有機ラジカル電池は、プラスチックを電極に用いた二次電池です。
2012年にNEC(日本電気)が開発に成功しましたが、まだ量産には至っていません。

ラジカルとは、不対電子をもつ原子や分子をいいます。
通常、原子の電子軌道には電子が2つずつペアになっていますが、1つだけの状態の電子もあり、これを不対電子といいます。
これを持つ有機物が有機ラジカルです。

ラジカルは反応性が高く、ふつうは化学反応の途中で一時的に発生する不安定なものとはいえ、条件によっては長期間安定的に存在するものもあり、これを安定ラジカルといいます。
そして、この安定ラジカルが電気を蓄えると、不対電子が消滅し、イオン性分子として通常の安定した状態になります。
つまり、有機ラジカル電池は、安定ラジカル物質と安定したイオン性物質の状態間で酸化還元反応が行われる二次電池なのです。

電極物質と電解液

有機ラジカル電池の負極には炭素材料が、正極には有機ラジカルポリマーのPTMAが用いられます。
PTMAは「4-メタクリロイルオキシー2,2,6,6-テトラメチルピぺリジンーN-オキシル」という非常に複雑な名前の物質ですが、これはTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピぺリジンN-オキシル)という酸化還元反応に安定なラジカルを、有機電解液に溶けにくくするために重合したポリマーです。
重合とは同じ分子が2つ以上結合して大きな化合物になる化学反応のことです。
PTMAは導電性が低いので、炭素などの導電補助剤が混合されます。

電解液には、エチレンカーボネートなどの有機溶媒にリチウム塩を溶かしたものなどが使われます。
そのリチウムイオンが両極間で電荷を運ぶので、有機ラジカル電池はリチウム電池の一種といえます。

曲げ伸ばしが自由な軽量・薄型電池

有機ラジカル電池は、現状では比容量はリチウムイオン電池に劣るものの、反応速度が非常に速く、高出力で、充放電効率も高い上にサイクル寿命が長いというすぐれた特徴をいくつも持っています。
また、有機ラジカルポリマーに電解液を吸収させてゲル状にしたものが開発され、安全性の高い、計量・薄型で柔軟な電池を作ることが可能となり、ICカードや各種ウェアラブル機器の電源としての利用が期待されています。

 

もっと知るには・・・

 

●NEC技報 Vol.65 No.1/2012
有機ラジカル電池の開発