
$ F=Q(1-\frac{ T_0 }{T_H}) = 2800×(1-\frac{ 2.0+273.15 }{23.0+273.15})≒200$
[解答]③
参考:
ランキンサイクルの効率
熱力学のサイクル一覧
逆カルノー サイクル (ヒートポンプ)での効率 η の使い方がよくわからないよ
さらに詳しく教えて下さい
了解です。ポイントを順番に深掘りします。
何を求めたか
- 室内を 23 °C、外気 2 °C。
- 室内へ供給したい熱量は 2.8 kW(= Qₕ)。
- これを達成するための必要最小電力 Wₘᵢₙを求める問題です。
抵抗ヒーターなら「電力=供給熱」なので
2.8 kW 要りますが、ヒートポンプなら外気から熱を”くみ上げて”室内へ送り込むので、同じ2.8 kWの暖房でも必要電力はずっと小さくできます。その理論的下限が
カルノー(可逆)熱ポンプです。
ヒートポンプのエネルギーバランス
ヒートポンプは
- 外気から吸い上げる熱:(Q_c)
- コンプレッサに投入する仕事:(W)
- 室内に放出する熱:(Q_h)
で、エネルギー保存より
[
Q_h = Q_c + W
]
暖房時COP(性能係数)
暖房の効率指標は
[
\mathrm{COP_{heating}}=\frac{Q_h}{W}
]
カルノー熱ポンプ(理想可逆)では、温度は**絶対温度[K]**で
[
\mathrm{COP_{Carnot}}=\frac{T_h}{T_h - T_c}
]
(理由:可逆サイクルでは (\frac{Q_h}{T_h}=\frac{Q_c}{T_c}) が成り立つため)
今回:
- (T_h=23+273=296\ \text{K})
- (T_c=2+273=275\ \text{K})
ゆえに
[
\mathrm{COP_{max}}=\frac{296}{296-275}=\frac{296}{21}\approx 14.1
]
必要最小電力は
[
W_{\min}=\frac{Q_h}{\mathrm{COP_{max}}}
= \frac{2.8\ \text{kW}}{14.1}
\approx 0.199\ \text{kW}
\approx \mathbf{200\ W}
]
なぜ 200 W まで下がるの?
ヒートポンプは
投入電力そのものを熱にするのではなく、
外気の熱 (Q_c) をくみ上げて
(Q_h = Q_c + W) として放出します。
温度差 (T_h-T_c) が小さいほど、”くみ上げ”に要る仕事 (W) は少なくて済み、COP が大きくなります。
現実の機械だと?
- 実機は不可逆(圧縮損失・熱交換器ΔT・スロットル損失など)なので
(\mathrm{COP}) はカルノーより小さい(一般に 2〜6 程度)。
- 今回の条件(ΔT≈21 K)なら、良い家庭用エアコンの実運転 COP は 3〜5 くらいが目安。
その場合の必要電力は
[
W \approx \frac{2.8\ \text{kW}}{\text{COP}} \approx 0.6!~!0.9\ \text{kW}
]
- もし電気ヒーター(ヒートポンプでない)なら COP=1 なので 2.8 kW 必要。
コツ・落とし穴
- **絶対温度[K]**で計算する(℃で比を取らない)。
- 問われているのが「最小電力」ならカルノーCOPを使う。
- 暖房のCOPは (Q_h/W)、冷房のCOP(EER)は (Q_c/W) と定義が違う。
ちょい感度チェック
温度差が大きくなると必要電力は増えます。
[
W_{\min} = Q_h \frac{T_h - T_c}{T_h}
]
例えば外気が −5 °C(268 K)だと
[
W_{\min}=2.8\times\frac{296-268}{296}\approx 0.264\ \text{kW}
]
(理想でも 264 W へ上昇)
必要なら、同じ考え方で
冷房時の最小電力や、別の室温・外気温での早見表も作れます。どれを見てみますか?
カルノー熱ポンプ(理想可逆)では、温度は**絶対温度[K]**で \mathrm{COP_{Carnot}}=\frac{T_h}{T_h - T_c} (理由:可逆サイクルでは \frac{Q_h}{T_h}=\frac{Q_c}{T_c} が成り立つため) について詳しく教えて下さい
では、この部分を
熱力学の原理からきちんと導出して説明します。
ポイントは
可逆サイクルではエントロピー生成がゼロ → エントロピー収支が成り立つ
ということです。
✅ ヒートポンプの基本式
ヒートポンプは
- 低温熱源(外気)から熱 (Q_c) を吸い取る
- コンプレッサで仕事 (W) を加える
- 高温側(室内)へ熱 (Q_h) を放出する
というサイクルです。
エネルギー保存より
[
Q_h = Q_c + W
\tag{1}
]
✅ 可逆サイクルの条件(ここが重要)
可逆過程では「エントロピーが増えない」(生成=0)。
つまり、
出入りが釣り合う:
[
\frac{Q_h}{T_h} = \frac{Q_c}{T_c}
\tag{2}
]
これが先の文章の
[
\frac{Q_h}{T_h}=\frac{Q_c}{T_c}
]
に対応しています。
(熱量) ÷ (絶対温度) = エントロピー
熱を出す側は正、吸う側は負とすると、
可逆運転では総和が 0 になります。
✅ 式の変形で COP が出てくる
(2) より
[
Q_h = Q_c \frac{T_h}{T_c}
\tag{3}
]
(1) に代入すると
[
Q_c \frac{T_h}{T_c} = Q_c + W
]
[
W = Q_c\left(\frac{T_h}{T_c} - 1\right)
]
[
W = Q_c \frac{T_h - T_c}{T_c}
\tag{4}
]
暖房COP は定義より
[
\mathrm{COP_{heat}} = \frac{Q_h}{W}
\tag{5}
]
ここに (1),(4) を代入
[
\mathrm{COP_{heat}} =
\frac{Q_c + W}{W}
= 1 + \frac{Q_c}{W}
]
[
= 1 + \frac{1}{\frac{T_h - T_c}{T_c}}
= 1 + \frac{T_c}{T_h - T_c}
]
[
= \frac{T_h}{T_h - T_c}
]
✅ カルノー熱ポンプのCOP
[
\boxed{\mathrm{COP_{Carnot}} = \frac{T_h}{T_h - T_c}}
]
となり、**絶対温度[K]**を使う必要があることが分かります。
✅ なぜ温度差で性能が決まる?
式を見てわかるポイント:
- (T_h - T_c) が小さい(=室内と外気の温度差が小さい)ほど、
→ 効率が高く少ない電力で暖房できる
- 逆に寒いほど
→ COP が下がり電力を多く必要とする
これが「寒い日にエアコンの効率が落ちる」理由です。
✅ 比喩で理解
ヒートポンプは
熱を「くみ上げる」ポンプです。
水のポンプと同じで:
- 水を高いところへ上げる → 力が必要
- 上げる高さ(=温度差)が小さいほど楽
- 高く上げる(=大きな温度差で暖房)と大変
✅ まとめ
| 考え方 |
意味 |
| エントロピー保存 |
可逆過程 → (Q_h/T_h = Q_c/T_c) |
| エネルギー保存 |
(Q_h = Q_c + W) |
| 暖房COP |
(\displaystyle \frac{Q_h}{W}) |
| カルノーCOP |
(\displaystyle \frac{T_h}{T_h - T_c}) |
必要なら、このあと
- 冷房の場合の COP の導出((\frac{T_c}{T_h - T_c}))
- 可逆カルノーサイクルのT-s 線図解説
- エアコン・ヒートポンプの実性能との比較
- エントロピー収支の図解
なども説明できます。どれ見たいですか?
エントロピーが増えないと可逆サイクルになるのですか?
とても本質的な質問です。
結論を短く言うと:
可逆サイクルではエントロピーは増えない(=生成されない)
しかし
エントロピーが増えないからといって、何でも可逆になるわけではない
つまり
- 可逆サイクル ⇒ エントロピー生成ゼロ(必要条件)
- エントロピー生成ゼロ ⇐ 可逆サイクル(十分条件)
という
同値関係があります。
✅ 「エントロピーが増えない」=「不可逆性がない」
熱力学第二法則より:
[
\Delta S_{\text{全体}} = \Delta S_{\text{系}} + \Delta S_{\text{外界}}
= \text{エントロピー生成} \ge 0
]
- 可逆サイクルでは
[
\Delta S_{\text{全体}} = 0
\quad(\text{エントロピー生成なし})
]
- 不可逆サイクルでは
[
\Delta S_{\text{全体}} > 0
\quad(\text{エントロピー生成あり})
]
したがって
可逆 ⇔ エントロピー生成なし(0)
エントロピーが増えるのは
摩擦・渦・混合・熱伝導の有限温度差などの不可逆性による損失。
✅ 可逆サイクルってどんなもの?
完全に理想的な条件:
- 摩擦なし
- 熱伝達は「無限に小さい温度差」で行う
- 圧力差衝撃なし
- 流体の混合なし
- 渦・乱流なし
現実には存在しません。
しかし、
原理限界を示す理想モデルとして重要です。
✅ 例:カルノーサイクル
カルノーサイクルは
で構成され、全て
可逆過程と仮定されます。
その結果
[
\frac{Q_h}{T_h}=\frac{Q_c}{T_c}
]
が成立します(これが COP の導出の核心)。
✅ エントロピーと「仕事の損失」
エントロピー増加は、実際には
使える仕事の損失
と等価です。
理想状態(可逆)に比べて
エントロピーが生成すると、
その分だけ取り出せる仕事が減る → 効率が下がる
✅ まとめ
| 質問 |
答え |
| エントロピーが増えないと可逆? |
可逆の 必要条件 だが、現象的な可逆性条件も満たす必要あり |
| 可逆とは? |
どんな微小条件でも逆に辿れる理想の過程 |
| エントロピー生成ゼロとは? |
不可逆性(摩擦、有限ΔTの伝熱、混合など)が無い状態 |
✅ イメージ(直感)
| 現実世界 |
理想世界 |
| 摩擦・渦 → エントロピー増加 |
摩擦なし・無限にゆっくり → エントロピー生成ゼロ |
| エネルギー散逸あり |
エネルギー完全に仕事化可能 |
| 不可逆 |
可逆 |
必要なら、この続きとして:
- エントロピー生成の式(不可逆性の定量化)
- 可逆・不可逆のT-s線図
- カルノーサイクルの完全導出
- 現実のヒートポンプでの不可逆性例(圧縮、膨張、熱交換器)
なども説明します。
どこまで深く掘りますか?
ヒートポンプとヒータによる加熱の違いは、ヒートポンプはQに対してエネルギー保存則が成り立ち、ヒータの場合はジュール熱に対して成り立つことですか?
とても良い視点です。
ほぼ合っていますが、
もう少し整理するとさらに正確になります。
✅ 結論(先に)
| 方式 |
原理 |
取り扱う熱量の出所 |
エネルギー保存の対象 |
| ヒータ(電気抵抗加熱) |
電流→ジュール熱 |
電気エネルギーがそのまま熱へ |
投入電力 (W) = 供給熱 (Q_h) |
| ヒートポンプ |
外気から熱を汲み上げる |
外気の熱 (Q_c) + 仕事 (W) |
(Q_h = Q_c + W) |
つまり質問の意図を反映すると:
ヒータ:ジュール熱=供給熱
ヒートポンプ:供給熱=外気熱+仕事
その通りです。
✅ もう少し熱力学的に言うと
● ヒータ(電気抵抗体)
変換式
[
W \rightarrow Q
]
ヒータの効率(熱としてのエネルギー利用)は
[
\eta_{\text{heater}} = \frac{Q_h}{W} = 1
]
100%です(物理的にこれ以上良くならない)
● ヒートポンプ(逆冷凍機)
エネルギー収支
[
Q_h = Q_c + W
]
性能係数 COP
[
\mathrm{COP_{hp}} = \frac{Q_h}{W}
]
これは1より
大きくなることがあります
(普通の暖房エアコンで 3〜5、理想で (>10))
✅ なぜ違うのか?(物理的理解)
ヒータ
- 抵抗体で電子が格子に衝突 → 熱に変換
- 「電気 → 熱」という直接変換装置
ヒートポンプ
- 圧縮・膨張・冷媒循環によって
外気の熱を汲み上げる装置
仕事して熱を運ぶ装置
(高いところの水をポンプで汲むのと同じ)
✅ 視覚的イメージ
ヒータ
[電気エネルギー] → [熱]
W Q_h
ヒートポンプ
← Q_c(外気の熱)
[コンプレッサ] → Q_h(室内)
W
✅ まとめ表
| 方式 |
熱の出所 |
特徴 |
| ヒータ |
全て電力から |
効率(熱変換)100% |
| ヒートポンプ |
外気熱 + 電力 |
COP>1、効率は「温度差」で決まる |
✅ よくある誤解と修正
| 誤解 |
正しい理解 |
| ヒートポンプは効率が100%以上? |
熱変換というより熱輸送機械なのでCOP>1が普通 |
| 外気が冷たいと動かない? |
温度差が増えるとCOP低下、だが動く(霜取り等必要) |
✅ 重要ポイント
- どちらもエネルギー保存則は成り立つ
- 異なるのは“熱の取り出し方”
- ヒータ:電気 → 熱
- ヒートポンプ:外気熱を「移す」
必要なら、次に:
- COPと効率の違い
- 冷凍機COPとの関係
- 現実の損失要因(圧縮効率、膨張損失、熱交換器ΔT)
- T-s線図での説明
などもできます。
どこまで深く行きますか?