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自動車の電動化が進む中で、電池やモーターの開発は日々進んでいる。
その中で各元素の役割が極めて重要な位置にある。

中でもレアメタル(希少金属)が様々な機能を果たすことで重用されている。
しかし一方では、このような元素が世界の限られた国や地域に限定された形で存在しており、元素戦略として、資源精製の現場から資源確保の調達ビジネスまで含めて、大きな意味合いを有している。

歴史を通れば、著者がホンダに入社した1978年のこと、自動車業界では排ガス浄化を図る触媒の研究開発が急がれていた。
(中略)

この触媒技術は極めて高価な貴金属を必要とするが、課題はいずれも高価な貴金属元素が必要となる技術からの脱却であった。
例えば白金を使わなくてもよいような触媒の研究などがすすめられてきた。

ただ、業界関係者の長年の努力も空しく、いまだに白金は不可欠元素として君臨している。

同じような事象は、家庭用や自動車用に適用されている固体高分子型燃料電池(PEFC)でも存在する。

●リチウムイオン電池の元素戦略

電池の正極と負極の材料が性能を大きく左右する。
リチウムやコバルトが多用されるリチウムイオン電池は、1980年代前半の旭化成における原理研究から機構構築、そして1991年のソニーにおける世界初の量産によって大きく開花した。
実用化当初の正極材は、コバルト酸リチウムであり、コバルトは不可欠な元素として適用されていた。

コバルトを用いないマンガン酸リチウムも正極材として一部適用されてきた。
2010年12月に発売された日産「リーフ」のリチウムイオン電池(AESC製)に適用された。

しかし、正極の劣化に伴うリチウムイオン電池性能低下の問題なども露呈し、現在は三元系と呼ばれるニッケルーコバルトーマンガン(NCM)が主流となる形で成長している。

中国でEVバス用リチウムイオン電池に適用されているオリビン型リン酸鉄も、コバルトフリーのため注目されてきた。
しかし、通常のリチウムイオン電池の作動電圧が3.6Vなのに対し、正極にリン酸鉄を適用すれば作動電圧が3.0Vにまで低下するため、性能の点で見劣りするのも事実である。

それだけにコバルトは必要な元素となっているのであるが、ここにもコバルトの資源問題と調達リスクがつきまとう。
資源と調達問題でいえば、コバルトの生産国は政情不安な今後民主共和国(旧ザイール)が約3分の2を占め、10%未満でオーストラリアやカナダ、中国という偏在ぶりだ。
そしてそのコンゴでは、鉱山での児童就労問題が浮上している。

すなわち子供がマスクなどの保護具も身に着けないまま、手彫りで働かされている状況が報じられており、将来が不安視される要因になっている。

 

●コバルトに依存しない正極材料

主流となっているリチウムイオン電池の正極材料は、コバルトが不可欠な元素構成になっている。
この希少なコバルトに依存しないための取り組みが重要だ。

究極はコバルトフリーにすることだが、そう簡単な話ではない。
リチウムイオン電池の正極はニッケル-コバルト-マンガン三元系NCMをベースに改良が進みつつあり、高電圧系へシフトさせる開発が続いている。

すなわち、ニッケル-コバルト-マンガン成分比率を1対1対1から6対2対2へ、さらに8対1対1へと変更し、相対的にコバルトを低下させていくという方向である。
その場合のそれぞれの充電電圧は4.15Vから4.25Vへ、そして4.4Vへという進化が期待できる。

しかし、ニッケル-コバルト-マンガン系に対してそういうシナリオが簡単には進まない、あるいは進めてはいけない課題も共存する。
一つは、コバルト比率を下げる一方でニッケル比率を高めれば高めるほど、限りなくニッケル-コバルト-アルミやニッケル酸リチウムに近づくことだ。
これらは熱安定性が三元系NCM1対1対1より劣り、安全性の面での懸念が生じる。

 

事実、車載用でニッケル酸リチウムやニッケル-コバルト-アルミを単独で適用する大型車載用電池はない。
ニッケル-コバルト-アルミを適用するのはモバイル用リチウムイオン電池、あるいは米テスラが適用している小型の円筒形リチウムイオン電池「21700」、そして三元系とニッケル-コバルト-アルミをブレンドする材料設計など、用途は限られている。

また、充放電電位が高くなればなるほど、電解液の分解しやすさが助長されることにもつながり、これもまた安全性を阻害する要素となる。

そのような意味から、安全性や信頼性に課題を残す三元系の高ニッケル化は、リチウムイオン電池の安全性を担保するという観点から逆行する方向にあると考える。
ならば、三元系の性能特性を損なわず、しかも安全性を同様に維持できるコバルトフリーの開発が非常に重要となるだろう。

この知財を構築できれば、今後のリチウムイオン電池事業において主導権を握ることになろう。
日本の先端材料技術へのアプローチにより、他元素との組み合わせなどから新技術が開発されることに期待したい。

 

もっと知るには・・・
(EVに興味ある方や、EV関連に投資している方は読んだ方がよい本。おすすめです)

 

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