トヨタ自動車は12月9日、燃料電池自動車(FCV)の新型「MIRAI(ミライ)」を発表し、国内販売を開始した。
FCVは燃料として積んだ水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を生み、駆動モータを動かす電池自動車だ。

走行時には水しか排出せず、乗用車で3分ほどの短い充填時間で長い距離が走行可能なことから、「究極のエコカー」と呼ばれる。
トヨタはいち早くこの技術に注目し、2014年に世界初となる量産型FCVとして初代ミライを発表した。

2代目の開発に際して、注力したのが航続距離の延長だ。電気を生み出す燃料電池(FC)システムの刷新で燃料を10%向上
搭載する水素タンクも2本から3本に増やし、水素搭載量を20%拡大させた。
これにより、初代で650キロメートルだった航続距離は2代目で850キロメートルへと3割伸びた。

FCシステムの要であるFCスタックを構成するセルの設計や工法を大きく変え、1セル当たりの生産時間を十数分から数秒に短縮。
セルには水素と酸素を化学反応させる触媒として高価な白金(プラチナ)が使われているが、セルの高性能化で使用料を半分以下に減らした。

その結果、システムのコストを約3分の1削減できたという。

 

(管理人コメント)
かつて、燃料電池車を一台作るのに、プラチナは、約100g必要でした。
FCV1台40gのプラチナを使えば、1,000万台の燃料電池車を生産するために、400トンのプラチナが必要。
それに対するプラチナの年間供給量は、わずか200~250トン。

 

新型ミライは北米や欧州でも販売する。
トヨタは新型車をテコにFCVの世界販売台数を19年(約2500台)の10倍となる年間3万台にまで早期に引き上げたい考えだ。
販売増に向け、FCスタックと高圧水素タンクの生産能力もすでに増強を済ませた。

 

(管理人コメント)
水素用タンクには70Mpaの負荷がかかり、耐圧強度に関する技術革新が求められた。
耐圧強度は、射出成型で作り上げた円筒カプセル型タンクの本体に、炭素繊維(1cm幅の帯状)を巻くことで向上させ、同時にバリア性を高めた。
巻き方もタンクの曲面に応じて、円筒巻き・ら旋巻き・平面巻きの3種類を効果的に使い分ける必要があった。

 

ネックは充電インフラ

普及への最大の課題はインフラの整備だ。
豊田章男社長が「(水素燃料の充填)ステーションとFCVの関係は花とミツバチ」と例えるように、どちらが先ではなく、両者のバランスが取れて初めて共存し、ともに普及できる。
しかし、国内を例にとっても、ステーションは現状135か所しかない。

水素ステーション整備のネックとなっているのは、固定型で約5億円もかかる高額建設費だ。
水素用の高圧ガスタンクやパイプに特殊な金属を使う必要もあり、ガソリンスタンドの5倍以上の建設費がかかる。
運営費も年間約3,000万円必要なため、補助金なしでは採算は難しい。

また、水素の需要が増えない限り、インフラの整備は進まない。
そこでトヨタはミライの刷新に際して、乗用車以外にも転用可能な汎用性の高いFCシステムを新規に開発。
トラックなどの商用車のほか、鉄動、船舶、産業用発電機への転用も可能だという。

自社開発したFCシステムを多用途に提供することで水素の需要を生み出し、インフラ整備を促す作戦だ。

 

(管理人コメント)
トヨタ自動車、本社工場に、MIRAI用FCシステムを活用した定置式FC発電機を導入
-実証運転を開始し、オフィスや工場など商用用途での実用性を検証-

国が進める「燃料電池自動車用水素供給設備設置補助事業」等の制度を活用して燃料電池実用化推進協議会の会員企業等が運営する、こうした規格・基準に適合した商用水素ステーションの普及状況

 

参考:https://toyokeizai.net/articles/-/405316

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