ツガミとはどんな会社か
ツガミは1937年設立の精密工作機械メーカーです。本店は東京・日本橋富沢町ですが、主力の生産基盤は長岡工場にあります。連結従業員数は3,515名。
製品の中核はCNC精密自動旋盤ですが、ツガミの面白いところは「自動旋盤専業ではない」点です。
| 製品群 | ざっくり何をする機械か | 主な用途 |
|---|---|---|
| CNC精密自動旋盤 | 小物部品を長時間・高精度で量産 | スマホ・光通信・医療・自動車部品 |
| CNC旋盤 | バー材・チャック材を強力に旋削 | 自動車・建機・一般機械 |
| ターニングセンタ | 旋盤+マシニングを一体化、段取り削減 | 複雑形状部品 |
| マシニングセンタ | 高速・高精度な穴あけ・フライス | IT家電〜鉄系部品 |
| 精密研削盤 | 焼入れ鋼・セラミックスの仕上げ | エンジン・変速機・油圧 |
| 精密転造盤 | 切粉レスでねじ・ナールを塑性加工 | 自動車・環境対応部品 |
現場感覚で言うと、ツガミの強みは「熱変位管理・高剛性・工程集約」に集約されます。小物を一台でまとめて仕上げて段取りを減らす、という思想が製品全体に通底していて、これは人手不足が深刻な町工場ほど刺さる価値です。省人化・自動化のニーズが追い風になるのも納得できます。
2026年3月期は過去最高益 ── 数字で見る好調
まず業績の数字を見てみます。2026年3月期(IFRS)は、売上・利益ともに過去最高を更新しました。
| 期末 | 売上収益 | 営業利益 | 親会社帰属利益 | 営業利益率 | ROE |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022/3 | 931.7億円 | 188.6億円 | 94.9億円 | 20.2% | 22.6% |
| 2023/3 | 949.6億円 | 167.6億円 | 77.0億円 | 17.6% | 15.9% |
| 2024/3 | 839.3億円 | 131.0億円 | 53.8億円 | 15.6% | 10.0% |
| 2025/3 | 1,074.1億円 | 233.1億円 | 109.0億円 | 21.7% | 18.2% |
| 2026/3 | 1,291.4億円 | 361.0億円 | 167.5億円 | 28.0% | 23.4% |
注目したいのは、売上の伸び以上に利益の伸びが速いことです。2024年3月期を底に、稼働率の改善と海外拠点のボリューム効果が一気に利益に乗りました。営業利益率28%・ROE23.4%は工作機械メーカーとしてはかなり高い水準です。
直近のニュースでも勢いが続いていて、日本工作機械工業会が発表した5月の受注額は前年同月比37%増の1,768億円で11カ月連続増。AIサーバー向けやデータセンターの冷却装置、ヒト型ロボット、スマホ部品など幅広い分野が中国市場で堅調で、ツガミは中国で生産が追いつかない分をインドに移しているとも報じられています。
会社予想も強気で、2027年3月期は売上1,450億円・営業利益365億円を見込んでいます。
株主還元も強化されている
業績好調を受けて、株主還元も積極的です。
- 2026年3月期の年間配当は85円(前期59円)で過去最高。さらに翌期は98円に増配する方針
- 自己株式取得枠の設定など、ROEを意識した資本政策を明確に打ち出している
- 「資本コストや株価を意識した経営」を公表し、ROE維持・株主価値向上を掲げている
株価も、2025年3月期の高値2,090円に対し、2026年3月期は高値4,305円。利益急拡大を背景に市場評価が大きく切り上がりました。
見落としてはいけない弱点 ── 売上の8割が中国
ここまでは良い話ばかりですが、投資目線で一番大事なのはリスク構造です。
ツガミの2026年3月期の売上地域構成は、こうなっています。
- 国内:5.1%
- 中国:79.9%
- アジア:9.5%
- 米国:3.3%
- 欧州:2.2%
つまり海外売上比率は94.9%、そのうち中国だけで連結売上の約8割。これは好況期には大きな利益レバレッジを生みますが、裏を返せば「中国の景況・政策・為替・地政学」に業績がもろに揺さぶられる構造でもあります。
工作機械はもともと景気循環の影響を受けやすい業種です。実際、2024年3月期は売上839億円まで落ち込んでいて、好不況の振れ幅は小さくありません。だからツガミは「安定成長株」というより、**「収益性は高いが景気に敏感な株」**と捉えるのが実態に近いと思います。
会社自身も主要リスクとして、景気変動・原材料(鋳物・鋼材)価格・人民元を含む為替・海外法規制・拠点災害(新潟/中国浙江/インド)を明示しています。
競合の中でのポジション
工作機械業界の中でツガミがどこで戦っているかも整理しておきます。
| 企業 | 主戦場 | ツガミとの関係 |
|---|---|---|
| シチズンマシナリー | CNC自動旋盤専業 | 自動旋盤の規模・専業深度では上。ただし研削盤・転造盤までの裾野はツガミが広い |
| スター精密 | スイス型自動旋盤 | 加工径ラインアップは強いが、製品群の広さはツガミが上回る |
| DMG MORI | 5軸・複合・デジタル総合 | 大型・複合・デジタルの総合力で勝るが、小型精密量産の純度はツガミに分がある |
| オークマ | NC旋盤・MC・独自CNC | 機械〜CNCの垂直統合が強み。小型自動盤ニッチはツガミの専門性が高い |
| Tornos / INDEX | スイス型自動旋盤専門(海外) | 専業経験は長いが、隣接機種までのポートフォリオはツガミが広い |
ポイントは、ツガミが**「専業勢」と「総合勢」の中間に独自ポジションを作っている**ことです。自動旋盤専業ほど一点突破ではないけれど、研削盤や転造盤まで持つことで「小物の量産工程をまるごと提案できる」。これがニッチ強者としての強みになっています。
現場目線で思うこと
旋盤を触る立場から付け加えると、ツガミが標榜する「熱変位補正」「ガイドブッシュレス主軸」「工程集約」は、どれも現場の歩留まりと段取り時間に直結するテーマです。
AIサーバーやEV部品といった新分野の需要に乗れている今こそ、「需要が正常化したあとも、どこまで高収益を残せるか」が問われるフェーズに入りつつあります。今の28%という営業利益率は中国偏重の好況が前提なので、ここが平常運転に戻ったときの利益水準を冷静に見ておきたいところです。
まとめ
- ツガミ(6101)は小型超精密旋盤に強いニッチ強者
- 2026年3月期は売上1,291億円・営業利益361億円・営業利益率28%・ROE23.4%と過去最高益
- 年間配当85円→翌期98円と株主還元も積極的
- ただし売上の約8割が中国で、景気・政策・為替リスクは大きい
- 評価軸は「高収益が続くか」より「需要正常化後に高収益をどれだけ残せるか」


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