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信号処理とは
  1. 信号は情報を含む物理量である。信号を解析するためにはまず、信号がどのような量を表し、何が変数なのか、その単位は何か、よく考えなくてはならない。
  2. 現時点以降、値がどのように変化していくのかを正確に特定できない信号を不規則信号、特定できる信号を確定信号という。確定信号の代表である正弦波は、角周波数、振幅、位相で表される。周波数と周期は逆数の関係にある。
  3. 周期信号は、その周期の整数倍だけ時間方向にずらしてもかわらない信号である。正弦波以外にも方形波、のこぎり波、三角波などがある。単発的な信号はパルス信号あるいは孤立波という。
  4. ディジタル信号はアナログ信号を離散化することによって得られる。時間に対する離散化をサンプリング(標本化)、信号の大きさに対する離散化を量子化という。アナログ信号からディジタル信号への変換をAD変換という。
  5. 信号をAD変換するときは、信号に含まれている最高周波数成分の2倍の周波数(ナイキスト周波数)以上でサンプリングしなくてはならない。これをサンプリング定理という。ナイキスト周波数以下でサンプリングすると、本来の信号には含まれていないはずの低い周波数成分が現れてしまう。この現象をエイリアシングという。ディジタル信号からアナログ信号への変換はDA変換という。
信号処理の例
  1. 移動平均は信号の細かな変動や雑音を圧縮する平滑化の処理である。サンプル点ごとにその周囲の値の平均をとっていく。平均をとる範囲の広さに注意する。範囲が狭すぎると平滑化の効果は薄く、広すぎるとノッペリした波形になってしまう。
  2. 雑音が加わりながらも、信号が繰り返し送られるとき、各信号の同期をとって平均をとることにより雑音を圧縮できる。この方法を同期加算あるいは平均応答法という。
数学の準備体操
  1. 連続な信号f(t)をN点でサンプリングすると、信号はN次元のベクトルとして表現される。そして、これはN次元空間の一つの点に対応する。
  2. 信号の大きさはベクトルのノルムで、二つの信号の違いはベクトル間の距離で表現される。ベクトルの内積はベクトル間の有効な成分の積を表している。
    また、相関係数はベクトルの間の角度を表し、信号の似ている度合いを表す。相関係数が大きいほど信号は似ている。また相関係数が0のとき、ベクトルは直行している。
  3. ノルムが1で、互いに直行するベクトルの集合を正規直交基という。
    任意のベクトルは正規直交基によって展開できる。その成分は内積で定められる。
  4. 関数はベクトル空間の次元を無限大とした空間(関数空間)の1点で表され、ベクトル空間と同じように、ノルム、距離、内積、相関係数が定義できる。
    ベクトル空間の正規直交基に対応するのが、正規直交関数系であり、任意の関数はそれによって展開できる。その成分は内積で定められる。
相関関数
  1. 周期Tのアナログ信号f(t),g(t)の相互相関関数は両者の相関を変数軸(t軸)の移動量をτを変数として以下のように定義される。
    $R_{fg}(τ)= \displaystyle\lim_{ T \to \infty }\frac{ 1 }{T}\int_0^T f(x) dx f(t)g(t+τ)dt$
    またディジタル信号fi,gi(i=1,2,3…N)の相互相関関数は以下のように定義される
    $R_{fg}(j)= \frac{ 1 }{N} \displaystyle \sum_{i=1}^N f_ig_(i+j)$
    相互相関関数によって関数間の相関の強さや時間的なずれの度合いなどを求めることができる。
  2. アナログ信号f(t)の自己相関関数は関数それ自身との相互相関関数であり
    $R_{ff}(τ)= \displaystyle\lim_{ T \to \infty }\frac{ 1 }{T} \int_0^Tf(t)g(t+τ)dt$
    と定義される。
    自己相関関数で信号に周期性があるかを解析できる、自己相関関数はτ=0で最大||f(t)||2となり、左右対称である。
    ディジタル信号では
    $R_{ff}(j)= \frac{ 1 }{N} \displaystyle \sum_{i=1}^N f_ig_(i+j)$
    と定義される。
フーリエ級数展開
  1. どんな信号波形でも、それはいろいろな周波数成分(整数倍)の正弦波に分解できる。その成分を周波数の領域で表現したものがスペクトルである。
    スペクトルから逆にもとの信号を時間領域で合成することもできる。
  2. フーリエ級数展開は周期関数をさまざまな周波数の正弦波の成分に分解するものである。周期信号f(t)の周期がT、基本角周波数がω0(ω0=2π/T)であるとき、f(t)はフーリエ級数によって
    $f(t)= \frac{ a_0 }{2}+\displaystyle \sum_{k=1}^∞ (a_kcosω_0kt+b_ksinω_0kt)$
    と展開される。だだし、ak,bkは以下で定義されるf(t)の実フーリエ級数である。
    $a_k= \frac{ 2 }{T}\int_{-T/2}^{T/2}f(t)cosω_0ktdt$(k=0.1.2・・・)
    $b_k= \frac{ 2 }{T}\int_{-T/2}^{T/2}f(t)sinω_0ktdt$(k=0.1.2・・・)
    f(t)が偶関数のときはbk=0,奇関数のときはak=0である。
  3. 複素フーリエ級数展開は、実フーリエ級数展開より表現が一般的で演算が容易である。基本角周波数がω0(ω0=2π/T)の周期関数f(t)の複素フーリエ級数展開は
    $f(t)= \displaystyle \sum_{k=-∞}^∞ C_ke^{jω_0kt})$
    である。ただしCkはf(t)の複素フーリエ係数であり
    $C_k= \frac{1}{T}\int_{-T/2}^{T/2}f(t)e^{jω_0kt}dt$(k=0.1.2・・・)
    である。f(t)が偶関数のときはCkの虚部は0、奇関数のときは実部が0となる。
  4. |Ck|を振幅スペクトル、∠Ckを位相スペクトル、|Ck|2をパワースペクトルという。振幅スペクトルはその周波数成分が信号にどのくらい含まれているかを表す。
  5. 信号とスペクトルには線形な関係がある。信号が変数方向に移動しても振幅スペクトルやパワースペクトルは変化しない。
  6. 信号の時間領域のパワーと周波数領域のパワーは等しい。つまり、
    $\frac{1}{T}\int_{-T/2}^{T/2}|f(t)|^2dt= \sum_{k=-∞}^∞|C_k|^2$
    である。これをパーシパルの定理という。
  7. フーリエ級数の時数を上げると、信号に対する近似の誤差は減少し、ますます実際の計測値に近づいていく。

 

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