https://kakomonn.com/gijyutushi/questions/36515

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慣性モーメントは、I = ∫ ρr² dVで表されることから、
一つずつ計算し求める方法もあります。
ただ、計算が複雑で手間がかかってしまうため、
平板の定理を用いるのが最短経路です。

平板の定理:薄い平面の板からなる物体の板面と垂直な軸に関する慣性モーメントは、軸と板との交点を通って板面内に引いた二つの直交軸に関する慣性モーメントの和に等しい。
よって慣性モーメント Ix、Iy、Iz の間には、Ix + Iy = Izが成り立ちます。

以上より、Iz が最大となるので、3が正解です。

 

それぞれの軸の慣性モーメントをといて解説してください

以下、質量 m、辺長が x 方向に ay 方向に 2a の薄い長方形板を考え、板の中心を原点にとって軸を次のように定義します:

  • x 軸:板面内で長さ方向(長さ a)に平行
  • y 軸:板面内で長さ方向(長さ 2a)に平行
  • z 軸:板面に垂直

板は一様な面密度 σ で、面積は A=a×2a=2a2 なので

σ=mA=m2a2.


1. Ixx 軸まわりの慣性モーメント)

回転軸が x 軸なので、質点の距離は y 座標。

Ix=

積分範囲は

x[a2,a2],y[a,a].x\in\Bigl[-\tfrac{a}{2},\tfrac{a}{2}\Bigr],\qquad y\in[-a,a].

よって

Ix=σ(x=a2a21dx)(y=aay2dy)=σ(a)[20ay2dy]=σa  2a33=2σa43=23m2a2a4=13ma2.\begin{aligned} I_x &= \sigma \Bigl(\int_{x=-\frac a2}^{\frac a2}1\,\mathrm{d}x\Bigr) \Bigl(\int_{y=-a}^{a}y^2\,\mathrm{d}y\Bigr)\\ &= \sigma\,(a)\,\Bigl[2\int_{0}^{a}y^2\,\mathrm{d}y\Bigr] = \sigma\,a\;\frac{2\,a^3}{3} = \frac{2\sigma\,a^4}{3} = \frac{2}{3}\,\frac{m}{2a^2}\,a^4 = \frac{1}{3}\,m\,a^2. \end{aligned}


2. IyI_yyy 軸まわりの慣性モーメント)

回転軸が yy 軸なので、質点の距離は xx 座標。

Iy=x2dm=x2σdxdy,I_y = \iint x^2\,\mathrm{d}m = \iint x^2\,\sigma\,\mathrm{d}x\,\mathrm{d}y,

同様に

Iy=σ(y=aa1dy)(x=a2a2x2dx)=σ(2a)[20a2x2dx]=σ2a  23(a2)3=σ2a  a312=2σa412=112ma2.\begin{aligned} I_y &= \sigma \Bigl(\int_{y=-a}^{a}1\,\mathrm{d}y\Bigr) \Bigl(\int_{x=-\frac a2}^{\frac a2}x^2\,\mathrm{d}x\Bigr)\\ &= \sigma\,(2a)\,\Bigl[2\int_{0}^{\frac a2}x^2\,\mathrm{d}x\Bigr] = \sigma\,2a\;\frac{2}{3}\Bigl(\frac{a}{2}\Bigr)^3 = \sigma\,2a\;\frac{a^3}{12} = \frac{2\sigma\,a^4}{12} = \frac{1}{12}\,m\,a^2. \end{aligned}


3. IzI_zzz 軸まわりの慣性モーメント)

薄い平板の定理(ペトリ‐アキーレの定理)より、

Iz=Ix+Iy=13ma2+112ma2=512ma2.I_z = I_x + I_y = \frac{1}{3}m\,a^2 + \frac{1}{12}m\,a^2 = \frac{5}{12}\,m\,a^2.


まとめ

Ix=13ma2,Iy=112ma2,Iz=512ma2\boxed{ I_x = \tfrac{1}{3}m\,a^2,\quad I_y = \tfrac{1}{12}m\,a^2,\quad I_z = \tfrac{5}{12}m\,a^2 }

これにより、最も大きいのは IzI_z であることが確認できます。

大きいということは一番回転させにくいということですか

 

はい。そのとおりです。


慣性モーメントと回しやすさ

  • 慣性モーメント II は、回転に対する「慣性」の大きさを表す量です。
  • 回転運動の基本法則は

    τ=Iα \tau = I\,\alpha(トルク τ\tau=慣性モーメント II×角加速度 α\alpha)です。

  • したがって同じ角加速度 α\alpha を得るには、慣性モーメントが大きいほど大きなトルク(力のモーメント)をかける必要があります。

今回の長方形板の場合

  • Ix=13ma2I_x = \tfrac13 m a^2
  • Iy=112ma2I_y = \tfrac1{12} m a^2
  • Iz=512ma2I_z = \tfrac5{12} m a^2

のうち IzI_z が最大なので、zz 軸まわりの回転は最も「回しにくい」(最も大きなトルクが必要)ということになります。