速するため、送電線増設に重点を置く計画。
電力系統の受け入れ容量を拡大することは、再エネを持続的に普及させ、脱炭素社会の実現に向けた重要な取り組みとなっています。
電気は貯めておけないといいますが、発電量と消費量はどのくらい瞬間的に合わせる必要があるのですか?
電力の供給と需要(発電量と消費量)は、瞬間的にほぼ一致させる必要があります。なぜなら、電力は基本的に大規模な形では貯めておくことが難しいため、発電量が消費量を超えたり、逆に消費量が発電量を超えると、電力系統の周波数が乱れ、電力供給が不安定になるからです。
電力需給バランスと周波数の関係
電力系統の周波数
日本では、電力系統の周波数は地域によって異なります:
東日本:50Hz
西日本:60Hz
この周波数が安定するように発電量と消費量が調整されています。
需給バランスが崩れた場合の影響
発電量 > 消費量:周波数が上昇 → 発電機に過負荷がかかる。
消費量 > 発電量:周波数が低下 → 系統全体が不安定になり、停電のリスクが高まる。
許容される周波数の変動幅
電力系統の運用では、周波数の変動幅は厳密に管理されています。
許容範囲
±0.2Hz以内(例:50Hz系統なら49.8~50.2Hz)
±0.1Hz以内を目標とする場合もある。
この狭い範囲内で周波数を維持するため、発電量と消費量のバランスを瞬時に合わせる必要があります。
需給調整の方法
需給バランスを瞬間的に合わせるためには、以下のような調整が行われます:
1. 調整力発電
火力発電や水力発電(特に揚水発電)は、発電量の調整が比較的容易であり、需給バランスの調整に利用されます。
需要が増加 → 発電量を増やす
需要が減少 → 発電量を減らす
2. 蓄電技術の活用
大規模な蓄電池を利用して、余剰電力を蓄えたり、不足時に放出したりします。
例:リチウムイオン電池、フローバッテリー
3. 需給予測
天候や時間帯に応じた電力需要を事前に予測し、それに応じて発電計画を立てます。
再エネの場合、天気予報やAIを活用して発電量を予測します。
4. デマンドレスポンス(需要側の調整)
消費者側で電力使用を調整する仕組み。
例:需要が高まる時間帯に工場の稼働を一時的に停止。
瞬間的にバランスを取るための技術とシステム
自動周波数制御(Automatic Frequency Control, AFC)
発電所が周波数を自動で調整し、系統全体の安定を維持します。
広域系統運用
地域間で電力を融通し、需給バランスを確保します(例:日本ではOCCTOが調整を担当)。
結論
発電量と消費量は、秒単位でほぼ一致させる必要があります。これは電力系統の安定性を維持するためであり、少しの変動でも周波数に影響を与えるため、綿密な計画とリアルタイムでの調整が必要です。
例えば家庭でエアコンをつけて電力量が上がった場合、それを検知してから火力の発電量を上げていては遅れが生じないのですか?
その通りで、家庭でエアコンをつけた瞬間に電力需要が急増した場合、火力発電所がその都度反応して発電量を調整していたら遅れが生じてしまいます。これを防ぐために、電力供給システムにはリアルタイムで需給バランスを維持する仕組みが組み込まれています。
以下に、エアコンなどの家庭需要の変化に対応する具体的な仕組みを説明します。
1. 即時対応する「調整力」
家庭での需要の変化に対応するため、以下の手法が取られています:
調整力発電の階層的運用
一次調整力(即時反応)
発電機や一部の蓄電池が自動的に系統周波数の変化を検知し、数秒以内に発電量を微調整します。
この反応は事前にプログラムされており、火力発電や水力発電所が自動制御で対応します。
二次調整力(数分単位の調整)
需要変動が持続する場合、火力発電や水力発電が数分単位で発電量を調整します。これには中央制御室からの指令が入ります。
三次調整力(持続的な対応)
長時間にわたる需要変動に対応するため、より多くの発電所が発電量を増減させます。
2. 予測と事前準備
電力需要の急激な変化を予測し、それに備えることも重要です。
需要予測
電力会社は、過去のデータやリアルタイムの天気予報を活用して需要を予測します。
例えば、夏の暑い日にはエアコン需要が増えることが予想されるため、事前に火力発電所や蓄電池を稼働状態にします。
系統全体の余力確保
電力系統では、需給バランスが崩れるリスクに備えて、常に「予備電力」を確保しています。
火力発電所や揚水発電所が少し余裕を持たせた状態で運転されています。
3. リアルタイム対応システム
周波数制御
系統全体の周波数(50Hzまたは60Hz)の変化をリアルタイムでモニタリングし、即時対応します。
エアコンをつけたことで需要が増加すると、周波数が低下します。
この低下を発電所や蓄電設備が即座に検知し、自動的に出力を増加させます。
スマートグリッド技術の活用
スマートメーターなどを通じて、家庭での電力使用状況をリアルタイムで把握し、需要変動に素早く対応します。
4. 新しい技術での対応
蓄電池の役割
家庭での需要変動に対し、大規模な蓄電池が「即時供給源」として利用されています。
蓄電池は火力発電所よりも迅速に出力を増減できるため、短時間の需給バランス調整に非常に有効です。
デマンドレスポンス
家庭や産業の電力消費者に、需要が高い時間帯に電力使用を控えるインセンティブを提供する仕組みです。
例: ピーク時にエアコンの温度を自動的に1℃上げる。
まとめ
エアコンなどの家庭での急な需要増加に対応するため、以下の仕組みが組み合わされています:
一次調整力で即座に対応(数秒以内)。
需給予測と余力確保で事前準備。
蓄電池やスマート技術による短期的な補完。
これらの仕組みにより、需要増加の瞬間に遅れなく供給が行われ、電力系統の安定が維持されています。
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