次の物質について、下線を付けた原子の酸化数が最大のものはどれか。
HNO3 Cr2O72- MnO4– NO2 H2SO4
この問題は、下線を付けた原子(=主に中心原子)の酸化数が最大となる化合物を選ぶ問題です。
それぞれの中心原子(下線が付くと想定される原子)の酸化数を計算しましょう。
各物質の酸化数計算:
① HNO₃(硝酸)
- H: +1
- O: −2 × 3 = −6
- 全体の電荷:0
→ N の酸化数 = 0 − (+1) − (−6) = +5
② Cr₂O₇²⁻(ニクロム酸イオン)
- O: −2 × 7 = −14
- 全体の電荷:−2
→ 2Cr + (−14) = −2
→ 2Cr = +12 → Cr = +6
③ MnO₄⁻(過マンガン酸イオン)
- O: −2 × 4 = −8
- 全体の電荷:−1
→ Mn + (−8) = −1 → Mn = +7
④ NO₂(二酸化窒素)
- O: −2 × 2 = −4
- 全体の電荷:0
→ N = +4
⑤ H₂SO₄(硫酸)
- H: +1 × 2 = +2
- O: −2 × 4 = −8
→ S + 2 − 8 = 0 → S = +6
酸化数まとめ:
物質 | 中心原子 | 酸化数 |
---|---|---|
HNO₃ | N | +5 |
Cr₂O₇²⁻ | Cr | +6 |
MnO₄⁻ | Mn | +7 |
NO₂ | N | +4 |
H₂SO₄ | S | +6 |
答え:MnO₄⁻(過マンガン酸イオン)
中心原子 Mn の酸化数は +7 で、これが最大です。
O2の場合はどうなりますか
とても良い質問です。
O₂(酸素分子) の場合、酸素原子同士が共有結合で結ばれていて、**酸化数はどちらの酸素も「0(ゼロ)」**です。
理由:
酸化数とは、ある原子が電子をどのくらい失ったり受け取ったりしているかを“仮定的”に表した数です。
- O₂は、同じ原子同士(酸素と酸素)が結びついているため、電子の偏りはなく、どちらも電子を失っても得てもいないと考えます。
- そのため、各酸素原子の酸化数は 0 になります。
比較例:
化学種 | 酸素の酸化数 | 備考 |
---|---|---|
O₂ | 0 | 単体、共有結合 |
H₂O | −2 | 水中の酸素 |
H₂O₂(過酸化水素) | −1 | 酸素の酸化数が変則的 |
O₃(オゾン) | 0 | 同位体・単体なので酸化数0 |
結論:
O₂の酸素原子の酸化数はどちらも「0」です。
これは「単体の酸化数は常に0」という酸化数の基本ルールに従っています。
単体とはどういう意味ですか?
「単体(たんたい)」とは、1種類の元素だけでできている純粋な物質のことです。
定義:
単体とは:
同じ元素だけで構成される物質。
化学式に使われている元素が1種類だけのもの。
例:
単体の名前 | 化学式 | 説明 |
---|---|---|
酸素 | O₂ | 酸素原子が2個結合した状態 |
水素 | H₂ | 水素原子が2個結合 |
窒素 | N₂ | 空気中に多く含まれる気体 |
鉄 | Fe | 金属の単体、構造材や工具に使われる |
炭素(黒鉛やダイヤモンド) | C | 炭素だけでできた構造 |
金 | Au | 金属元素が単体で存在 |
注意:化合物との違い
用語 | 内容 | 例 |
---|---|---|
単体 | 1種類の元素でできている | O₂、Fe、H₂、C |
化合物 | 2種類以上の元素が化学的に結びついている | H₂O(→水)、NaCl(→塩) |
ポイント:
- 単体でも原子1個のもの(Heなど)と、原子が複数結合しているもの(O₂、S₈など)があります。
- 同じ元素でも構造が異なれば同素体と呼ばれる(例:Cにはダイヤモンドと黒鉛がある)。
ご希望があれば、図や比較表付きでさらに詳しく説明します!