次の物質について、下線を付けた原子の酸化数が最大のものはどれか。
  • HNO3
  • Cr2O72-
  • MnO4
  • NO2
  • H2SO4

技術士の過去問 平成27年度(2015年) 基礎科目「材料・化学・バイオに関するもの」 問20 – 過去問ドットコム

この問題は、下線を付けた原子(=主に中心原子)の酸化数が最大となる化合物を選ぶ問題です。
それぞれの中心原子(下線が付くと想定される原子)の酸化数を計算しましょう。


各物質の酸化数計算:

① HNO₃(硝酸)

  • H: +1
  • O: −2 × 3 = −6
  • 全体の電荷:0
    → N の酸化数 = 0 − (+1) − (−6) = +5

② Cr₂O₇²⁻(ニクロム酸イオン)

  • O: −2 × 7 = −14
  • 全体の電荷:−2
    → 2Cr + (−14) = −2
    → 2Cr = +12 → Cr = +6

③ MnO₄⁻(過マンガン酸イオン)

  • O: −2 × 4 = −8
  • 全体の電荷:−1
    → Mn + (−8) = −1 → Mn = +7

④ NO₂(二酸化窒素)

  • O: −2 × 2 = −4
  • 全体の電荷:0
    → N = +4

⑤ H₂SO₄(硫酸)

  • H: +1 × 2 = +2
  • O: −2 × 4 = −8
    → S + 2 − 8 = 0 → S = +6

酸化数まとめ:

物質 中心原子 酸化数
HNO₃ N +5
Cr₂O₇²⁻ Cr +6
MnO₄⁻ Mn +7 ✅(最大)
NO₂ N +4
H₂SO₄ S +6

✅ 答え:MnO₄⁻(過マンガン酸イオン)

中心原子 Mn の酸化数は +7 で、これが最大です。

 

O2の場合はどうなりますか

とても良い質問です。
O₂(酸素分子) の場合、酸素原子同士が共有結合で結ばれていて、**酸化数はどちらの酸素も「0(ゼロ)」**です。


🔹理由:

酸化数とは、ある原子が電子をどのくらい失ったり受け取ったりしているかを“仮定的”に表した数です。

  • O₂は、同じ原子同士(酸素と酸素)が結びついているため、電子の偏りはなく、どちらも電子を失っても得てもいないと考えます。
  • そのため、各酸素原子の酸化数は 0 になります。

🔹比較例:

化学種 酸素の酸化数 備考
O₂ 0 単体、共有結合
H₂O −2 水中の酸素
H₂O₂(過酸化水素) −1 酸素の酸化数が変則的
O₃(オゾン) 0 同位体・単体なので酸化数0

結論:
O₂の酸素原子の酸化数はどちらも「0」です。
これは「単体の酸化数は常に0」という酸化数の基本ルールに従っています。

 

単体とはどういう意味ですか?

単体(たんたい)」とは、1種類の元素だけでできている純粋な物質のことです。


🔹定義:

単体とは:
同じ元素だけで構成される物質。
化学式に使われている元素が1種類だけのもの。


🔹例:

単体の名前 化学式 説明
酸素 O₂ 酸素原子が2個結合した状態
水素 H₂ 水素原子が2個結合
窒素 N₂ 空気中に多く含まれる気体
Fe 金属の単体、構造材や工具に使われる
炭素(黒鉛やダイヤモンド) C 炭素だけでできた構造
Au 金属元素が単体で存在

🔹注意:化合物との違い

用語 内容
単体 1種類の元素でできている O₂、Fe、H₂、C
化合物 2種類以上の元素が化学的に結びついている H₂O(→水)、NaCl(→塩)

🔹ポイント:

  • 単体でも原子1個のもの(Heなど)と、原子が複数結合しているもの(O₂、S₈など)があります。
  • 同じ元素でも構造が異なれば同素体と呼ばれる(例:Cにはダイヤモンドと黒鉛がある)。

ご希望があれば、図や比較表付きでさらに詳しく説明します!