解答

自由端のたわみ

wl48EI \boxed{\displaystyle \frac{w\,l^{4}}{8EI}}

 

よって ③ が最も適切です。


導出(片持ちはり・等分布荷重)

  1. 座標系
    固定端を x=0 x=0 

    、自由端を

    x=l x=l 

    とする。荷重

    w[N/m] w\,[\text{N/m}] 

    は下向きに一様に作用。

  2. せん断力
    V(x) V(x)
     

    V(x)=w(lx) V(x)=w(l-x) 

  3. 曲げモーメント
    M(x) M(x)
     

    せん断の積分

    M(x)=V(x)dx=w2(lx)2 M(x)=\int V(x)\,dx = \frac{w}{2}(l-x)^2(下向き荷重を負符号で取る流儀もあるが、符号は一貫していればよい。)

  4. たわみ微分方程式
    EId2ydx2=M(x)=w2(lx)2 EI\,\frac{d^2y}{dx^2}=M(x)=\frac{w}{2}(l-x)^2 
  5. 角度(傾き)
    θ(x)=dy/dx \theta(x)=dy/dx
     

    EIθ(x)=0xw2(lξ)2dξ=w2[l2x ⁣lx2+x33] EI\,\theta(x)=\int_0^{x}\frac{w}{2}(l-\xi)^2\,d\xi =\frac{w}{2}\left[l^2x-\!l x^2+\frac{x^3}{3}\right] 

  6. たわみ
    y(x) y(x)
     

    EIy(x)=0xEIθ(η)dη=w2[l2x22lx33+x412] EI\,y(x)=\int_0^{x}EI\,\theta(\eta)\,d\eta =\frac{w}{2}\left[\frac{l^2x^{2}}{2}-\frac{l x^{3}}{3}+\frac{x^{4}}{12}\right] 

  7. 境界条件
    固定端で y(0)=0,  θ(0)=0 y(0)=0,\;\theta(0)=0 

    を満たしているので積分定数は不要。

  8. 自由端(
    x=l x=l
     

    )のたわみ

    y(l)=w2EI[l42l43+l412]=wl48EI y(l)=\frac{w}{2EI}\left[\frac{l^4}{2}-\frac{l^4}{3}+\frac{l^4}{12}\right] =\frac{w\,l^{4}}{8EI} 


参考式(覚えておくと便利)

荷重条件 最大たわみ(端点) たわみ係数
先端集中荷重

P P 

Pl3/(3EI) Pl^{3}/(3EI) 

1/3 1/3 

等分布荷重

w w 

wl4/(8EI) wl^{4}/(8EI) 

1/8 1/8 

(本問は下段のケース)

 

参考:技術士第一次試験-令和2年度機械部門Ⅲ-6解答例 | 技術士のたまご

 

 

曲げモーメントはせん断の積分なのですか?距離×せん断ではないですか?

せん断力 V V と曲げモーメント M M の関係は

dMdx=V(x) \boxed{\dfrac{dM}{dx}=V(x)}


1. 微小要素のつり合いから導くと

片持ちはりの任意断面で幅 dx dx の微小片を取り、鉛直方向とモーメントのつり合いを書きます。

つり合い 得られる微分方程式
鉛直力Fy=0 \sum F_y=0 V(x)+w(x)dxV(x+dx)=0      dVdx=w(x) V(x) + w(x)\,dx – V(x+dx)=0 \;\;\Longrightarrow\; \dfrac{dV}{dx}=-w(x)
モーメントM=0 \sum M=0 M(x)+V(x)dx+w(x)dx(dx/2)M(x+dx)=0      dMdx=V(x) M(x) + V(x)\,dx + w(x)\,dx\,(dx/2) – M(x+dx)=0 \;\;\Longrightarrow\; \dfrac{dM}{dx}=V(x)

したがって せん断力はモーメントの空間微分、逆に

M(x)=V(x)dx+C M(x)=\int V(x)\,dx + C

となります。


2. 「せん断×距離」と「積分」の関係

  • せん断が区間内で一定(=点荷重 P P だけが掛かっている区間など)
    V(x)=P V(x)=P が定数なので

    M(x)=Pdx=Px+C“せん断(=P)×距離(=x)” M(x)=\int P\,dx = P\,x + C \quad\Longrightarrow\quad \text{“せん断(=P)×距離(=x)”}つまり 「せん断×距離」 は「積分」の特殊ケースです。

  • せん断が位置によって変わる(等分布荷重など)
    例:片持ちはりに一様荷重 w w

    V(x)=w(lx)(右側の荷重の合力) V(x)=w(l-x) \quad(\text{右側の荷重の合力})x x の一次関数なので

    M(x)=0xw(lξ)dξ=w2(lx)2  (C) M(x)=\int_0^{x}w(l-\xi)\,d\xi=\frac{w}{2}(l-x)^2\;(+C)となり、単純に「せん断×距離」では表せません。


3. イメージしやすい整理

荷重の種類 V(x) V(x) の形 M(x) M(x) の求め方
点荷重 P P 区間内は定数 P P M(x)=Px M(x)=P\cdot x ─ 「せん断×距離」でOK
等分布荷重 w w 一次関数 M(x)=V(x)dx \displaystyle M(x)=\int V(x)dx が必須
任意分布荷重 w(x) w(x) 微分方程式 dV/dx=w(x) dV/dx=-w(x) 2段階の積分で求める

まとめ

  • 一般には M(x)=V(x)dx M(x)=\displaystyle\int V(x)\,dx
  • せん断が一定の区間だけ → 「せん断×距離」がその積分結果と一致するだけ

したがってご質問の

曲げモーメントはせん断の積分なのですか?距離×せん断ではないですか?

という疑問は、

  1. “積分” が本質的な一般式
  2. “せん断×距離” は せん断が一定の場合に限り その積分が簡単な形で表れる特別ケース

という二段構えで整理するとスッキリします。