EVやPHEVに関する安全性については、まだ解決されていないのが実態である。
すべての製品に共通した問題ではないが、EVではいまだに火災事故が発生している。
三菱自動車の「アイ・ミーブ」と日産自動車の「リーフ」は、公道での火災事故に関しては1件も発生させていない。
リーフは市販から10年になり、累計販売は45万台を超えた中で安全性に関しては誇れる実績であろう。
一方、テスラの「モデルS」は、2013年に米国市場で立て続けに5台の火災事故を起こし、大きく報道された。
2016年にはフランスの試乗会で火災事故があったほか、ノルウェーや中国などでも少なからず火災事故を起こした。
2018年6月15日にはハリウッドでも火災事故が発生した。
2019年4月には上海で停止中に爆発火災事故が発生し、同年8月にはロシアの高速道路でも爆発火災を起こしている。
中国では、リチウムイオン電池を搭載したタクシーや乗用車、EVバスで、2010年以降から火災が多発し、現在も大きな問題となっている。
それが背景にあり、安全性・信頼性の高いエコカーを実現するためのエコカーライセンスの発行、およびリチウムイオン電池の安全性を担保するためのホワイトリストの政策実施により、危険なリチウムイオン電池を排除しようとする中国政府筋の意志が見られた。
車載用電池ではドイツが主導してきた国連規則「ECE R-100/02 PartⅡ」が2016年7月に発効した。
電池パックにまで及ぶ9項目の評価試験が課せられる認証制度が導入された。
試験項目には電池パックの圧壊試験、外部短絡試験、耐火試験などの相当危険な試験法が導入されている。
認証試験を義務教育とするなら、自動車メーカー個社単位で構築している独自試験項目や原価試験項目は高等教育に値する。
著者がサムスンSDIに在籍していた際には、日米欧韓の自動車各社を訪問し、安全性・信頼性に対する考え方、評価試験法、そして判定基準について多くの議論を交わしてきた。
高等教育領域での内容、すなわち各社の独自試験や限界試験、そして判定基準は、他国に比べて日本勢が圧倒的に厳しくしてきた。
だからこそ、HEV、PHEV、EV、そしてFCVのいずれにおいても火災事故を起こしていないという実績につながっている。
拡大するEVシフトの中で火災事故が多発していくような状況が生じれば、全世界でのEV事業にブレーキがかかる。
その結果、関係する各業界へ莫大な影響が及ぶことになる。
それだけに、現時点から着実な評価試験を通じた安全性確保のための開発が重要な意味を持つことになり、試験機器業界や受託試験などの後方支援の担う役割はいっそう拡大する。
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