答え:② 断面係数

なぜ?

A群の各用語に対して、B群で“対応して語れる(密接に結びつく)”用語を見ます。
  • ミーゼスの条件相当応力(von Mises 条件は相当応力で降伏を判定)
  • 応力拡大係数破壊じん性((K) と (K_{IC}) の関係)
  • フックの法則ヤング率(比例定数 (E))
  • せん断応力真応力…は厳密な対応語ではないですが、B群の中では“応力の種類”として最も近い概念があり、少なくとも関連付けは可能
一方で
  • 断面係数(section modulus)は、B群のどの語とも対にならず(材料定数でも応力でもなく、断面形状に固有の幾何学量)、対応する適切語が B群に存在しません
したがって不適切(対応するものがない)のは です。 [解答]② 参考 平成26年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-1 引張試験 ビッカース試験 破壊靭性試験  

ミーゼスの条件の解説をお願いします

ミーゼスの条件(von Mises の降伏条件)は、 材料が「いつ降伏(塑性変形開始)するか」を,多軸応力状態で判定するための代表的な基準です。 金属材料、とくに延性金属(鋼・アルミなど)に対して最もよく使われます。

1. いちばんシンプルな言い方

金属が降伏するのは
材料の“せん断変形エネルギー”が限界に達したとき
と言い換えることができます。 「引張り」や「圧縮」ではなく、 材料内部に生じる“せん断”が降伏を支配するんだよ という考え方。

2. 「相当応力」を使った表現(実務の形)

von Mises の条件は 相当応力(ミーゼス応力) を使うと、とても簡単に書けます。 [ \boxed{ \sigma_{\mathrm{eq}}=\sqrt{ \frac{(\sigma_1-\sigma_2)^2+(\sigma_2-\sigma_3)^2+(\sigma_3-\sigma_1)^2}{2} } } ] そして [ \boxed{\sigma_{\mathrm{eq}} \ge \sigma_Y\quad \Rightarrow\quad \text{降伏}} ]
  • (\sigma_1,\sigma_2,\sigma_3):主応力
  • (\sigma_Y):単軸引張試験での降伏応力
つまり、
どんな複雑な応力状態でも、 単軸引張と同じ基準に変換して“判定”できる
という強力な道具です。

3. もう少し直感的に:なぜこの形?

多軸応力状態で降伏を決めるのは「体積変化」ではなく 形が崩れるせん断変形(distortion energy) だとする考え方です。 体積が変わらない“くにゃっ”とした変形が蓄積して限界に達すると降伏。 この歪エネルギー理論から、一連の数学式を経て上の [ \sigma_{\mathrm{eq}} ] が導かれます。

4. 代表的な特性(覚えると便利)

✅ 一軸応力のとき

[ \sigma_1=\sigma,\ \sigma_2=\sigma_3=0 ] [ \sigma_{\mathrm{eq}}=\sigma ] → 単軸引張の降伏応力と直接リンクするように作られている。

✅ 純せん断のとき

[ \sigma_{\mathrm{eq}}=\sqrt{3},\tau ] → 降伏せん断応力 (\tau_Y=\sigma_Y/\sqrt{3})。

✅ 球状応力状態(静水圧)

[ \sigma_1=\sigma_2=\sigma_3 ] → 全ての差がゼロになるので [ \sigma_{\mathrm{eq}}=0 ] → 静水圧では降伏しない(実際の金属の性質に合っている)

5. どんなときに使う?

  • 橋梁・建築の部材設計
  • ボルト、軸の曲げ+ねじりの強度
  • FEA(有限要素法)で降伏領域を判断
  • 二軸応力、三軸応力が混在する機械部品の強度チェック
現代構造力学・機械力学の現場では、 von Mises 応力が安全かどうかで設計が決まることがほとんどです。

6. 他の降伏条件との比較

降伏条件 特徴
ミーゼス 延性金属に最適。実験と一致度が最も高い。
トレスカ(最大せん断応力説) 安全側。六角形の降伏曲面。計算簡単。
ランキン(最大主応力説) 脆性材料向け。破壊基準。
ムーアの円(実験解析向き) 二軸応力の視覚化に便利。

まとめ(3行)

  1. 金属が降伏するかどうかは“せん断変形エネルギー”で決まる
  2. von Mises 応力 [ \sigma_{\mathrm{eq}}=\sqrt{\frac{(\sigma_1-\sigma_2)^2+(\sigma_2-\sigma_3)^2+(\sigma_3-\sigma_1)^2}{2}} ]
  3. (\sigma_{\mathrm{eq}} \ge \sigma_Y) で 降伏開始

さらに図で視覚的に見たい場合や、 Mohr の円との関係、降伏曲面の形(円柱状)なども説明できます!

相当応力、真応力について教えてください。

  以下では ミーゼスの条件(相当応力), 相当応力とは何か, 真応力とは何か を一つずつ丁寧に説明します。

🔵 1. ミーゼスの条件(Von Mises 破壊条件)とは?

材料が降伏するかどうかを、3次元応力状態から判断するための基準です。 降伏=材料がもう弾性の限界を超えて、元に戻らない塑性変形を開始すること。 Von Mises の降伏条件は: [ \sigma_{\mathrm{eq}} = \sqrt{ \frac{1}{2} \left[ (\sigma_1-\sigma_2)^2 +(\sigma_2-\sigma_3)^2 +(\sigma_3-\sigma_1)^2 \right] } ] [ \text{降伏条件:}\quad \sigma_{\mathrm{eq}} = \sigma_Y ]
  • (\sigma_1,\sigma_2,\sigma_3):主応力
  • (\sigma_{\mathrm{eq}}):相当応力(後述)
  • (\sigma_Y):単軸引張での降伏点

🔸 なぜ「ミーゼスの条件」なのか?

材料(特に金属)の降伏は せん断エネルギーが限界に達した時に起こる とみなす「せん断エネルギー説」に基づくためです。 ミーゼス応力は、立体応力を「せん断エネルギーと等価な1軸応力」に変換するための“指標”。

🔵 2. 相当応力(Von Mises 応力)とは?

多軸応力状態を、1軸応力に換算したもの すなわち:
応力状態が複雑でも、降伏判定を 1 本の引張試験と同じ形でできる「等価な1軸応力」。
式は上のミーゼス式: [ \sigma_{\mathrm{eq}} = \sqrt{ \frac{1}{2} \left[ (\sigma_1-\sigma_2)^2 +(\sigma_2-\sigma_3)^2 +(\sigma_3-\sigma_1)^2 \right] } ]

❗ どんな意味か?

例えば
  • 引張りだけ → (\sigma_{\mathrm{eq}} = \sigma)
  • せん断応力だけ → (\sigma_{\mathrm{eq}} = \sqrt{3},\tau)
これのおかげで 降伏点を単一の値で扱える

🔵 3. 真応力(True Stress)とは?

材料が伸びて、断面積が変化したときの「実際の応力」。 定義: [ \sigma_t = \frac{P}{A_{\mathrm{inst}}} ]
  • (P):荷重
  • (A_{\mathrm{inst}}):現在の断面積(引張で細くなった面積)
対して、通常の「工学応力(公称応力)」は: [ \sigma = \frac{P}{A_0} ]
  • (A_0):初期断面積

🔸 なぜ真応力が必要?

材料が伸びて細くなると、 同じ荷重でも応力は実際には 大きくなっている。 そのため塑性領域の正しい応力挙動を見るには 真応力–真ひずみ曲線 が必要。

🔵 まとめ

用語 わかりやすい意味 主な用途
ミーゼスの条件 降伏するかどうかの判断基準 構造力学、材料力学の降伏判定
相当応力(Von Mises 応力) 立体応力を1軸応力応力に換算 降伏判定、有限要素法
真応力 実際の断面積を使った応力 塑性域・破断解析、材料試験

必要なら:
  • ミーゼスの条件の図形(ミーゼス降伏曲面)
  • 最大せん断応力説との比較(トレスカ vs ミーゼス)
  • 相当ひずみや真ひずみの導出
  • FEMでの相当応力の使われ方
なども詳しく説明します!