新型コロナウイルスの環境除染方法 エンベロープウイルスの 構造と不活性化機序

新型コロナウイルスの感染性をなくすためには、脂質二重膜、カプシド、RNAのいずれかを破壊すればよいということです。特に界面活性剤は、脂質二重膜の破壊に有効です。

エンベローブウイルスは3つの要素から構成

コロナウイルスとインフルエンザウイルスは、共にエンベロープウイルスに分類され、核酸(RNA)から成る遺伝子、RNAを取り巻くタンパク質から成るカプシド、スパイクなどのタンパク質を包含した脂質から成るエンベロープ、の大きく分けて3つの要素から構成されています。要素のうちエンベロープは脂質二重膜構造であり、ウイルスが感染した宿主細胞に由来します。コロナウイルスのエンベロープは、ヒト宿主細胞内の出芽部位である小胞体―ゴルジ装置中間体(ERGIC)の細胞内膜を借り受けたものになります。同様に、インフルエンザウイルスのエンベロープは出芽部位の細胞形質膜由来となります(Jiang et al., 2020)。

宿主細胞への接触前に破壊することで不活性化

ウイルスの不活性化とは、ウイルス粒子が感染力を失うことを指します。ウイルスは自己増殖はできず、宿主の細胞に感染することでのみ増殖します。ウイルス粒子が宿主細胞に接触する前に上記のウイルス構成要素が破壊されれば、ウイルスの感染は成立せず、増殖することもありません。よって、不活性化のターゲットは、エンベロープ、エンベロープに局在するタンパク質、カプシド、核酸となり、これらを物理的あるいは化学的に破壊することで不活性化は達成されます(fig. )(Namita, 2005; Kampf et al., 2020; Mayo Clinic, 2020)。

細菌への殺菌作用を持つ化合物が有効

エンベロープやそこに埋め込まれたタンパク質は最外層に存在していることから、これらをターゲットとして不活性化をもたらす既存の消毒剤や化合物が多数知られています。逆の見方をすると、新型ウイルス不活性化効果を持つ化合物を探索する場合、ウイルスの最外層の分子の特性、特に相互作用に重要な物理化学的特性を理解することが重要となります。最外層を脂質二重膜、タンパク質とする構造は細菌も同じです。このため細菌に対し殺菌作用を持つ化合物はエンベロープウイルス不活性化能を有する傾向があることをKampfらは指摘しています(Kampf et al., 2020)。

スパイクを変性させることにより感染性が消失

スパイクと呼ばれる特徴的な突起状の糖修飾タンパク質も、コロナウイルス不活性化の重要なターゲットとなります。SARS-CoV-2を含めたコロナウイルスの場合、1回膜貫通タンパク質であるスパイクがエンベロープ外層に露出しており、宿主細胞のレセプターとの結合に重要な役割を果たします(CDC, 2020)。このため、スパイクが不活性化剤により変性しタンパク質フォールディングが崩れると、ACE2受容体との結合能が失われ、宿主細胞への特異的な感染性が消失すると考えられます。

 

引用:https://www.kao.com/jp/hygiene-science/expert/inactivation-methods-new-coronavirus/inactivation-mechanism/、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjra/30/1/30_5/_pdf

 

オゾンによる新型コロナウイルス不活化を確認

 

奈良県立医科大学を中心とする研究グループはオゾンガス曝露による新型コロナウイルスの不活
化実験を行い、オゾンにより、新型コロナウイルスが不活化されることを実験により明らかにした。

 

引用:http://www.naramed-u.ac.jp/university/kenkyu-sangakukan/oshirase/r2nendo/documents/press_2.pdf