刃物(チップ)の材質

現在、主として旋盤加工で使用される刃物(チップ)の種類は約9種類です。
チップに必要とされる基本性質は硬さと粘さです。

高速度工具鋼(ハイス)

  • 超硬合金よりも「硬さ」が劣る一方で、「粘さ」に優れる
  • 熱に弱く、約600℃になると急激に硬さが低下する

超硬合金

  • 切削時に発生する切りくずの形状でP、M、Kの3種類に分類される。
  • P種は、流れ形切りくずが発生し、熱が発生する加工に適する(熱的損傷に強い)。:炭素鋼や一般鋼材
  • M種は、2種類の中間的な材種:ステンレス
  • K種は、せん断形の切りくずや亀き裂の切りくずが発生し、すくい面摩擦よりも逃げ面摩擦が激しい材料に適する(機械的損傷に強い):鋳鉄やアルミニウム

チップの角度(すくい角、逃げ角、切れ刃角)

チップの角度には、「すくい角」、「逃げ角」、「切れ刃角」の3つがあり、さらに、各角度は見る方向により2つに分類され、すくい角には「上すくい角と横すくい角」、逃げ角には「前逃げ角と横逃げ角」があります。

  • すくい角
    チップが工作物に食い込む際の「挿入角」を示します。すくい角が大きい場合には、チップが工作物を剝がしやすく、スムーズに削れますが、すくい角が小さい場合には、工作物をむりやり剥がしているようになります。

    つまり、すくい角は大きいほど切れ味が良いと言えます。ただし、すくい角が大きく、チップの先端が鋭利になると、チップ先端の強度は弱くなり欠けやすくなる不都合もあります。
    一般に、すくい角が1°大きくなると、切削動力(切削に必要な力)が1%減少するといわれます。

  • 逃げ角
    チップが工作物に食い込む際のチップと工作物の隙間の角度です。
    逃げ角が大きい場合には、「くさび」の効果により、チップが工作物に食い込みやすくなる一方、逃げ角が0°の場合には、チップが工作物に食い込まず、摩擦が大きくなってしまいます。
    ただし、逃げ角を大きくすると、すくい角と同様に、チップ先端の強度が弱くなり欠けやすくなります。
    なお、逃げ角は、工作物の材質には影響されず、一般的に、5°~12°です。
  • 横切れ刃角
    すくい角に次いで工具寿命や切りくずの流出など切削性能に大きな影響を与える角度です。
    横切れ刃角が正の角度に大きくなると、切込み深さが同じでも、切削に作用する切れ刃が長くなるため、単位長さあたりの負担が少なくなり工具寿命が長くなります。
    ただし、切削時に作用する送り方向の切削抵抗(切削力)が工作物の方向に働くため、加工精度が悪くなる傾向にあります。

 

 

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