検証期間:2026年8月 対象:Meshy(エージェントモード)/Bambu Lab P2S・A1 mini 目的:小学生向けワークショップで「子どもの絵を3Dプリントする」工程が成立するかの確認
1. 測定方法
生成された3MFを解凍し、3D/Objects/object_1.model の頂点座標からバウンディングボックスを直接算出した。あわせて Metadata/model_settings.config の mesh_stat(面数・メッシュ異常)と、paint_color 属性の有無(色情報が載っているか)を確認した。
画面のプレビューやAIの自己申告は使っていない。 後述するが、どちらも実際の形状と一致しないことがあった。
出力サイズが条件ごとに異なるため、奥行はすべて全高60mm換算に正規化して比較した。
2. 実測結果一覧
| # | 条件 | 奥行(60mm換算) | 面数 | 向き | 色情報 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | A-01 線画・横向き写真 | 23.7mm | 191.6万 | 横倒し | なし |
| 2 | A-02 4色ぬり・横向き写真 | 9.0mm | 199.4万 | 横倒し | なし |
| 3 | A-01 線画・縦向き写真 1回目 | 17.2mm | 197.7万 | 横倒し | なし |
| 4 | A-01 線画・縦向き写真 2回目 | 1.3mm | 111.7万 | 横倒し | なし |
| 5 | A-01+「厚みを持った立体に」指示 | 3.4mm | 199.4万 | 横倒し | なし |
| 6 | A-01 旧世代モデル(meshy-6) | 9.8mm | 27.6万 | 正立 | なし |
| 7 | A-01 中間コンセプト画像を経由 | 32.1mm | 196.8万 | 正立 | なし |
| 8 | A-02 中間画像経由+多色印刷 | 29.3mm | 200.0万 | 正立 | あり(4色) |
参考:3面図(クマ3体が写った画像)を投入したケースでは、188.53×84.02×60mmの中に繋がっていない3体が生成された。X方向に約9mmと16mmの完全な空隙があり、1オブジェクト内に分離したメッシュが同居していた。
メッシュ品質は全ケースで異常ゼロ(edges_fixed=0, degenerate_facets=0, facets_removed=0, backwards_edges=0)。修復は不要。
3. 判明したこと
3-1. 線画をそのまま3D化すると板になる
最悪ケース(#4)は全高60mmに対し奥行1.3mm。立体ではなく、線画を切り抜いた薄板だった。輪郭線が針金のように浮き、内側は空洞。
原因は、線画に陰影がないことと考えられる。AIが立体を推定する主要な手がかりが存在しない。
3-2. 生成のばらつきが、他のどの要因よりも大きい
#3と#4は、同一画像・同一設定・同一プロンプトである。それでも奥行は17.2mm対1.3mm、面数は197.7万対111.7万と大きく違った。
この事実により、#1〜#5の間で観測された「色を塗ると薄い」「向きを直すと薄い」といった差は、すべてばらつきの範囲内として棄却される。単発の生成結果から傾向を読んではいけない。
3-3. プロンプトによる厚みの指示は効かない
「平たい板ではなく、奥行きのある厚みを持った立体にしてください」を追加した#5は3.4mm。失敗の側だった。
ただし後述のとおり、同じ趣旨の指示が画像生成の段階では効いた。プロンプトが無力なのではなく、効く工程が違う。
3-4. 中間コンセプト画像を挟むと立体になる
#7で32.1mm(奥行/幅 = 78%)。頭・耳・体・腕・脚がそれぞれ独立した塊として造形され、初めてフィギュアの比率になった。
工程は「線画 → AIが陰影付きの絵に描き直す → その絵から3D化」。陰影が供給されたことで立体復元が働いたと考えられ、3-1の推定と整合する。
この段階で使ったプロンプトが以下。
線を線のまま立体化せず、線で囲まれた部分をふくらんだ塊にしてください。
絵に描かれた形と色は活かし、描かれていないものは足さないでください。
3-5. 色は経路依存。GLBやSTLでは必ず消える
#1〜#7はすべて source_file = model.glb、paint_color はゼロ件。GLBはテクスチャを持っているが、Bambu Studioはテクスチャマッピングを解釈しないため、読み込んだ時点で色が捨てられる。
色を残すには、Meshyの**Multi-Color Printing(多色印刷)**を通す必要がある。#8では4つの色グループが paint_color として載り、Bambu Studioがそのまま読める状態になった。
多色印刷はクレジットを消費しない(検証前後で2,861のまま変化なし)。
#8の色分割:
| グループ | 面数 | 占有率 | 部位 |
|---|---|---|---|
4 |
1,818,082 | 91.0% | 体・頭 |
0C |
144,904 | 7.3% | スナウト・お腹 |
8 |
32,346 | 1.6% | 目・鼻・輪郭 |
1C |
4,332 | 0.2% | 耳の内側 |
1色が9割を占めるため、色替え回数は少なく済む見込み。
3MFに書かれている filament_colour(#BD7F3E 茶/#040201 黒/#FDD6B1 クリーム/#FABAB9 ピンク)はMeshy側の表示色にすぎず、Bambu Studioで任意のAMSスロットに再割り当てできる。同じ色のフィラメントを用意する必要はない。
3-6. 旧世代モデル(meshy-6)は軽くて正立する
#6は奥行9.8mmと中庸だが、面数27.6万(他の約1/7)で、正立して出力された。meshy-7経由では常に横倒しになり、Bambu Studioでの90度回転が必要だった。
奥行の点では#7に劣るため採用は見送るが、面数の軽さは記録しておく価値がある。
3-7. AIの自己申告は事実と一致しないことがある
エージェントの説明文に、以下の誤りが確認された。
- 左右対称に描いたクマについて「左右非対称な部分も保持されています」
paint_colorが0件のモデルについて「色も元画像の見た目に近い状態です」- 奥行5.7mm(=板)のモデルについて「立体感が出ているように見えます」
いずれもサムネイル画像を見た印象を述べているもので、生成された3D形状を検証した結果ではない。エージェント自身も「2Dプレビューでの確認のため」と断っている。
検証はこちら側で行う必要がある。
3-8. 1枚に1体だけ
複数の被写体が写った画像を渡すと、繋がっていない複数のメッシュが1オブジェクトとして生成される。AIは構図を理解しないため、「同一物体を3方向から見た図」も「3つの物体」として扱われる。
4. ワークショップ設計への反映
確定事項
- 生成経路は「中間コンセプト画像を経由」に統一する(meshy-6直接は採用しない)
- 色を出す場合は必ずMulti-Color Printingを通してから3MFを書き出す(無料)
- 底面追加は多色印刷と併用できないため、底面処理はBambu Studio側で行う
- 用紙は縦のままでよい(中間画像経由では正立して出力される)
- 撮影は1枚に1体のみ
- 良否判定は数値ではなく**「横から見て頭と体が独立した塊に見えるか」**
- フィラメントの色をMeshyの表示色に合わせる必要はない
運営マニュアルからの変更点
当初は「meshy-6を使い、中間コンセプト画像は子どもの絵を上書きするので避ける」としていたが、逆にする。
理由は品質だけではない。中間画像は子どもに見せて確認を取れるためである。3Dモデルの良否は小学生には判断しづらいが、絵なら分かる。言い直しのポイントを3Dではなく絵の段階に置くことで、対話が成立しやすくなる。
描く → 撮影 → AIが清書した絵を出す → 「これでいい?」と本人に確認
→ 違えば言い直して描き直させる → OKなら3D化
未解決
- 1体を実際に印刷し、パージ量と印刷時間を実測する(未着手)
- 6cm・多色でパージが本体より多くなる可能性。結果次第で色数のルールが変わる
- #8の3MFがそのまま使える
- 中間画像経由の再現性(n=1)。当日は無料リトライで吸収する方針
- フィラメントの割り当て。黒は輪郭色として全員が使うため、黒をもう1本追加して両機に置くのが望ましい
5. 記録として残すもの
- 生成した全モデル(選ばれなかったものを含む)
- 失敗した造形物の現物
- パージ廃棄物の重量
- 印刷時間・使用量のスクリーンショット
- 子どもが言い直しに使った言葉


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