英語の「conversion」(コンバージョン)とは「交換」という意味です。
たとえば、仮にMを2価、Nを1価の金属とすると、MとNの間で塩素を交換する化学反応は
MCl2 + 2N → M + 2NCl
で表されます。
Clが結合する相手がMからNに交換されるので、これをコンバージョン反応といい、この反応を電池に応用したものがコンバージョン電池です。
三フッ化鉄とリチウムとのコンバージョン反応
研究開発されているコンバージョン電池の主流は、負極に金属リチウム、正極に三フッ化鉄(FeF3)を用いたものです。
放電時に、負極から溶け出したリチウムイオンが電解液を通って正極に達すると、リチウムイオンは三フッ化鉄の結晶のすきまに入り込み、このときフッ素は鉄から離れてリチウムイオンと結合します。充電時には逆の反応が起こります。
つまり、負極の反応は金属リチウムの溶解・析出反応、正極では三フッ化鉄とリチウムとの間でフッ素を交換するコンバージョン反応が起こります。
したがって、リチウム二次電池の一種ともいえます。
電池反応式は次のようになります。
≪負極≫Li ⇔ Li+ + e–
≪正極≫FeF3 + 3Li+ + 3e– ⇔Fe + 3LiF
≪反応全体≫FeF3 + 3Li ⇔Fe + 3LiF
反応式の通り、鉄やフッ素が電解液中に溶出することはありません。
コンバージョン電池の長所と大容量を活かした用途
三フッ化鉄などを主体とした正極活物質を用いたコンバージョン電池では、結晶構造全体がリチウムと反応するので、多量のリチウムが吸着・脱離できるため、高容量で非常に高いエネルギー密度が見込まれます。
また酸化物を用いた場合でも、化学反応で酸素を放出することがないので、発火や燃焼の危険性が小さく、高い安全性が期待できます。
現状のコンバージョン電池では、リチウムは使うものの、コバルトやニッケルは使用しないので、比較的安価に製造できるメリットもあります。
用途としては、大容量という特性を生かして、再生可能エネルギーの貯蔵用や電気自動車のバッテリーとしての使用が期待されています。
現在、より耐久性が高く、高エネルギー効率の電極材の探索や、それに適合した電解液の開発が続いています。
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