旋盤の主軸用電動機の能力

旋盤の主軸用電動機の能力は、切削能力に関係します。加工する素材の種類や硬さ、切削深さなどに応じて選ばれます。より硬い素材や深い切削を行う場合には、より強力な電動機が必要となります。
金属用と木工用では主軸用電動機の能力は大きく違います。

メーカー名 機種名 種類 主軸用電動機の能力 加工物
Mazak(マザック) QUICK TURN 200 CNC 15 kW 金属
Okuma(オークマ) LB3000EXII CNC 15 kW
Mori Seiki(森精機) NLX2500SY/700 CNC 15 kW
滝澤鉄工所 TT-2600G 汎用 7.5kW
Powermatic T_4224Z 汎用 2.2kW 木材

普通旋盤と立て旋盤

普通旋盤と立て旋盤は、その名称からも分かるように、主に旋盤機の形状や構造の違いに基づいて区別されます。以下にそれぞれの特徴を説明します。

普通旋盤(ホライゾンタル旋盤):
普通旋盤は、主軸が水平方向に配置された旋盤です。以下に特徴を示します。

主軸が水平に配置されているため、ワーク(加工対象物)は水平面上で回転します。
一般的な旋盤の形状であり、広く使用されています。
主に小径、短尺な工作物の加工に適している
工具は横方向に移動します。

立て旋盤(バーティカル旋盤):
立て旋盤は、主軸が垂直方向に配置された旋盤です。以下に特徴を示します。

主軸が垂直に配置されているため、ワークは垂直面上で回転します。
主に大型で重いワークや非対称のワークを加工するのに適しています。
主軸に沿って移動する刃物ホルダーや刃物の交換が容易な構造となっています。
工具は鉛直方向に移動します。
加工物に対する重力と遠心力が均等になる。

立て旋盤は主軸が垂直方向に配置されており、大型や非対称のワークを加工するのに適しています。どちらの旋盤も異なる用途に応じて使用され、それぞれの特徴に基づいて加工作業が行われます。

NC旋盤とターニングセンタ

NC旋盤

NC旋盤の主な機能と特徴は以下の通りです。

自動化: NC旋盤は数値制御によって自動的に加工を行います。事前に設定した加工手順やバイトの使い分けに基づいて、高度な自動加工が可能です。作業者が付きっきりで操作する必要がなくなるため、一人で複数台の機械を管理できます。

高精度: NC旋盤は横や縦、高さの座標軸を通じて切り込み位置を制御できます。そのため、加工物の材質や形状に応じて、回転速度や刃物の送り速度を制御し、高精度な加工を実現します。加工位置の正確さは、0.001mmの単位まで可能です。

加工の多様性: NC旋盤は、基本の旋削加工のほかにも穴開け、中ぐり、溝加工、ねじ切りなど、さまざまな加工が可能です。バイトの使い分けによって、多彩な形状を作り出すことができます。

柔軟性: NC旋盤は加工物の材質や形状に応じて、加工条件を柔軟に変更することができます。加工物ごとに最適な回転速度や送り速度を設定することで、効率的な加工を行います。

タレット機能: 主流となっているNC旋盤には、タレットと呼ばれる回転装置があります。タレットには複数のバイトを取り付けておき、加工物を固定したまま異なるバイトによる加工を連続して行うことができます。これにより、加工の効率性が向上し、作業時間の短縮が図れます。

NC旋盤の利点は、高い加工精度と再現性、生産性の向上、作業者の負担軽減、加工の多様性と柔軟性、自動化や効率化などです。これらの特徴と種類によって、さまざまな産業や部品製造業界で広く使用されています。

ターニングセンタ

ターニングセンタは、NC旋盤を基にした工作機械であり、マシニングの機能も備えています。ターニングセンタは、複合加工が可能な旋盤の進化形と言えます。NC旋盤との違いは、ターニングセンタにはドリブンツールと呼ばれる回転可能なツールホルダを搭載する回転パレットがあります。これにより、ドリル、フライス、エンドミルなどの複数の回転工具を使い分けることができます。また、コンピュータ制御によって切削工具と被加工物を3次元で移動・回転させることで、複雑な形状の加工も自動化できます。

ターニングセンタでは、さまざまな加工が可能です。旋削加工に加えて、フライス加工、穴あけ加工、リーマ、タップ加工、中ぐり加工なども行うことができます。ターニングセンタは1台で多機能な加工ができるため、工程の簡素化や生産性の向上につながります。

ターニングセンタの導入には多くのメリットがあります。まず、省力化や省人化が実現できます。複数の工作機械を使う場合に比べて、1台のターニングセンタで複合加工ができるため、作業の手間や時間を削減できます。また、工程の簡素化や管理コストの削減も期待できます。さらに、機械の専有面積を削減して工場内を有効活用できる点や、加工精度の向上もメリットです。

潤滑油

働きと重要性

潤滑油は機械や装置の正常な動作を維持するために欠かせない要素です。以下に潤滑油の働きと重要性について説明します。

摩擦低減と摩耗防止: 潤滑油は摩擦を低減し、機械部品や装置の摩耗を防止します。機械部品は運動や接触によって摩擦が生じ、その結果として熱や摩耗が発生します。潤滑油は適切な粘度と潤滑膜を形成することで、部品同士の接触を減らし、摩擦や摩耗を最小限に抑えます。

防錆効果: 潤滑油は金属部品を酸化や腐食から保護する役割も果たします。適切な潤滑油中の防錆剤や添加剤は、金属表面をコーティングし、湿気や化学物質からの侵入を防ぎます。これにより、金属部品の腐食や劣化を防止し、機械の寿命を延ばします。

振動吸収効果: 潤滑油は機械の振動を吸収し、衝撃や振動の伝播を軽減します。機械作業中に生じる振動は部品の疲労や損傷の原因となりますが、潤滑油の適切な粘度と潤滑性によって振動吸収効果が発揮されます。

 

潤滑油の重要性は以下のようにまとめられます

潤滑油は機械部品の正常な動作を維持し、効率的かつ順調な運転を可能にします。
適切な潤滑油の選択と定期的な交換は機械の寿命を延ばし、メンテナンスコストを低減します。
潤滑油の品質管理と定期的な点検は、潤滑油の効果を最大限に活かすために重要です。以下に潤滑油の重要性について追加の情報を提供します。

品質管理

定期的な潤滑油の点検と交換は非常に重要です。以下の理由から、潤滑油の品質管理には注意が必要です:

劣化: 潤滑油は時間と共に劣化し、その性能が低下します。摩耗粉や汚染物質の蓄積、添加剤の減少などにより劣化が進行し、機械部品に悪影響を与える可能性があります。定期的な点検と交換により、劣化した潤滑油を適切なタイミングで取り替える必要があります。

汚染物質: 外部からの異物や汚染物質が潤滑油中に侵入する可能性があります。これには金属粉、塵埃、水分、化学物質などが含まれます。これらの汚染物質は潤滑油の性能を低下させ、機械部品に損傷を与える可能性があります。定期的な点検と潤滑油の交換により、汚染物質を除去し、機械の正常な運転を確保する必要があります。

温度変化: 潤滑油は適切な温度範囲で動作する必要があります。高温環境では潤滑油が劣化し、粘度が低下する可能性があります。逆に、低温環境では潤滑油の流動性が低下し、潤滑性が損なわれることがあります。適切な潤滑油の選択と定期的な点検により、温度変化に対応できる潤滑油を確保することが重要です。

メーカーの推奨事項: 機械や装置の製造元は、特定の潤滑油の使用を推奨する場合があります。メーカーが推奨する潤滑油は、特定の要件や環境条件に最適化されており、機械の最適な性能を引き出すために重要です。メーカーの指示に従い、適切な潤滑油を使用することが必要です。

潤滑油の適切な管理と定期的な点検は、機械や装置の寿命を延ばし、効率的な動作を確保するために不可欠です。定められた交換スケジュールに従い、品質の高い潤滑油を使用し、必要に応じて適切なメンテナンスを行うことで、機械の信頼性と耐久性を確保することができます。

切削油剤

役割と要求性能

切削油剤は、金属加工時に使用される油です。その役割や要求される性能は、以下のようなものがあります。

潤滑性: 切削油剤は、切削工具と加工材料の接触面で摩擦を軽減し、スムーズな切削操作を可能にします。潤滑性が十分であることにより、摩擦や熱の生成を抑え、工具の寿命を延ばすことができます。また仕上げ面性状の向上が期待されます。潤滑作用には切削熱により溶けた工作物の一部が切削工具の切れ刃先端に付着する溶着を防止する効果もあります。

冷却性: 切削油剤は、切削時に発生する熱を効果的に冷却する役割も果たします。適切な冷却性能があることで、加工時の温度上昇を抑えます。これにより、工作物の膨張と切削工具の軟化を抑制し加工品質の向上や歪みの軽減などが実現されます。

洗浄性: 切削油剤は、切削時に発生するチップや削りカスを効果的に洗い流す役割も果たします。切削時に切りくずを嚙み込むとチップが欠けます。切りくずは加工硬化により本来の硬さよりも硬くなっています。

水溶性切削油

切削油剤には不水溶性切削油剤と、水溶性切削油剤の2種類があります。ここでは水溶性切削油剤を紹介します。

油種 外観 特徴 適用例
A1種 乳白色(エマルション) 優れた潤滑性 鋳鉄、非鉄金属、銅の切削加工
A2種 半透明ないし透明(ソリューブル) エマルションより洗浄性、冷却性が高い 鋳鉄、非鉄金属、銅の切削加工や研削加工
A3種 透明(ソリューション) 消泡性にすぐれる。冷却性が高い 鋳鉄の切削加工、鋳鉄、鋼の研削加工

 

切りくず

金属を旋盤やフライス盤などで切削加工すると螺旋状・リボン状・チップ状などさまざまな形をした切りくずがもれなく発生し、これらは切粉(きりこ)、機械や地方によってはダライ粉とも呼ばれます。切りくずの色、形状、長さなどを見るとさまざまな事がわかると言われています。

ここでは主に旋盤加工での切りくずについてご紹介します。

詳細:機械加工での切りくずは全てを物語る?情報の宝庫!

 

工具の材質と特徴

コーナ半径

ノーズ半径は刃先の強度と仕上げ面あらさに非常に影響します。一般的には送りの2~3倍が適当です。
切込み量の下限は、一般的に0.1mm/直径と考えることが妥当です。切り込み量が小さすぎる場合には、使用するバイトのノーズ半径にもよりますが、切れ刃が工作物に食い込まず工作物表面を上滑りするため、仕上げ面が汚くなったり、切れ刃の切れ味が悪くなったりすることがあります。

〇コーナ半径による影響
コーナ半径を大きくすると、仕上げ面粗さが向上し ます。
コーナ半径を大きくすると、刃先強度が増します。
コーナ半径を大きくしすぎると抵抗が増加し、びび りなどの原因になります。
コーナ半径を大きくすると逃げ面、すくい面摩耗が 減少します。
コーナ半径を大きくしすぎると切りくず処理性は悪 くなります。

参考:三菱マテリアル株式会社 コーナ半径

<参考>

NC旋盤作業の基礎知識Q&A

加工基礎

バックラッシの測定方法
  1. ダイヤルゲージを固定して刃物台当てる
  2. 刃物台をダイヤルゲージ側に動かす。その後ダイヤルゲージの目盛りを0にする
  3. 刃物台を2.と同一方向に動かす
  4. 3.開始時と同じメモリまで刃物台を逆方向に動かす。
  5. ダイヤルゲージの読み値がバックラッシとなる。(0の場合はバックラッシは0となる)
外径、内径加工のビビリ対策
  1. チャックの掴み代を大きくして、工作物の固定を強固にする
  2. 異形物のチャックへの取り付けは、回転のアンバランスがないようにする
  3. 刃物台からの工具の突き出し長さをできるだけ少なくする
  4. 外径工具を刃物台に取り付けるときは、わずかに心高にすると前逃げ角が小さくなり、低いばあいよりビビリが発生しにくい。しかし摩擦が大きくなり工具先端が工作物に食い込む傾向がある
  5. 溝容れバイトのような平バイト、あるいは剣先バイトでの加工はビビリやすい。片刃バイトの方がビビリに対して有効である。
  6. ノーズRを小さくして切削抵抗を小さくする
  7. ;ビビリが発生したら、まず切削速度を上下に変化させて様子を見る。そのあとで送り量、切込み量を色々変化させてビビリを抑える。一般に切削速度は低めに、送り量は高めにする
  8. 長物加工は心押台を使うか振れ止めを利用して工作物の振れを抑制する
外径、内径加工の切りくず対策
  1. ワークの材質を切りくず処理がしやすい材質に変更する
  2. 切れ刃チップの形状やブレーカの形状について検討する
    ・切れ刃角を小さくすると、同じ送り量でも切りくず厚みが増大するため切りくずが折断されやすい
    ・ノーズRを小さくすると、同じ送り量でも切りくず厚みが増大するため切りくずが折断されやすい
    ・ブレーカ幅を小さくして切りくず螺旋の半径を小さくする
    ・ポジティブのすくい角を小さくする
  3. 高送りで加工した方が切りくずを折断できる
  4. ボーリングバーと加工穴との空間を多く取って、切りくずの排出を容易にする
  5. 高圧の切削油剤を多量に吹き付けることによって切りくずを急冷し、切りくずを折断する。

    <参考>

    NC旋盤作業の基礎知識Q&A

    切れ刃の名称と働き

    横切れ刃角

    ・横切れ刃角を大きくすると切りくずの接触長さが長くなり、切削力が分散され工具の寿命を長くする
    ・横切れ刃角を大きくすると背分力が大きくなり、ビビリの原因となる

    前切れ刃角

    前切れ刃角は、切削工具の刃先が進行方向に対して傾いている角度を指します。新しく切削された面と工具との摩擦を防ぎます。通常は5~15°です。この角度が大きいと、刃先からの熱の逃げる速度が遅くなり刃先の温度が上昇します。

     

    すくい角

    すくい角には正(ポジティブ)と負(ネガティブ)がある。すくい角は工具の切れ味、切りくずの排出性に影響します。
    ・正のすくい角を大きくすると切れ味が良くなるが刃先の強度は低下する。
    ・正のすくい角を大きくすると切りくずが流れ形になり、切りくずが工具側に伸びる。
    ・一般に鍛造品、鋳鋼の荒加工や断続切削には負のすくい角で強度を持たせた工具、柔らかい被削材や機械の剛性がないときは正のすくい角の工具を用いる。

     

    前逃げ角

    実際に切削を行わない部分に隙間を与え、工具と被削材とが摩擦することを防ぐ。
    ・前逃げ角を大きくすると逃げ面摩耗は減少するが、刃先強度が減少する。
    ・一般に硬い被削材を加工するとき、あるいは刃先強度を必要とするときはこの角度を小さく、柔らかい被削材や加工硬化しやすい被削材には大きくする。

    ノーズR

    刃先強度や仕上げ面粗さに影響する。
    ・ノーズRを大きくすると刃先強度は増加し、仕上げ面粗さが向上する。
    ・ノーズRを大きくすると切削抵抗が増加し、ビビリなどの原因となる。

    <参考>

    NC旋盤作業の基礎知識Q&A

    <他の記事>