業務の見える化によって「いまだにそれを手作業でやっているのか!と驚くような仕事」がいくつも見つかった。
エクセルのマクロ機能を使いていれば自動化できたが、それを必ずしも知っているわけではなかった。

そのため、ブラザー工業の業務プロセス改革を進めるうえで、社員のITスキルアップは3つめのキーポイントになっている。
まだスキルアップの途上ではあるが、業務プロセス改革のためだけではなく、長い目で見て会社と個人がともに成長していくのに必要不可欠だ、と佐々木氏は考えている。

ITスキルを身に付けてもらうための講師役は、ソフト技術開発部やIT戦略推進部の人材が担う。
ブラザー工業は業務を自動かするためにRPAの活用を進めており、ソフト技術開発部やIT戦略推進部のメンバーが各部門のロボット開発を支援している。
現場の社員には、この経験を通して「業務を変えて効率化するスキル」と「ITスキル」の両方を高めてもらう考えだ。

 

同社がITスキルアップにこだわるのは、次のような理由がある。
「業務の効率化・自動化に欠かせないRPAやエクセルのマクロ機能などを使いこなす能力は、今後、社員にとって標準のITスキルになっていく。人生100年時代といわれるなか、これらのスキルがないと、年齢を重ねるとともに活躍できなくなるだろう。将来の幸せを考えるなら、1人でも多くの社員にこれらのスキルを身に付けてもらいたい。『今回の業務プロセス改革は絶好のスキルアップの機械だ』という強い思いをもってプロジェクトを進めている」と佐々木氏は語る。

 

また、ブラザー工業の写真が高いITスキルを持って自社の業務を効率化・自動化でいるようになれば、そのアイデアを製品付属のソフトウェアに組み込んでいける。
この点からも社員のITスキルアップは長期的な成長を目指すうえで重要なポイントといえる。

業務プロセス改革をきっかけに、ITスキルアップの機運は社内で徐々に高まっている。
例えば、AI(人工知能)の分野で用いられるプログラミング言語「パイソン」の勉強会を社員が自発的に開催するようになった。
「講師役に名乗りを上げたのは、ソフトウェア開発の担当者ではなく、回路設計に携わる電気系のエンジニアだ。自分でパイソンを学び、同じように専門家ではない立場の参加者に教えている。勉強会は定員50人ほどの会議室で開いていて、いつも満席になるほど盛況だ」(佐々木氏)という。

 

社内では、既にAIの活用に取り組んでいる。勉強会の成果を活かすかたちで、AI活用をさらに本格化させたいと佐々木氏は期待している。
「これまでは人ではできなかったことを、AIでできるように挑戦していってほしい。そういう土壌が育てば、自社で新しいサービスや製品をどんどん生み出せるようになっていくだろう」。

佐々木氏は業務プロセス改革がもたらす次の時代を見据えている。

 

 

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