令和3年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-29 固定された2次元物体周りの流体流れにおける抗力の計算

著者:副業の宮殿|製造業に携わる現役エンジニア。技術士試験対策書籍をKindleで複数出版。技術ブログ「副業の宮殿」にて製造業DX・AI活用の情報を発信中。

 

この問題は**運動量欠損法(momentum deficit method)**を使って,2次元物体に働く抗力 per unit span を求める典型問題です。


目次

■ 物理状況

  • 一様流 [U_\infty] が物体に当たる
  • 物体下流(CD)では速度が (u(y)) に変化
  • 図の長方形 ABCD をガウスのコントロールボリュームとする
  • 圧力は AB, CD で同じ(よって圧力抗力はなし)
  • 抗力は運動量欠損によって求める

■ 抗力の考え方

物体が流体に及ぼす抗力 = 流体が物体に及ぼす力(反作用)

抗力 = 流体の運動量の減少量

流体の運動量流束(1長さあたり)は

[
\rho u^2(y)
]

しかし,下流の運動量欠損を考えるための表現は

[
\rho u(y)[U_\infty – u(y)]
]

これが,流れ1本あたりの欠損分です。

物体がなければ下流は全部 (U_\infty)。
なので,欠損流束を (y=-h \sim h) で積分すると抗力:

[
D’ = \rho \int_{-h}^{h} u(y)\left(U_\infty – u(y) \right) dy
]


■ 選択肢の確認

選択肢を見比べると,これと一致するのは

[
\rho \int_{-h}^{h} u(y){U_\infty – u(y)} dy
]

✅正解:

[解答]①

参考

曲管における運動量の法則の問題

技術士第一次試験-令和3年度機械部門Ⅲ-29解答例 | 技術士のたまご

 

 

■ よくある間違いの修正

選択肢 内容 間違い理由
② [ \rho \int (U_\infty^2 – u^2)dy] 欠損を直接差分 渦なし条件で×, 同じ式に見えるが形式が異なる
③ [ \rho \int U_\infty u (U_\infty – u)dy] 余計な (U_\infty) 次元が違う
④ [ \frac{\rho}{2} \int U_\infty (U_\infty-u) dy] 係数・式が誤り 乱流境界層式の誤応用
⑤ [ \rho\int (U_\infty-u) dy] 慣性欠損でない 質量欠損

■ まとめ

抗力 = 下流の運動量欠損

[
D’ = \rho \int_{-h}^{h} u(y)(U_\infty – u(y))dy
]

 

抗力は運動量の欠損なのですか?抗力係数はどうですか?

良い質問です。
重要なポイントを整理します。


抗力 = 運動量の欠損 なのか?

はい、流れ場で抗力を求めるとき

物体が流体に与えた力(=抗力)
= 流体が持ち去った運動量の減少(欠損)

という考え方を使います。

これは運動量保存則(Newton 第2法則と流体の制御体積法)に基づきます。

例:運動量欠損法

物体の後流で速度分布が (u(y)) になるとき,

[
D’ = \rho \int u(y)\left(U_\infty – u(y)\right)dy
]

という式で抗力(2D物体の単位スパン当たり)を求めます。

物体が流れを減速させた → 運動量が失われた
→ その分の力を物体が受けている(抗力)

という構図です。


抗力は常に運動量欠損で表すのか?

いいえ、必ずしもこの形で表わすわけではありません。

他の形式:

  • 圧力分布の積分
  • 摩擦応力の積分
  • Navier–Stokes で解析
  • CFDで直接算出

しかしどの方法でも最終的には同じ抗力が出ます。
その根拠は運動量保存則です。


✅ 抗力係数とは?

抗力 (D) を無次元化したもの:

[
C_D = \frac{D}{\frac{1}{2}\rho U_\infty^2 A}
]

  • (A):代表投影面積
  • (\frac12 \rho U_\infty^2):動圧

抗力係数は,「流れの抗力を規格化した指標」

です。

抗力係数そのものは運動量欠損ではなく
抗力を動圧 × 面積で無次元化した量です。


✅ まとめ

項目 意味
抗力 (D) 流体が物体を押す力
抗力の発生源 圧力差 + 摩擦 +(仕切り面では)運動量欠損
抗力は運動量欠損? ✅ 流れ場から評価するとそうなる
抗力係数 (C_D) (D) を (\tfrac12\rho U_\infty^2 A) で無次元化

抗力は運動量の欠損から求められる
抗力係数は抗力を無次元化した指標


✅ 補足:物体のどこに抗力が働く?

成分 説明
圧力抗力 (form drag) 前後の圧力差
摩擦抗力 (skin friction drag) 壁面摩擦によるせん断

後流の運動量欠損には両方の効果が含まれるので便利。


必要なら

  • 運動量欠損法の厳密導出
  • 有名な後流の抗力係数(円柱、翼、球など)
  • 実験的に抗力係数がどう測定されるか

なども説明できます。

続けますか?

運動量と運動エネルギーはことなりますか?

 

はい、運動量と運動エネルギーは異なる量です。
しばしば混同されますが、意味も式もまったく違います。


✅ 定義と違い

項目 運動量 ( \mathbf{p} ) 運動エネルギー (E_k)
意味 質量×速度(運動の勢い) 運動によって持つエネルギー
(\displaystyle \mathbf{p}=m\mathbf{v}) (\displaystyle E_k=\frac12 m v^2)
ベクトル/スカラー ベクトル量 スカラー量
保存則 孤立系で保存(運動量保存則) 保存しない(損失や変換あり)
力との関係 (\displaystyle F = \frac{dp}{dt}) エネルギー変化は仕事と熱で変わる

✅ 物理的な違いのイメージ

運動量

どれだけ押し返してくるか(力の伝達)

例:
軽いピンポン球(高速) vs 重いボール(低速)

  • ピンポン球 → 運動量小さい(弱い衝突)
  • 重いボール → 運動量大きい(強い衝突)

運動エネルギー

どれだけ仕事ができるか(破壊力)

同じ速さでも、質量が大きければ大きな破壊力。

自動車や銃弾の威力は運動エネルギーで決まる。


✅ 流体力学での役割の違い

分野 使う概念
流れ場の力(抗力、揚力) 運動量 運動量保存式、抗力=運動量欠損
圧力や速度の関係 エネルギー ベルヌーイの式 (p + \frac12\rho v^2 = \text{const})

抗力はどちらか?

運動量(と圧力)で決まる

なぜなら力 = 運動量変化率だから
[
F = \frac{d}{dt} \int \rho \mathbf{v}, dV
]

※抗力係数 (C_D) に出る (\frac12\rho U^2) は動圧であり
「単位体積あたり運動エネルギー」と同じ次元ですが
抗力を直接運動エネルギーから決めるわけではありません。

ややこしいですが、

  • 抗力=運動量の損失
  • しかし抗力係数の基準は動圧 (\frac12\rho U^2)

という構造です。


✅ まとめ

要点 内容
運動量 = 質量×速度 力と衝突に関係
運動エネルギー = (\frac12 m v^2) 仕事・破壊力に関係
抗力は運動量変化 エネルギーではない
流体係数に動圧が出る スケールとして便利なため(無次元化)

必要なら、

  • なぜ抗力係数に (\frac12\rho U^2) が出るか
  • ベルヌーイ式と運動量式の違い
  • 後流の損失エネルギーと抗力の関係

なども図で説明できます。続きを聞きたいですか?

 

運動量のmにあたる部分がρu(y)、vにあたる部分がu-u(y)ですか?mはなぜ後流の速度から求めるのですか

とても良いところに着目されています。
ただし、少し誤解があるので丁寧に整理します。


✅ 流体の運動量の表現

粒子の場合:

[
p = m v
]

流体では「単位時間に通過する質量 × 速度(運動量流束)」を使います。


■ 流体の質量流量

[
dm = \rho, u(y),dy \quad(\text{2次元流れで単位幅})
]

  • (\rho):密度
  • (u(y)):局所速度
  • (dy):厚み
  • 単位時間あたり → 質量流量 = (\rho u(y) dy)

つまり質量流量が ( \rho, u(y),dy )

(m) に相当するものが **「瞬間に流れる質量」**でなく
時間あたりに流れる質量(質量流束)


■ 運動量(流束)

流体の運動量(単位時間あたり)は

[
\text{運動量流束} = (\text{質量流量}) \times (\text{速度})
= \rho u(y),dy \cdot u(y)
= \rho u^2(y),dy
]

これが「流れの運び去る運動量」です。


✅ では抗力は?

物体は流れの運動量を減らす
→ 減った分が抗力

物体がなければ下流速度は (U_\infty)

よって運動量欠損

[
\Delta(\rho u^2)\ dy = \rho\left[U_\infty^2 – u^2(y)\right]dy
]

しかしこれを分配すると

[
U_\infty^2 – u^2 = (U_\infty – u)(U_\infty + u)
]

後流近くでは
(U_\infty + u ≈ 2u) とみなせるので、

実用形として

[
D’ = \rho \int u(y)\left(U_\infty – u(y)\right)dy
]

が使われます。


✅ 質問の回答

Q1:

運動量の m にあたる部分が ρu(y)、v にあたる部分が u−u(y) ですか?

違います。

粒子物理 流体力学
質量 (m) 質量流量 ( \rho u(y)dy )
速度 (v) 速度 (u(y))

です。

((U_\infty – u)) は「損失した速度成分」を表すために出てきます。


Q2:

mはなぜ後流の速度から求めるのですか?

理由:

物体の影響は後流に現れるから
→ 下流の速度分布から運動量損失を測る

上流は一様 (U_\infty) なので
物体による影響は後流にしか現れません。


✅ もっと短くまとめると

意味
(\rho u(y)dy) 単位時間に通過する質量(質量流量)
(\rho u^2(y)dy) 単位時間に通過する運動量
(\rho u(y)(U_\infty – u(y))dy) 運動量損失(抗力)

✅ 例え話

水路を流れる水の勢いが物体の後ろで弱くなる
→ 勢いの低下=物体が受けた力

だから
後流(wake)の情報で抗力が決まるのです。


必要なら、図で

  • 質量流束
  • 運動量流束
  • 後流のモーメンタム厚さ

なども説明できます。

次は「排除厚さ δ* と運動量厚さ θ の関係」も話しましょうか?

後流近くでは ∞ + ≈ 2 U ∞​+u≈2u とみなせるので、がよくわかりません。大きさが異なり近似できるように気がしません

ご指摘の点、とても良いところです。
「(U_\infty + u \approx 2u) とみなす」という説明は誤解を招く表現でした。
あなたの直感どおり、一般に成り立つ近似ではありません

この近似は、「後流の速度 (u(y)) が (U_\infty) にかなり近い(=薄い後流・弱い抗力)」という特定の状況でのみ使われることがありますが、本質的には必要ありません。

正確な説明に修正します。


✅ 正しい抗力の運動量欠損式

物体が流れを減速させる → 運動量を失わせる

[
D’ = \rho \int_{-h}^{h} [U_\infty^2 – u^2(y)],dy
]

ここで恒等式

[
U_\infty^2 – u^2 = (U_\infty – u)(U_\infty + u)
]

なので、

[
D’ = \rho \int (U_\infty – u)(U_\infty + u),dy
]

これが正しい理論式です。


✅ なぜ教科書で (\rho \int u(U_\infty – u),dy) と書くの?

「運動量厚さ (θ)」の定義と一致させるための便宜的な書き換えです:

[
\theta = \int_0^\delta
\frac{u}{U_\infty}\left(1-\frac{u}{U_\infty}\right) dy
]

これを使うと、抗力 per unit span は

[
D’ = \rho U_\infty^2 \cdot 2\theta
]

となるので、よく使う形は

[
D’ = \rho \int u(U_\infty – u)dy
]

ただし、これは**小さな後流(薄い境界層近似)**で

[
u \approx U_\infty
]

が成り立つときに、

[
U_\infty + u \approx 2U_\infty
]

と置いて

[
(U_\infty – u)(U_\infty + u)
≈ (U_\infty – u)\cdot 2U_\infty
= 2U_\infty(U_\infty – u)
]

線形化したものです。

✅ 正しい近似はこれです

[
U_\infty + u \approx 2U_\infty \quad(\text{後流が薄いとき})
]

(U_\infty + u \approx 2u) ではありません。

あなたが違和感を覚えたのは正しいです。


✅ なぜ後流の速度を使うの?

  • 上流は一様 (U_\infty)
  • 抗力は「流れの勢いがどれだけ減ったか」

だから後流の運動量だけを見れば十分です。


✅まとめ

誤解しやすい点 正しい内容
(U_\infty + u \approx 2u) ❌ 一般に成立しない近似
薄い後流で (u \approx U_\infty) ✅ 正しい
近似なら (U_\infty + u \approx 2U_\infty) ✅ 正しい
抗力=運動量欠損 ✅ 本質

もし希望なら、次の説明もできます:

  • 運動量厚さ (θ) の導出
  • CFD後流分布から抗力を求める方法
  • 実験データで抗力を積分評価する方法

どこまで掘り下げますか?

あわせて読みたい

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

目次