古写真から3Dプリント用フィギュアを10体作って分かったこと ― 権利の確認から造形チェックまで(実測データつき)

近藤勇の元写真、AIのコンセプト画像、完成した3Dモデルの3枚並び
古写真 → AI のコンセプト画像 → 印刷用3Dモデル(近藤勇)

幕末・明治の人物の古写真をもとに、AI(Meshy)で3Dモデルを作り、3Dプリンターで印刷できる状態かを自動でチェックして、作品集用の回転画像まで作る――という流れで、これまでに10体を作りました。

この記事では、その手順と、10体分の実測データをまとめます。

  • 作業をどう自動化し、どこで人が確認しているか
  • 元の写真がパブリックドメイン(著作権が切れて、誰でも自由に使える状態)かどうか、どう確かめたか
  • AI の生成に何クレジット(Meshy の利用料にあたるポイント)使ったか
  • 印刷前のチェックで何を見ているか

※ 個人の制作記録です。写真の所蔵機関や記念館などとは関係ありません。また、著作権の説明は私が調べた範囲のまとめで、法的な助言ではありません。

目次

全体の流れ

  1. 写真を探す: Wikimedia Commons(ウィキペディアなどで使う画像を集めた共有サイト)と国立国会図書館で、全身が写った肖像写真を探す
  2. 権利を確かめる: パブリックドメインの根拠と、出典・入手元を記録する
  3. コンセプト画像を作る: 写真から「全身・直立・正面向きのフィギュア」の画像を AI で作る(Meshy の image to image)
  4. 3D化する: その画像から 3D モデルを作る(Meshy の image to 3D、色なしの形だけ。第1弾の岩倉使節団・坂本龍馬は別の方法)
  5. 造形チェック: 自作のプログラム(check_figure.py)で、印刷できるかを判定する
  6. 回転画像: ブログ用の回転動画を作る

自動化の仕組み

この流れの大部分は、AI のコーディング支援ツール Claude Code に任せています。人がやるのは、写真の選定と生成の承認、仕上がりの確認です(Commons の画像を取れないときの、ブラウザでの保存も)。

Claude Code から Meshy を直接動かす

Claude Code には、外部のサービスを操作するための仕組み(MCP: Model Context Protocol)があります。Meshy 用の MCP サーバー(Meshy MCP)をつなぐと、Claude Code が Meshy に「この画像からコンセプト画像を作る」「3D化する」「できたファイルをダウンロードする」と直接指示できます。第1弾の高杉・勝・土方からはこの方法で、Meshy のサイトを開かずに生成しています。クレジットを使う操作の前には、必ず枚数と見込みのクレジットを示して止まります。

1行のコマンドで手順を通す

1体を作る手順(写真の調査 → 権利の記録 → コンセプト画像 → 3D化 → チェック → 回転画像 → 記録)は、Claude Code の「スキル」という手順書にまとめてあります。/new-figure 西郷隆盛 木戸孝允 のように人物名を付けて呼ぶと、この手順書に沿って進みます。

調べものは専用の係(サブエージェント)に分ける

調べものと見直しは、役割を絞った別の AI(サブエージェント)に任せています。どの係も Meshy の機能は使えず、クレジットを使う生成はできません。プロジェクトのファイル(作品フォルダや記録)も書き換えない決まりにしています(調査係は候補の縮小画像を一時フォルダに保存し、見直し係はファイルの照合に PowerShell を使います。企画係はファイルを読むだけです)。

係 やること
写真の調査係(photo-researcher) Commons と国立国会図書館で写真の候補を探し、パブリックドメインの根拠と出典を調べる
見直し係(fact-checker) 出典・ファイルの照合・記録の食い違い・解説文の史実を見直す。この記事の下書きも見直してもらった
企画係(blog-curator) 制作の記録を読んで、ブログ記事の案を出す

生成と、作品フォルダへのファイルの保存は、手順を進める本体の AI だけが行います(人がブラウザで保存した画像を除く)。

人が承認する2か所

クレジットを使う生成の前に、必ず2回、人が確認します。

  1. 写真とクレジットの承認: 調査係が探し、本体の AI がまとめた写真の候補・パブリックドメインの根拠・見込みのクレジットを表で見て、どの写真で作るかと、使ってよいクレジットを決める
  2. コンセプト画像の承認: AI が作ったコンセプト画像を元の写真と見比べて(服装・顔・ひげ・髪型・刀など)、3D化してよいか、作り直すかを決める。作り直しで見込みを超えるときも、そのつど確認する

承認はこの2か所です。ダウンロード、チェック、回転画像、記録、見直しは AI が進めます(Commons の画像を取れないときは、人がブラウザで保存します)。手順書には「最後まで一気に」と頼めばコンセプト画像の承認を省ける決まりもありますが、これまでの10体では省いていません。

1. 古写真がパブリックドメインかを確かめる

日本の古写真の考え方

日本の古い写真は、旧著作権法(23条)では写真の保護期間が公表後10年と短く(のちに暫定的な延長あり)、今の著作権法の施行(1971年)の時点で保護が切れていたものは、切れたままになる、と説明されています(現行法の附則2条)。

このプロジェクトでは、文化審議会の資料(文部科学省)の図に合わせて、「1956年12月31日までに公表された写真」 を保護期間満了の区切りにしています。

Wikimedia Commons でファイルに付ける権利表示の定型文(テンプレート)「PD-Japan-oldphoto」の本文は、「1958年1月1日より前に公表」などと書かれていて、1957年に公表された写真の扱いが1年ずれます。途中でこの違いに気づき、自分たちの判断として書く行は「1956年12月31日まで」に統一しました。Commons の本文を書き写した部分は、そのまま残して注記を足しています。今回の10体は、どれも1956年以前に公表または撮影されたものです。

確認先は「Commons か国立国会図書館」

このプロジェクトでは、パブリックドメインであることを Commons か国立国会図書館で確認できたものだけを使う、と決めています。

  • 国立国会図書館デジタルコレクションでは、資料ごとに「PDM(パブリックドメイン・マーク)」などの利用条件が表示されます
  • 国立国会図書館「近代日本人の肖像」は、掲載している肖像画像はすべて著作権保護期間が満了したものだと案内しています(転載に申請は不要で、出典の記載を求めている)
  • Commons のファイルは、テンプレートの根拠が日本の写真に合っているかも見ます。たとえば徳川慶喜の写真は Commons の表示が日本の根拠としては弱かったので、1935年の刊行物に同じ写真(目視で同じと判断)が載っていること(国立国会図書館で PDM)を確認先にしました

出典と入手元を分けて記録する

「どこで公表された写真か(出典)」と「どこから画像を取ってきたか(入手元)」は別のことなので、作品ごとの出典メモ(source.txt)に分けて記録しています。転載サイト経由の画像(坂本龍馬は Pinterest 経由)でも、原写真の出典は別に書きます。

画像の取得と、ファイルが同じかの照合

ファイルが同じものかは、SHA-1(ファイルの中身から計算する「指紋」のような値。1バイトでも違えば別の値になる)で確かめています。Commons には各画像の SHA-1 が載っているので、手元のファイルと比べられます。

  • Commons の原寸画像(upload.wikimedia.org)は 429(アクセスが多すぎるとして断られるエラー)になることが多く、第1弾では岩倉使節団で2回続けて失敗し、第2弾では3件とも 429 でした
  • そこで、自分で取りに行くのは1回までにし、だめならブラウザで保存して、SHA-1 を Commons に載っている値と照合することにしました。第1弾の4件(岩倉・勝・土方・高杉)と第2弾の3件、計7件が一致しました
  • ただし坂本龍馬は Pinterest から入手した画像で、Commons の画像とはファイルが一致しません(見た目が同じ写真と判断しただけで、転載前の掲載元は未確認)
  • 国立国会図書館の画像は直接取得できました

写真がない人物

西郷隆盛は確実な本人の写真が確認されていないため、例外として、パブリックドメインの肖像画(床次正精の油彩、明治中頃。鹿児島市立美術館蔵)をもとにしました。作品の解説にも「写真ではなく肖像画がもと」と書いています。

2. 生成にかかったクレジット

Meshy のクレジットは、コンセプト画像(nano-banana-pro)が1回 9、3D化(meshy-7.1・色なし)が1回 20(nano-banana-pro と meshy-7.1 は、どちらも Meshy で選べる AI のモデル名) で、作り直しがなければ1体 29 です。

作品 服装 コンセプト画像の回数 クレジット
高杉晋作 和装 1 29
勝海舟 羽織にズボン 1 29
土方歳三 洋装 2 38
大久保利通 洋装(大礼服) 1 29
木戸孝允 和装 3 47
近藤勇 和装 3 47
西郷隆盛 洋装(軍服・肖像画) 2 38
徳川慶喜 洋装(フランス式軍服) 1 29

岩倉使節団と坂本龍馬は別の方法で作ったため、クレジットの記録がありません。上の8体で合計 286 クレジットです(第1弾の3体 96 + 第2弾の5体 190)。

相場観としては、私の契約(Meshy の Premium プラン)では毎月 3,000 クレジットが配られるので、8体分の 286 は月の配布分の約1割(約9.5%)、作り直しなしの1体(29)なら約1%です。配られる量はプランによって変わります。

作り直しが多かったのは、次の2つのケースです。

  • 服装の取り違え: 土方歳三は、洋装の写真なのに、1回目は羽織袴と口ひげになりました。服装を具体的に書き足し(上着・ベスト・襟巻き・懐中時計の鎖・ブーツ、「和服にしない」)て直りました。その後の大久保と慶喜は、最初から服装を具体的に書いて、1回で通りました
  • 刀の位置: 木戸孝允と近藤勇は、大小二本の刀が胸の前で交差した画像になりました。「胸の前に置かない」と書き足しても、近藤(2回目)・木戸(3回目)とも直りませんでした。近藤は刀を脇差一本だけにして直り、木戸は直らないまま、いちばん良い回を採用しました。3回作っても直らなければ、そこで止めると決めています
木戸孝允の元写真と、コンセプト画像1〜3回目
左から元写真・1回目・2回目(採用)・3回目。言い換えても刀は胸の前のまま。3回目は棒を2本握り、両手がこぶしになった
元写真の出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」 (https://www.ndl.go.jp/portrait/)

3. 造形チェック(check_figure.py)で見ていること

AI が作った3Dモデルは、そのままでは印刷に向かないことがあります。自作のチェック用スクリプト(check_figure.py)は次の処理と判定をまとめて行い、印刷用のデータ(STL ファイル)と、モデルを4方向から見た確認画像(views.png)を出力します。

  • 破片の除去: 本体の1%未満の大きさの部品を「破片」として消す
  • 軽量化: 面の数を30万に減らす
  • サイズの調整: 指定した高さにそろえる(ここでは50mm。岩倉使節団は1.5倍)
  • 細い部分の検出: ノズル径(3Dプリンターの樹脂が出る口の太さ)の2倍(0.4mm ノズルなら 0.8mm)より細い部分を、確認画像の上で赤く表示する
  • 倒れやすさの判定: 重心が接地面の内側にあるかと、何度傾けたら倒れるか(転倒角)を調べる。10°未満なら台座を足す

判定は3段階です。

  • OK: そのまま印刷してよい
  • 要修正: 細い部分が5か所以上、または台座なしで倒れやすい
  • NG: 細い部分が40か所以上、または体積の10%以上

10体の結果

表の「フィラメント」は、印刷の材料になる樹脂の糸のことです。「台座の追加」は、チェックで自動的に足した台座だけを数えています(確認画像に写っている円形の台座は、コンセプト画像の段階で付けたものです)。

作品 寸法 (mm) 破片除去 細い部分 転倒角 台座の追加 フィラメント見込み
岩倉使節団(1.5倍) 114.3×67.7×75.0 61 0 58.9° なし 63.8 g
坂本龍馬 22.0×22.0×51.8 9 0 6.4° あり 2.1 g
高杉晋作 30.4×27.4×50.0 245 0 30.1° なし 4.5 g
勝海舟 23.1×23.1×50.0 121 0 29.4° なし 2.7 g
土方歳三 19.6×19.5×50.0 47 0 22.5° なし 2.0 g
大久保利通 27.4×27.4×50.0 207 3 32.1° なし 2.0 g
木戸孝允 24.1×24.2×50.0 108 0 30.3° なし 2.9 g
近藤勇 22.2×23.9×50.0 231 0 28.6° なし 2.6 g
西郷隆盛 22.4×22.3×50.0 72 0 24.7° なし 2.7 g
徳川慶喜 23.4×23.4×50.0 221 3 28.3° なし 2.0 g

10体とも判定は OK でした。ノズルはすべて 0.4mm です。1体あたりのチェック時間は 58.7〜118.4 秒でした。フィラメントの重さは体積からの概算で、実際に印刷して量ったものではありません(まだ1体も印刷していません)。

倒れやすさ:坂本龍馬だけ台座が付いた

坂本龍馬は、高さ50mmで転倒角 6.4°、重心が接地面の端から 2.4mm しか内側になく、足の裏が台に付いている割合(接地率)も 0.438 と、ほかの体(転倒角 22.5〜58.9°)よりずっと倒れやすい結果でした。台に寄りかかって立つ写真で、足元の接地面が小さいためです。チェックで自動的に直径22mm・厚さ2mmの円形台座が付き、高さは台座込みで51.8mmになりました。

破片が多いときは、部品が消えていないかを見る

破片の除去数は 9〜245 個と、作品によって大きく違いました。小さな付属品(刀など)が別の部品になっていると、破片として消えてしまうことがあります。そこで、除去数が100個以上のときは、確認画像で刀などが残っているかを目で確かめることにしています。100個以上だった6体(高杉・勝・大久保・木戸・近藤・慶喜)は、どれも刀やサーベルなどの部品が残っていました。

細い部分:サイズを上げると減る

大久保利通(サーベルなど)と徳川慶喜(剣など)は、0.8mm より細い部分が3か所ずつ検出されました(判定は OK)。高さを75mmにして再チェックすると、細い部分の体積の割合は下がりました。

大久保利通の確認画像(高さ50mm)
大久保利通の確認画像(高さ75mm)
赤い部分が 0.8mm より細いところ。上が高さ50mm(3か所)、下が75mm(1か所)
作品 高さ 細い部分 細い部分の体積比 寸法 (mm) フィラメント見込み
大久保利通 50mm 3 0.29% 27.4×27.4×50.0 2.0 g
大久保利通 75mm 1 0.02% 41.0×41.0×75.0 6.4 g
徳川慶喜 50mm 3 0.07% 23.4×23.4×50.0 2.0 g
徳川慶喜 75mm 4 0.02% 35.1×35.1×75.0 6.5 g

慶喜は、75mmにすると細い部分の数が3から4に増えました。数ではなく体積の割合で見ると、細いところが小さくなっています。

岩倉使節団(ジオラマ)でも、元の大きさ(幅76mm)では細い部分が11か所で「要修正」でした。1.5倍(幅114mm)または 0.2mm ノズルにすると、0か所で OK になりました。

判定が OK でもサポートが要る

判定とは別に、刀やサーベルが体から浮いている体があります。こうした部分は、印刷中に下から支える仮の柱(サポート)が要ります。第1弾の高杉・勝と第2弾の5体、計7体で、作品ごとの解説メモ(note.md)にサポートが必要と書きました(大久保・慶喜は「サポートを付けるか、高さ75mmで」)。チェックの数字だけでなく、確認画像で形を見ることが欠かせません。

まとめと次にやること

  • 作業は Claude Code と Meshy MCP で自動化し、人は「写真とクレジット」「コンセプト画像」の2か所で承認する
  • 権利の確認は「確認先(Commons・国立国会図書館)」「出典と入手元を分ける」「SHA-1 で同じファイルかを確かめる(転載サイトから取った龍馬は確かめられていない)」の3点で進めた
  • 生成は、服装を具体的に書けば1回で通りやすい。刀の位置は言い換えでは直りにくかった
  • チェックは10体とも OK。ただし倒れやすさ(龍馬)・破片・細い部分・サポートは、数字と画像の両方で確かめる

次は実際に印刷して、フィラメントの実測値・印刷時間・サポートの付け方を記録する予定です。

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