マイクロンテクノロジーに関する2025年後半の主なニュース

消費者向けビジネスからの撤退とHBMへの集中

  • Crucialブランドから撤退 – 2025年12月3日、マイクロンは消費者向けメモリブランド「Crucial」での製品販売を2026年2月末までに終了すると発表した。グローバルなサプライ不足とAIデータセンター市場の急成長を背景に、消費者向け部門の売上が小さいこともあり、高帯域幅メモリ(HBM)など高付加価値製品にリソースを集中するreuters.com。販売終了後もサポートは継続するというinvestors.micron.com。マイクロンの最高事業責任者スミト・サダナ氏は「大規模な戦略顧客への供給を改善するため」と説明し、AI向けの高性能メモリへのシフトを明確にしたinvestors.micron.com

  • 中国データセンター向けサーバーチップ提供終了 – 2023年に中国のサイバースペース局によってデータセンター向け製品が事実上排除されたことを受け、マイクロンは2025年10月に中国向けサーバーチップ供給から撤退する方針と報じられた。モバイル・自動車部門への提供は継続し、新市場開拓を進めるreuters.com。中国市場は同社の売上の約12%だが、AIブームによる他地域での需要が補うとアナリストはみているreuters.com

  • 中国での事業継続表明 – マイクロンは、2023年のデータセンター用チップ禁止後も、中国でDRAMおよびNAND製品を提供し続け、陝西省西安市のパッケージング工場や上海などの顧客ラボを通じて現地顧客を支援していると強調したinvestors.micron.com

財務結果とHBM需要の急増

  • 2025会計年度業績 – 2025年9月に発表された決算によると、2025会計年度の売上高は約 374億ドル で前年比ほぼ50%増加し、粗利率は 41% に上昇したinvestors.micron.com。データセンター事業が売上の 56% を占め、HBM・高容量DIMM・LPサーバーDRAMが約 100億ドル の売上を記録し、前年から5倍以上増加したinvestors.micron.com

  • 第4四半期(FQ4-25)実績 – 非GAAPベースの売上は 113億ドル、粗利率は 45.7%、営業利益 39.6億ドル、純利益 34.7億ドル、1株当たり利益 3.03ドル だったinvestors.micron.com。2025会計年度全体の非GAAP純利益は 94.7億ドル に達し、1株利益は 8.29ドル となったinvestors.micron.com

  • HBM売上の急拡大 – FQ4-25のHBM売上は 約20億ドル に達し、年間換算で 80億ドル規模 に上ることが明らかになったinvestors.micron.com。ハイバンド幅メモリはジェネレーティブAIの訓練と推論に不可欠で、マイクロンは2026年向けHBM供給がすでに完売状態であると述べた。

  • 2026年第1四半期の見通し – ロイターによると、マイクロンは2026年会計年度第1四半期(2025年10〜12月)の売上予想を 125億ドル 前後と発表し、アナリスト予想を上回ったreuters.com。AI向けメモリ価格上昇やHBM4(次世代HBM)の高単価が背景にある。同記事は、米国のCHIPS法補助金62億ドルがマイクロン向けに準備されているが、補助金が株式引受けに転換される可能性について同社は影響はないと述べたreuters.com

サプライ危機と半導体供給投資

  • AIブームによるメモリ供給不足 – ロイターの調査記事によれば、Microsoft、Google、ByteDanceなどの大手テック企業は、マイクロンやSamsung、SK hynixからメモリを確保するために争奪戦を繰り広げているtbsnews.net。マイクロンは2025年6月にDDR4やLPDDR4チップの出荷停止計画を顧客に通知し、より利益率の高いHBMなどにラインを集中すると伝えたtbsnews.net。大手企業は価格に関係なく大量注文を行う「オープンエンド注文」を求めているというtbsnews.net

  • 広島県でのHBM工場建設 – 2025年11月、マイクロンは広島県東広島市の既存工場敷地内に新しいHBM製造施設を建設するため約 1.5兆円(96億ドル) を投資する計画を発表した。建設は2026年5月に着工予定で、出荷は2028年を見込む。日本政府(経済産業省)は最大 5,000億円 を補助するreuters.com

  • シンガポールのHBMアドバンストパッケージング施設 – 2025年1月に、約 70億ドル を投資してシンガポールにHBM向け先端パッケージング施設の建設を開始した。この施設は2026年に操業を始め、2027年に拡張される予定で、初期段階で約1,400人(最終的には3,000人)の雇用を創出するinvestors.micron.com。自動化とAIを活用した持続可能設計を採用し、シンガポールの半導体エコシステムを強化する。

  • 米国での大型投資 – 2025年6月、マイクロンは米国で最大 2,000億ドル の長期投資計画を発表した。アイダホ州ボイシに第2の最先端DRAM工場を建設し、バージニア州の工場拡張や先端HBMパッケージングの米国内導入などを含む。この投資により米国製DRAM比率を40%に高め、約90,000人の雇用創出が見込まれている。CHIPS法による 64億ドル の資金援助が盛り込まれ、Microsoft、Nvidia、Apple、Dell、AWS、AMDなどのパートナー企業が支持を表明したinvestors.micron.com

新製品・技術発表

  • HBM4の試験出荷 – 2025年6月、マイクロンは次世代高帯域幅メモリ「HBM4」36GB 12-highサンプルの出荷を開始した。HBM4は1β DRAMプロセスと12-highアドバンストパッケージング技術を採用し、2048ビット・インターフェースで 1スタック当たり2.0 TB/s超 の帯域と、前世代HBM3E比で 60%以上 向上した性能を提供する。また電力効率は前世代より 20%以上 改善され、2026年に量産へ移行予定investors.micron.com

  • SOCAMM2(小型メモリモジュール) – 2025年10月、AIデータセンター向けの 192GB SOCAMM2 モジュールを発表した。1γ(1-gamma)DRAM技術に基づき、従来のSOCAMMと同じサイズで容量を50%増やし、DDR5 RDIMM比で消費電力を3分の1以下に削減する。Nvidiaとの協業により、リアルタイムAI推論のレイテンシを大幅に低減し、将来的なアップグレードが容易になるinvestors.micron.com

  • LPCAMM2(ノートPC向けモジュール) – CrucialブランドのLPCAMM2はAI対応ノートPC向けの低電力メモリモジュールで、最大 8,533MT/s の速度と 64GB の容量を持つ。従来のDDR5 SODIMMより1.5倍高いデータ転送速度を達成し、エネルギー効率とアップグレード容易性を強調しているcrucial.com

  • 自動車向けUFS 4.1 – 2025年11月、9世代目3D NANDを採用した自動車用UFS 4.1ストレージのサンプル出荷を開始した。帯域幅は 4.2 GB/s で従来製品の2倍となり、AIモデルの処理や周辺認識システムの速度を向上させる。G9技術によりブート時間を 30%短縮 し、高耐久性と高温保護を備え、AEC‑Q104規格や機能安全規格(ISO 26262)に準拠しているinvestors.micron.com

  • Crucial DDR5 Pro OC 6400 CL32 – 2025年10月、Crucialブランドから最高速のゲーミングDRAMが発売された。 6,400MT/s の高速とCL32の低レイテンシを特徴とし、新デザインのヒートスプレッダにより冷却性能を高めた。Intel XMP 3.0やAMD EXPOをサポートし、特定のゲームではフレームレートを最大 25%向上 させるinvestors.micron.com

経営関連ニュース

  • 取締役の退任 – 2025年10月、リチャード・M・ベイヤー氏とメアリー・パット・マッカーシー氏の両取締役が2026年の株主総会で退任することが発表された。ベイヤー氏は半導体業界での豊富な経験を生かし、報酬委員会の委員長などを務めた。マッカーシー氏はKPMG出身で財務・監査の経験を持ち、監査委員会の委員長を務めた。退任後、取締役会は8名体制となるinvestors.micron.com

  • 財務発表日程 – 2025年11月、マイクロンは2026会計年度第1四半期(2025年10〜12月)決算発表を 2025年12月17日午後2時30分(山岳部標準時) に行うと告知したinvestors.micron.com

まとめ

2025年後半のマイクロンテクノロジーは、AIブームによるメモリ需要の急増に対応するため戦略転換と投資を加速した。Crucialブランドからの撤退や中国向けサーバーチップ供給終了など非中核事業を縮小する一方、HBM・AIメモリに注力し、HBM4サンプル出荷やSOCAMM2などの新製品を投入した。決算ではHBM売上が年間80億ドル規模に達し、2026年度の供給がすでに完売している。大規模投資も相次ぎ、日本やシンガポール、米国で新工場やパッケージング施設を建設し、世界的なメモリ供給不足に対応する姿勢を示している。また、取締役の退任やゲーミングDRAMの発売など経営・製品面での動きも注目される。