令和2年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-3 鋼線で吊られた剛体棒の荷重に対する鋼線の張力

著者:副業の宮殿|製造業に携わる現役エンジニア。技術士試験対策書籍をKindleで複数出版。技術ブログ「副業の宮殿」にて製造業DX・AI活用の情報を発信中。

 


条件

  1. モーメントのつり合い(A点周り):
    Pl=S1a+S2bP l = S_1 a + S_2 b 
  2. 変位と張力の関係(変位比と張力比が比例する):
    λ1:λ2=S1:S2=a:b\lambda_1 : \lambda_2 = S_1 : S_2 = a : bよって:

    S1=abS2S_1 = \frac{a}{b} S_2 

計算

モーメントの式に

S1=abS2S_1 = \frac{a}{b} S_2

を代入すると:

Pl=abS2a+S2bP l = \frac{a}{b} S_2 \cdot a + S_2 \cdot b

Pl=a2bS2+bS2P l = \frac{a^2}{b} S_2 + b S_2 Pl=S2(a2b+b)P l = S_2 \left(\frac{a^2}{b} + b\right)

Pl=S2a2+b2bP l = S_2 \frac{a^2 + b^2}{b}

S2=Plba2+b2S_2 = \frac{P l \cdot b}{a^2 + b^2}

 

S1を計算すると

S1=abS2=abPlba2+b2S_1 = \frac{a}{b} S_2 = \frac{a}{b} \cdot \frac{P l \cdot b}{a^2 + b^2}

S1=Plaa2+b2S_1 = \frac{P l \cdot a}{a^2 + b^2}

 

鋼線にかかる張力は以下の通りです:

S1=Plaa2+b2,S2=Plba2+b2S_1 = \frac{P l \cdot a}{a^2 + b^2}, \quad S_2 = \frac{P l \cdot b}{a^2 + b^2}

 

[解答] ⑤

参考:技術士第一次試験-令和2年度機械部門Ⅲ-3解答例 | 技術士のたまご

モーメントのつり合いと、力のつり合いではもとめられないですか?

結論:モーメントつり合い+力つり合いだけでは求まりません。

なぜ?

未知量は

  • 鋼線の張力 (S_1,S_2)(2つ)
  • 支点Aの鉛直反力 (A_y)(1つ)

計3つです。
静力学の式は
[
\begin{aligned}
&\text{鉛直力つり合い: } A_y+S_1+S_2=P \
&\text{Aまわりモーメント: } S_1 a+S_2 b=P l
\end{aligned}
]
2本しかないため,このままでは未知数が1つ多く不静定です。
(水平力は0で自明。)

そこで,変形の適合条件(剛体回転 ⇒ 伸び比 (\delta_1:\delta_2=a:b))を使い,
同一鋼線より (S_1:S_2=a:b) を与えて初めて
[
S_1=\frac{al}{a^2+b^2}P,\qquad
S_2=\frac{bl}{a^2+b^2}P
]
が一意に決まります(選択肢⑤)。

よくある誤り

Aの鉛直反力 (A_y) を勝手に 0 とおく(=Aをローラー支持とみなす)と,
[
S_1+S_2=P,\quad S_1 a+S_2 b=Pl
]
から が出ます。しかし本問のAはピン支持で (A_y\neq0) も取り得るため不適切。
実際,①は (a=b) で発散し,物理的に不合理です。

まとめ:この手の「剛体棒+複数のバネ(鋼線)」は静力学+適合条件が必須です。

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