AIエージェント5役で回す「偉人フィギュア工房」― Claude Code・Codex・サブエージェントの分担と、つまずいたこと

古写真から偉人の3Dフィギュアを作る作品集づくりを、第1弾〜第3弾の15体まで4日間(10月20〜23日)で進めました。手を動かしたのは、ほとんどがAIエージェントです。私(人間)がやったのは、クレジットを使う前の承認、コンセプト画像の確認、公開するかどうかの判断のほか、ブラウザでの画像の保存、Blender のインストール、相談役が作った指示文を各エージェントの画面に貼ることくらいでした。

この記事では、作品の中身ではなく「作る仕組み」をまとめます。どのエージェントに何を任せ、どこで人が止めたか。そして、実際につまずいたことです。

※ 個人の制作記録です。写真の所蔵機関や記念館などとは関係ありません。

目次

全体像:5つの役割

5つの役割(制作・調査と見直し・映像・公開・相談と確認)と、それぞれが書き込んでよい場所の図
役割ごとに、書き込んでよい場所を分けた。調査・見直しと相談・確認はファイルを書かない
役割 担当 主な仕事 書き込んでよい場所
制作 Claude Code(制作フォルダ meshyai) 写真の選定と出典の記録、Meshy での生成、造形チェック、記録 作品フォルダ(works/)・一覧表(catalog.csv)・気づきの記録(insights.md)・記事の原稿
調査・見直し サブエージェント(photo-researcher・fact-checker・blog-curator) 写真と権利の調査、出典と解説の見直し、記事の企画 なし(調べて報告するだけ。調査用のサムネイルは一時フォルダに置く)
映像 Codex Blender での回転撮影、紹介動画とショートの編集 映像フォルダ(videos/)
公開 ブログ側の Claude Code(WordPress)/制作の Claude Code+投稿スクリプト(YouTube) WordPress への掲載、YouTube への予約投稿 WordPress、YouTube(投稿の記録は videos/youtube/ の投稿一覧。映像フォルダのうち、ここだけは制作が書く)
相談・確認 Claude(チャット。デスクトップアプリ経由) 進み具合の確認、動画のコマの確認、公開ページの確認、指示文の作成 なし(制作フォルダ meshyai を読むだけ。エージェントに直接は指示できないので、指示文は人が各画面に貼った)

※ 制作・映像・ブログの担当は、依頼と完了報告を HANDOFF.md に書きます。進み具合の STATUS.md は制作が書き、ほかの担当は読んで確かめます。

ポイントは、書き込んでよい場所をエージェントごとに分けたことです。同じファイルを2つのエージェントが同時に書き換えると、内容が壊れたり、片方の作業が無駄になったりします。そこで、たとえば Codex には、作業を頼むときの指示に「映像フォルダの中だけで作業し、作品フォルダと一覧表は読むだけ」と書きました。

1. 制作:Claude Code + Meshy の MCP

Claude Code に Meshy 公式の MCP サーバー(@meshy-ai/meshy-mcp-server)をつなぎ、会話の中から Meshy の画像生成と3D化を呼べるようにしました。APIキーは設定ファイルに書かず、環境変数から読む形にしています。

1体の作り方は、手順書(スキル)にまとめてあります。/new-figure 渋沢栄一 津田梅子 … と人物名を渡すと、次の順に進みます。

  1. 写真の調査(サブエージェント)
  2. 出典の記録と、見込みクレジットの提示 → 人が承認
  3. 出典の見直し(サブエージェント)
  4. コンセプト画像の生成 → 人が確認
  5. 3D化と、すぐのダウンロード
  6. 造形チェック(自作スクリプト)
  7. ブログ用の回転画像
  8. 一覧表と解説の記録
  9. 仕上げの見直し(サブエージェント)
  10. 気づきの記録
  11. 報告
/new-figure の11の手順と、人が止める2か所(クレジットを使う前、3D化の前)の図
/new-figure の流れ。赤い枠が人の止める2か所

人が止める場所は2か所

止める場所は、クレジットを使う前と、3D化の前(コンセプト画像を見たあと)の2か所にしました。コンセプト画像の段階なら作り直しが1回9クレジットで済み、3D化(20クレジット)を無駄にしません。作り直しで見込みを超えるときも、そのたびに確認しました。

第1弾から第3弾のうち、Meshy の MCP で作った13体(エージェントモードで作った2体を除く)の生成に使ったクレジットは合計 440 でした。Premium プランの毎月 3,000 クレジットの約15%です。

2. 調査・見直し:読むだけのサブエージェント

サブエージェントは2種類(のちに企画用を1つ追加)です。どれにも、ファイルを書くためのツール(Write・Edit)と Meshy のツールは渡していません。photo-researcher と fact-checker はハッシュの計算などのために PowerShell を使えるので、「プロジェクトのファイルを書かない・動かさない」ことを定義の中で禁止しています。blog-curator は読むツール(Read・Glob・Grep)だけです。クレジットを使えるのはメインの Claude Code だけなので、勝手に使われる心配はありません。

  • photo-researcher:Wikimedia Commons と国立国会図書館「近代日本人の肖像」で写真を探し、パブリックドメインの根拠・候補の比較・出典の下書きを返す。人物ごとに並べて呼べる(5人分を同時に動かした)
  • fact-checker:出典の転記、コンセプト画像と写真の違い、記録どうしの食い違い、解説の史実を、根拠付きで「問題・要確認・OK」に分けて返す
  • blog-curator:記録を読んで、ブログ記事の企画案を出す

作った本人とは別のエージェントに見直させたのは正解でした。第3弾の見直しでは、5体中4体の解説に言い過ぎが見つかり、うち3体は「確かめられないことの言い切り」でした。たとえば「お札とは別の写真」という断定です。北里柴三郎の撮影年「明治16年」も、根拠は1932年刊の本のキャプションだけなので、「とされる」と書き、一覧表にも根拠を書き足しました。福沢諭吉の写真では、口絵の題「明治七年寫」を「明治十年」と読み違えていたのも、見直しで見つかりました。

3. 映像:Codex + Blender

動画は OpenAI の Codex に任せました。Blender を画面なしで動かす撮影スクリプトを Codex が書き、15体を同じ設定で撮っています。

  • 1080p・30fps・10秒で1回転。描画は EEVEE(軽い描画方式)
  • 斜め45°からのキーライト、弱いフィル、リムライトの3灯。アンビエントオクルージョンでひだに影を入れる
  • 1体あたり約8〜14分(第1・2弾は12〜14分、第3弾は約8〜10分)

最初の撮影は、全体に光が回りすぎてのっぺりしていました。陰影・低めの画角・接地影の3点を指定して撮り直したら、見違えるほど立体感が出ました。

坂本龍馬の3Dモデルの回転映像。左が最初の撮影、右が陰影・画角・接地感を調整した撮影
坂本龍馬の回転映像。左が最初の撮影、右が撮り直し

そのうえで、第2弾・第3弾の紹介動画(横長・1分48秒)2本と、1作品1本のショート(縦長・26秒)15本を作りました。第1弾の紹介動画(同じく1分48秒)は Blender を入れる前に作ったもので、回転部分は造形チェックの GIF を使っています。BGM は AI 作曲ツールではなく、Python で合成した音です。

第1弾の紹介動画:150年前の写真を3Dにしてみた|坂本龍馬・高杉晋作・勝海舟・土方歳三・岩倉使節団

YouTube の「改変・合成コンテンツ」の表示は、本物と見間違える写実的な内容が対象です。明らかにフィギュアと分かる3D映像なので対象外と判断し、オフで予約しました。

4. 公開:WordPress と YouTube

WordPress

ブログ側の Claude Code は、普段は WordPress 用のフォルダで動いています。制作フォルダ(meshyai)は /add-dir で追加しました。追加したフォルダは書き込みもできますが、作業ルールで読むだけにしました(例外は、私が頼んだ一覧表の1か所の修正と、HANDOFF.md への完了報告)。下書きを入れて表示を確かめてから公開する、という順にしています。

YouTube

YouTube Data API で予約投稿するスクリプトを作りました。

  • 認証情報とトークンは、制作フォルダの外(専用のフォルダ)に置く
  • ログインしたチャンネルが目的のチャンネルかを確かめてから投稿する(別のチャンネルに上げないため)
  • --dry-run(確認だけ)→ --test(限定公開で1本)→ --publish(予約投稿)の3段階
  • 投稿した動画は一覧に記録して、二重投稿しない

紹介動画は第2弾を10月28日、第3弾を11月4日の18時に、ショート15本は11月2日から12月4日まで月・水・金の18時に予約しました。

つまずいたこと

つまずき 原因 対策
サブエージェント5つが同時に「止まった」 PC のスリープ。呼び出しから約21時間後の復帰で「600秒動きなし」と判定された 長い作業の前にスリープを止める。続きを頼めば途中から再開できた
PC が落ちて作業が中断 不明(記録は「PC shutdown」だけ) 完成したファイルは残っていた(撮影の進み具合のファイルだけ空になった)。途中だった見直しと撮影をやり直した
撮影が「失敗」と記録された(実際は完成) Codex が入力の変更を検知する対象に一覧表を入れていて、撮影の途中で Claude Code が一覧表を更新した 確認対象を、撮影するモデルのファイルだけにした
Commons の画像が取れない(429) 短時間の連続アクセスの制限 自分で取りに行くのは1回まで。だめならブラウザで保存して、ハッシュで照合
Codex が Blender を入れられない Codex の環境では winget の起動が「アクセス拒否」になった 人が手元の PowerShell で Blender を入れた
報告が途中から英語になる(2回) 不明(10/21・10/23 の2回、制作の Claude Code の報告が途中から英語に切り替わった) 作業ルールに「報告は日本語で」と書いた
相談役のAIの説明に誤り ① Commons のテンプレート(PD-Japan-oldphoto)の区切りを「1956年末」と説明したが、本文は「1958年1月1日より前」だった ② 月の配布クレジットを 2,646 と説明したが、それはその時点の残りで、Premium の配布は 3,000 テンプレートの本文と Meshy の料金ページで確かめ直し、記録を直した

どのつまずきも、状況がファイルに残っていたから早く立て直せました。PC が落ちたときは撮影の進み具合のファイルが空になっていましたが、撮影ごとの実行フォルダとログが残っていたので、Codex が中断した撮影を確かめ、途中のコマを使わずに撮り直せました。

やってみて分かったこと

  1. 書き込む場所をエージェントごとに分ける。ぶつかりやすいのは、みんなが読む一覧表のようなファイル
  2. お金(クレジット)を使う前と、取り返しのつかない操作の前に、人が止める。それ以外は任せる
  3. 見直しは別のエージェントに。作った本人の見直しでは、言い切りや読み違いを見逃しやすい
  4. 記録はファイルに。一覧表・気づきの記録・進み具合のファイルが、エージェントどうしの共有メモになる。人が途中から状況を確かめるのにも使える
  5. PC のスリープに注意。エージェントは PC が寝ていると止まる

第4弾(長岡ゆかりの5人)は、人の確認を減らした自律運用(予算の範囲なら承認なしで生成し、コンセプト画像は fact-checker が判定)に切り替え、3D化と造形チェックまで終わりました。実物の印刷はまだなので、印刷したら、フィラメントの実測値や仕上がりも記録していきます。

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