DAOは “Decentralized Autonomous Organization” の略で、ひとこと言えば、取締役会とか経営陣などが存在せず、プログラム(スマートコントラクト)によって自律的に運営される組織のことです。”Autonoumous” は「自律」と訳されることが多いのですが、(人間の代わりにマシンが運転する)自動運転車が英語だと “Autonoumous Car”になることを考えれば、DAOは(人間の代わりにマシンが経営する)「自動運転組織」と考えていただいても良いと思います。

株式会社は、株主のものですが、株主全員で経営することは出来ないので、社長を筆頭に経営陣を雇い、経営を任せます。経営陣の役割は、会社の経営を通して株主価値を最大にすることにありますが、残念なことに経営陣自身にも「たくさん給料をもらいたい」「今の地位に長くとどまりたい」「引退後に天下り先が欲しい」などの欲があるため、必ずしも株主の利益を最優先に働いてくれないのが問題です。

国の経営もまったく同じで、政治家や役人の本来の役割は国民の利益を最優先することですが、彼らにも欲があるので、(安倍政権がしばしば行ったように)「総理のお友達」に利益を与えたり、自分たちの天下り先を税金で作ったりするのです。

これを経済学では、”agency dilemma” とか “principal-agent problem” と呼びます。”principal” が株主や国民で、”agent” が経営陣や政治家・官僚です。プリンシパルから雇われた(もしくは選ばれた)エージェントが、自らの欲のために、プリンシパルの利益に反する行動をとってしまうことを指します。ここでは「エイジェンシー問題」と呼ぶことにします。

DAOは、「エイジェンシー問題」を解決する大きなポテンシャルを持っています。人間をプログラムに置き換えることにより、「欲」を排除出来るからです。

会社であれ国であれ、エージェントの最も重要な役割は、「お金の使い方」にあります。会社であれば「研究開発費にいくら投じるのか」「広告宣伝費をいくら使うのか」、国であれば「軍事費をいくら使うのか」「少子化対策にいくら投じるのか」などの決断です。

その最も重要な部分に人(エージェント)が絡むと、必ずと言って良いほど、「経営人の天下り先の確保のために子会社を作る」「政治家のお友達の会社に大量の発注をする」「票を集めてくれる団体にお金を流す」などの行動の結果で、「お金の使い方」が(プリンシパルの観点から見て)最適化されないのです。

この「エージェンシー問題」を解決するために、賄賂や不正な利益供与を禁止する法律などがありますが、すべてのケースを網羅することは到底出来ず、たくさんの不正が合法的に行われているのが、この世の中です。

民主党の石井紘基議員は、官僚たちがコントロールする一般会計よりも大きい特別会計の闇を暴こうと奮闘した結果、何者かに雇われた刺客に刺殺されてしまいましたが、これもまさに「エージェンシー問題」の最たるものです。

DAOは、この最も重要な「お金の使い方」の部分を、スマートコントラクトというプログラムを活用して自動化し、不正の入る余地を排除しようとする試みです。

例えば国であれば、

税収以上のお金は絶対に使わない
軍事費は、国家予算の10%
生活保護費は、年収150万円以下の家庭に自動的に支給する
などのルールを、スマートコントラクトの中に記述しておけば、自動的に実行され、そこに政治家や官僚の私利私欲が入る余地がなくなるのです。

こんな素晴らしい利点のあるDAOですが、現時点ではまだ未熟で、かつ法律も整備されていないため、実際の会社や国の経営に適用することは出来ません。

最初に大きな期待を背負って作られた “The DAO” は、スマートコントラクトにバグがあったため、悪意を持った人に資産の大半($50 million)を盗まれてしまうという大事件を起こしてしまいました。

その後、その失敗を反省して、DAO向けのスマートコントラクトも徐々に進化し、あるべきDAOの形を模索する試みが複数行われています。

 

引用:週刊 Life is Beautiful 2022年4月26日号

 

 

〇DAOに関する動画


<参考記事>