多色プリントのパージを実測した 試算は当たった、そして減らす順番が分かった

前回、3MFの中身を解析して多色プリントのパージ量を試算しました。層ごとに何色が存在するかを数えて、ツールチェンジ回数から廃棄量を見積もる、という方法です。

あの記事は「実測していません」という断り書きで終わっていました。今回、実際にスライスして答え合わせをしたので、その報告と、そこから先の削減の話です。

目次

試算は当たった

解析から出した予測と、スライサーが出した実測。

予測 実測
ツールチェンジ回数(3色) 384回 380回
ツールチェンジ回数(2色に統合後) 85回 82回

誤差1%でした。3MFから層ごとの色分布を数える方法は、そのまま使えます。

フラッシュ量のほうは仮定が外れていました。1回400 mm³としていましたが、実測から逆算すると約0.38 g/回(310 mm³前後)。2割ほど高く見積もっていたことになります。

機種で1割変わる

同じファイルを、プリンター設定だけ変えてスライスした結果。

機種 フラッシュ 合計 時間
X1 Carbon 134.49 g 193.21 g 15h33m
P2S 146.60 g 204.99 g 14h22m

樹脂はP2Sのほうが9%多く、時間は1時間短い。フラッシュ量の既定値が機種ごとに違うためです。他所の記事の数字をそのまま持ってきても合わない、ということでもあります。

検体

全高60mm、53.3×57.2mmのキャラクター。造形材料は約30g、300層。

色の構成は、本体(74%)、顔まわりの淡色(25%)、目と鼻の黒(1.5%)の3つ。

効いた順番

削減策を順に試しました。効果の大きい順に並べるとこうなります。

1位:単色にする

身も蓋もありませんが、桁が違います。

2色 単色
ツールチェンジ 82回 0回
フラッシュ 30.59 g 0 g
プライムタワー 6.93 g 0 g
合計 68.34 g 28.50 g
時間 4h57m 1h56m

樹脂58%減、時間61%減。

タワーがまるごと消えるのが効いています。パージを受け止める柱を積む必要がなくなるので、その造形時間も丸ごと浮く。時間が3時間半程度に収まると見込んでいたのですが、2時間を切りました。

2位:色グループをスライサー側で統合する

3色のうち、面積25%の淡色を本体色と同じスロットに割り当てました。塗り分けが1つ減るだけです。

3色 統合後
ツールチェンジ 380回 82回
フラッシュ 146.60 g 29.58 g
合計 204.99 g 67.67 g
時間 14h22m 5h12m

樹脂67%減、時間64%減。 色を1つ減らしただけです。

前回の記事で書いた「同じ層に2色が同居する範囲」の話がそのまま出ています。淡色は全高にわたって本体色と同居していたので、301層のうち299層で切り替えが起きていました。統合すると、残るのは目と鼻の黒だけ。これは顔の85層にしかないので、82回で済みます。

3位:まとめ焼き

2体を1プレートに並べました。片方は2色、もう片方は単色です。

1体(2色) 2体(2色+単色)
造形 30.83 g 59.31 g
フラッシュ 30.59 g 28.85 g
タワー 6.93 g 6.93 g
合計 68.34 g 99.04 g

フラッシュが減っています。 造形物が倍近くになったのに、廃棄は増えるどころか少し減った。タワーも同じ。

つまり2体目が実質30gで付いてきたわけです。単独で刷れば68gかかるものが。

4位:フラッシュをインフィルに逃がす

捨てる樹脂を中詰めとして再利用する設定です。

インフィル 造形 フラッシュ 合計
15% 30.83 g 33.94 g 71.69 g
20% 30.83 g 30.59 g 68.34 g
30% 39.58 g 29.01 g 75.52 g

20%で3.35g減りました。1割程度です。

ここで密度を上げると逆効果でした。 30%にするとフラッシュはさらに1.58g減りましたが、造形量が8.75g増えて、差し引き7.2gの増加です。

受け皿には上限があります。 20%の時点で吸収できるものは吸収し終えていて、そこから増やした分はただの追加材料になりました。「逃がせば逃がすほど得」ではありません。

罠1:色数を減らすツールに任せると、逆に高くなる

これが一番の発見でした。

モデルの生成側に「色数を2つにする」という指定があったので、3色版と2色版を出し分けて比べました。

ツールチェンジ フラッシュ相当 見た目
生成ツールの2色版 299回 約115 g 目が消える
3色版をスライサーで統合 82回 29.58 g 目が残る

生成ツールは面積の大きい順に色を残します。3色から1色削ると、消えるのは面積1.5%の黒、つまり目と鼻でした。そして残ったのが、全高にわたって同居する本体色と淡色という、一番高くつく組み合わせです。

高いほうを残して、安いほうを捨てていたことになります。

色数削減の判断基準が「見た目のインパクト」であって、印刷コストではないためです。削るならスライサー側でやるべきでした。

一般化すると、Z方向に広く分布している色同士をまとめる。狭い高さにしかない色は、面積が小さくても残す価値があります。

罠2:小さな濃色パーツが、一番高い

2色版のスライス結果を、フィラメント別に見たところ。

造形 フラッシュ タワー 合計
1(本体) 29.13 g 9.56 g 5.27 g 43.96 g
2(目・鼻) 1.70 g 24.38 g 1.66 g 27.74 g

目と鼻という、ごま粒のようなパーツ。造形1.70gに対してフラッシュが24.38g、14倍です。

造形物の94%が本体なのに、樹脂の消費はほぼ互角でした。

理由は切り替えの方向にあります。濃い色から淡い色へ変えるときのほうが、たくさん捨てる必要があります。 黒が少しでも残ると淡色が濁るので、機械は多めにパージする。逆方向は多少混ざっても目立たない。

その「たくさん捨てるほう」が黒のスロットから出るので、黒の消費だけが突出します。

「面積が小さいから安いだろう」は成り立ちません。 面積ではなく切り替えの回数と方向で決まります。

3MFを直接書き換える

色グループの統合は、スライサーの色塗りツールでもできます。ただ今回は3MFを直接編集しました。

3MFの中では、色分けが三角形ごとの属性として入っています。

<triangle v1="12" v2="13" v3="14" paint_color="8"/>

この値がフィラメント番号に対応しているので、"8""4" に一括置換すれば、そのグループが丸ごと統合されます。

s = open('3D/Objects/object_1.model').read()
s = s.replace('paint_color="8"', 'paint_color="4"')

GUIの塗りつぶしツールでも同じことができますが、塗り残しが起きます。 実際、対象のモデルには頭頂の細い筋や目のまわりの縁取りなど、見つけにくい領域が6か所ありました。1か所でも残ると、その高さで色替えが発生してしまいます。

一括置換なら残りません。属性値の対応さえ分かれば、こちらのほうが確実で速い。

同じ要領で、複数のモデルを1つのプレートに配置した3MFも組み立てられます。3dmodel.model に build item を足して、座標を指定するだけです。今回の「2色版と単色版を並べて比較する」プレートは、そうやって作りました。

まとめ

  • 3MFから層ごとの色分布を数える試算は、実測と1%の誤差で一致した
  • フラッシュ量は1回あたり約0.38 g(機種で1割変動)
  • 削減の効果は、単色化 > 色グループの統合 > まとめ焼き > インフィルへの回収
  • 色数を減らすツールは面積で判断するので、印刷コスト的には最悪の選択をすることがある
  • 小さい濃色パーツが、実は最も高い
  • インフィルへの回収は受け皿に上限があり、密度を上げても取り返せない

多色プリントは「色を何色使うか」で語られがちですが、実際に効くのはどの高さでどれだけ切り替えるかでした。

段取り替えのコストが支配的な系では、何を何回やるかより、同じ状態でまとめられるかが効く。前回も同じことを書きましたが、実測してみて確信が強くなりました。


検証環境:Bambu Lab P2S・X1 Carbon/Bambu Studio/PLA Basic 検体:全高60mmのキャラクターモデル(生成AIで作成、多色印刷変換済み)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

目次