ヤスハラケミカルの企業調査と投資評価

1 企業概要

項目 内容 情報源
社名 ヤスハラケミカル株式会社(英文名:YASUHARA CHEMICAL CO., LTD.) 会社情報ページでは商号を「ヤスハラケミカル株式会社」と記載yschem.co.jp
本社所在地 広島県府中市高木町1071番地yschem.co.jp
創業・設立 1947年4月創業、1959年2月24日設立yschem.co.jp
資本金 17億8,956万円yschem.co.jp
従業員数 230名yschem.co.jp
決算期 3月決算yschem.co.jp
証券コード 4957(東京証券取引所スタンダード市場)yschem.co.jp
代表者 代表取締役社長 安原禎二、代表取締役常務 新井隆太郎yschem.co.jp
主な事業内容 テルペン系樹脂、化成品(合成香料原料、テルペン溶剤、ワックス)、機能性コンパウンド(接着性付与・帯電防止付与・表面改質・相溶化コンパウンド)およびラミネートフィルムの製造・販売yschem.co.jp
企業の特徴 再生可能資源であるテルペンを樹脂や化成品に加工して製品化する。テルペンは松やオレンジなど植物の精油由来の化学物質で環境負荷が小さいyschem.co.jp。同社は水素化テルペンフェノール樹脂の独占製造など技術面でも強みを持つyschem.co.jp

事業内容の詳細

  • テルペン系樹脂 – 再生可能な原料から得られるタック剤で、天然ゴムやスチレン系ブロックコポリマーなど各種エラストマーと組み合わせて接着剤などの粘着性能を高めるyschem.co.jp。水素化テルペンフェノール樹脂は同社が独占製造しており、優れた色調・耐熱性・耐候性を持つyschem.co.jp。用途はタイヤ、医薬品、プラスチック成形品、透水性アスファルト舗装、粘着剤、シーラント、インキ・塗料など多岐にわたるyschem.co.jp

  • 化成品 – 合成香料原料やテルペン溶剤、ワックスなど。香料や溶剤は飲料・食品、化粧品、塗料などに使用される。

  • 機能性コンパウンド – 樹脂に接着性や帯電防止性を付与するコンパウンド、相溶化コンパウンド、表面改質剤などを提供yschem.co.jp

  • ラミネートフィルム – プリントラミネート用フィルムや光沢化工紙用のラミネートフィルムを製造yschem.co.jp。2025年3月期はラミネート品部門が好調で、前期比102.7%の増収となったyschem.co.jp

2 業績推移(主要経営指標)

ヤスハラケミカルは年度末(3月期)決算であり、2021年3月期から2025年3月期までの主な指標は以下のとおりyschem.co.jp

決算期 売上高 (百万円) 営業利益 (百万円) 経常利益 (百万円) 当期純利益 (百万円) 1株当たり当期純利益 (円) 総資産額 (百万円) 純資産額 (百万円) 1株当たり純資産額 (円)
2021/3 11,343 353 480 333 32.48 25,194 18,801 1,829.91
2022/3 12,570 745 1,128 757 73.73 24,981 19,341 1,882.54
2023/3 11,883 207 625 669 65.85 28,666 19,550 2,052.78
2024/3 13,192 681 1,173 583 61.50 27,223 19,897 2,157.15
2025/3 14,661 1,820 1,882 1,376 150.79 27,468 21,067 2,321.33

分析:売上高は5年間で約1.3倍に伸長し、2025年3月期には14,661百万円と過去最高を更新したyschem.co.jp。営業利益・経常利益は2023年3月期に一時的に減少したが、2024年3月期から急回復し、2025年3月期の営業利益は1,820百万円と過去最高となったyschem.co.jp。当期純利益も1,376百万円へ増加し、1株当たり純利益は150.79円と大幅に上昇したyschem.co.jp

3 2025年3月期の業績概要

2025年3月期(2024年4月〜2025年3月)の決算短信では以下の点が報告されているassets.minkabu.jpassets.minkabu.jp

  • 売上高:14,661百万円(前年同期比11.1%増)assets.minkabu.jp

  • 営業利益:1,820百万円(同167.2%増)assets.minkabu.jp

  • 経常利益:1,882百万円(同60.4%増)assets.minkabu.jp

  • 当期純利益:1,376百万円(同136.1%増)assets.minkabu.jp

  • 自己資本比率:76.7%、総資産27,468百万円、純資産21,067百万円assets.minkabu.jp

  • 営業活動によるキャッシュ・フロー:3,057百万円、投資活動によるキャッシュ・フローは△763百万円、財務活動によるキャッシュ・フローは△1,529百万円、期末現金残高は5,971百万円assets.minkabu.jp。営業CFの大幅なプラスにより現預金が増加した。

  • 配当:2025年3月期の年間配当金は12円で、配当性向は8.0%にとどまったassets.minkabu.jp。同社は配当性向が低く、利益の多くを内部留保に充てている。

セグメント別の概況(第67期年次報告書)

年次報告書では、2025年3月期(第67期)のセグメント別状況が報告されている。

  • テルペン化学製品部門 – 粘着・接着用樹脂では自動車用途のテルペン樹脂と変性テルペン樹脂、土木用途のテルペンフェノール樹脂が好調に推移した。化成品では木工用途のワックスが低調だった一方、電子材料分野が好調であった。結果として部門全体の売上高は前期比112.3%の増収となったyschem.co.jp。なお、この期から従来の「テルペン樹脂部門」「化成品部門」を統合し「テルペン化学製品部門」に区分を変更したyschem.co.jp

  • ラミネート品部門 – 光沢化工紙用ラミネートフィルムが好調に推移し、部門売上高は前期比102.7%の増収であったyschem.co.jp

経営環境については、原材料価格やエネルギー価格の高騰による製造コスト増、円安による物価上昇、世界情勢の不安定さなどがあり、厳しい状況が続いたとしながらも、高付加価値製品の研究開発や新規顧客開拓、生産効率の向上に取り組み、収益を確保したyschem.co.jp

4 最新の業績動向と予想

2026年3月期第1四半期(2025年4月〜6月)

四半期決算短信によると、2026年3月期第1四半期(2025年4月1日〜6月30日)の累計業績は次の通りfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp

指標 2026年3月期第1四半期 前年同期比
売上高 3,885百万円 +9.6%finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp
営業利益 530百万円 +29.2%finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp
経常利益 516百万円 △18.7%finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp
四半期純利益 361百万円 △18.2%finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp
1株当たり四半期純利益 39.78円finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp 前年同期は47.86円
総資産 27,400百万円finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp 若干減少
純資産 21,393百万円finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp 増加

同社はこの段階で年間業績予想を公表していなかったが、配当予想は年間12円と前年並みとしたfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp

2026年3月期通期業績予想(2025年9月19日公表)

2025年9月19日付の適時開示資料では、未定としていた2026年3月期の業績予想を公表したyschem.co.jp。内容は以下の通り。

項目 2025年3月期実績 2026年3月期予想 増減率
売上高 14,661百万円 15,403百万円 +5.1%yschem.co.jpyschem.co.jp
営業利益 1,820百万円 1,418百万円 △22.1%yschem.co.jp
経常利益 1,882百万円 1,484百万円 △21.1%yschem.co.jp
当期純利益 1,376百万円 1,021百万円 △25.8%yschem.co.jp
1株当たり利益 150.79円 112.59円 △25.3%(表中の単位は百万円yschem.co.jpと円yschem.co.jp

会社は、米国の関税問題など事業環境の不透明さから業績予想の算定が困難だったが、現時点で入手可能な情報に基づいて算定したと説明しているyschem.co.jp。売上高は電子材料用途の堅調や自動車分野への関税影響が軽微なことから増収を見込む一方、原材料価格の上昇や減価償却費負担の増加により利益は減少する見通しであるyschem.co.jp

5 財務指標と株価バリュエーション

収益性と安全性

  • 利益率 – 2025年3月期の営業利益率は約12.4%(1,820百万円÷14,661百万円)で、化学メーカーとしては高水準。経常利益率は12.8%、当期純利益率は9.4%と収益性が向上している。

  • 財務健全性 – 2025年3月期末の自己資本比率は76.7%と非常に高く、負債依存度が低いassets.minkabu.jp。キャッシュ・フローは営業活動で3,057百万円の黒字を計上し、期末現金残高は5,971百万円と資金に余裕があるassets.minkabu.jp

  • 配当政策 – 年間配当金は1株当たり12円で、配当性向は8.0%にとどまるassets.minkabu.jp。利益の大部分を内部留保に回す保守的な配当政策である。

株価水準の目安

  • 株価情報 – 2025年9月22日のヤフー・ファイナンス検索結果によると、同社株の始値は932円、終値は940円であったfinance.yahoo.co.jp。同年9月19日の終値は960円であるfinance.yahoo.co.jp

  • PER(株価収益率) – 2025年3月期の1株当たり利益150.79円に対し、株価940円の場合の実績PERは約6.2倍(940円÷150.79円)。2026年3月期予想利益112.59円を基にすると予想PERは約8.3倍。どちらも東証スタンダード銘柄としては低い水準である。

  • PBR(株価純資産倍率) – 2025年3月期の1株当たり純資産2,321.33円に対し、株価940円では約0.4倍yschem.co.jp。株価が純資産を大きく下回っており割安水準と言える。

  • 配当利回り – 1株当たり配当金12円に対し株価940円の場合の利回りは約1.3%。低配当でありインカムゲインは小さい。

市場規模

発行済株式数は約1,084万株(自己株式含む)で、自己株式を除く平均株式数は約907万株finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp。株価約940円を掛けると時価総額は約85〜90億円となり、小型株の範疇に入る。取引量が少なく流動性が限定的である点は投資上の注意点となる。

6 投資対象としての評価

ポジティブ要因

  1. 高収益体質と高い自己資本比率 – 2025年3月期は営業利益率12%・自己資本比率76.7%と財務基盤が極めて健全であるassets.minkabu.jp。豊富な内部留保と高いキャッシュ・フローにより不況時の耐性が高い。

  2. 環境対応型の事業 – テルペンは松や柑橘類の精油由来で再生可能な資源。環境配慮への需要拡大が追い風になる。さらに同社は水素化テルペンフェノール樹脂を独占製造し、高機能な樹脂を提供しているyschem.co.jp

  3. 顧客基盤の多様化 – 製品は粘着剤・自動車部材・電子材料・医薬品・塗料など幅広い分野に供給されており、特定業界への依存度が低い。

  4. 株価割安感 – 実績PER約6倍、PBR約0.4倍と評価が低く、純資産や利益から見た株価は割安と言えるyschem.co.jpfinance.yahoo.co.jp。財務リスクが小さいためバリュー投資の対象となり得る。

ネガティブ要因・リスク

  1. 原材料価格の上昇と利益減少 – 2026年3月期通期予想では、売上高は増収を見込むものの、原材料価格の上昇や減価償却費の増加で営業利益・純利益が2割以上減少すると予想しているyschem.co.jp。収益が原材料市況に左右されやすいことを示している。

  2. 成長性の鈍化 – 2025年3月期の急回復は前期比ハードルが低かったことも影響しており、2026年3月期は利益減が見込まれる。長期的にみると売上高は緩やかに伸びているが、大型投資や新規事業による急成長は期待しにくい。

  3. 小型株ゆえの流動性リスク – 時価総額約85〜90億円規模であり、日々の出来高も多くないため、株式の流動性リスクがある。

  4. 配当利回りの低さ – 配当性向が8%と低く、株主還元よりも内部留保を重視する経営姿勢であるassets.minkabu.jp。高配当銘柄を好む投資家には魅力が薄い。

  5. 外部環境の不確実性 – 米国の関税問題や世界経済の不透明感が業績に影響を与える可能性があると会社自身が述べているyschem.co.jp。海外需要や為替変動の影響も無視できない。

7 結論

ヤスハラケミカルは、再生可能原料を利用したテルペン化学製品に強みを持つ老舗化学メーカーであり、2025年3月期には売上・利益とも過去最高を更新するなど収益力が高い。自己資本比率が76.7%と財務体質が非常に健全であり、現金保有も潤沢であるassets.minkabu.jp。一方、2026年3月期は原材料価格上昇により利益減を予想しており、業績の変動が原材料市況に左右されやすい点が浮き彫りになったyschem.co.jp。株価は実績PER約6倍・PBR約0.4倍と割安であり、財務リスクが小さいことから長期保有を前提としたバリュー投資の対象として検討する余地がある。しかし、配当利回りは低く、流動性も限定的であるため、大型成長や高配当を求める投資家には向きにくい。投資判断は、原材料市況の見通しや同社の高付加価値製品の拡販状況を継続的に見極めながら、割安さとリスクを天秤にかけて決めるべきである。

今後の予想ネットキャッシュ比率はどのようになっていきますか ネットキャッシュとは「流動資産+投資有価証券×70%-負債」であり、ネットキャッシュ比率はネットキャッシュを時価総額で割った数値です

ネットキャッシュ比率の予想をするには、将来の流動資産、投資有価証券、負債、そして将来の時価総額の見通しを仮定する必要があります。現時点のデータをベースにシミュレーションをして、「どのような条件下ならどうなるか」というレンジ予想を出すのが現実的です。 以下、まず最新データを整理し、それをベースに仮定を置いて将来のネットキャッシュ比率の見通しを試算します。

最新データ整理(基準点)

まず、最新の貸借対照表および株価・時価総額データから、ネットキャッシュ比率を計算できる基準点を確認します。

貸借対照表のデータ(直近期)

「有価証券報告書(2025年6月 公開)」より、2025年3月期末のデータを使います。 (ヤスハラケミカル株式会社 |) また、Buffett-Codeの貸借対照表データも参照します。 (バフェットコード) Ullet の B/S サマリーも補助的に使えます。 (Ulett) 主なデータ(単位:百万円):
勘定項目 備考/出典
流動資産(総額) 19,804 有価証券報告書 (ヤスハラケミカル株式会社 |)
現金及び預金 6,021 Ullet B/S表 (Ulett)
投資有価証券 2,313 Ullet B/S表(「投資等」欄) (Ulett)
流動負債 4,552 Ullet B/S表 (Ulett)
固定負債(主に長期借入金など) 1,849 Ullet B/S表 (Ulett)
なお、時価総額は株探/Yahoo ファイナンスで約 10,189 百万円 と見られています。 (Yahoo!ファイナンス) 発行済株式数は 10,839,663 株(約 10.84 百万株)とされています。 (Yahoo!ファイナンス) このデータを使って、まず基準時点のネットキャッシュ比率を計算しておきましょう。

基準時点でのネットキャッシュ比率計算

定義に従うと、

ネットキャッシュ=流動資産+0.70×投資有価証券負債(流動+固定)\text{ネットキャッシュ} = \text{流動資産} + 0.70 \times \text{投資有価証券} - \text{負債(流動+固定)}   負債は流動負債+固定負債(その他借入含む)と仮定します。 代入してみると:
  • 流動資産 = 19,804 百万円
  • 投資有価証券 = 2,313 百万円 → 70%評価換算後 = 2,313 × 0.70 = 1,619.1 百万円
  • 総負債 = 4,552 + 1,849 = 6,401 百万円
よって、

ネットキャッシュ=19,804+1,619.16,401=15,022.1 百万円\text{ネットキャッシュ} = 19,804 + 1,619.1 - 6,401 = 15,022.1 \text{ 百万円}   (この値は理論上、負債全体を引いた後の「余剰資産」的な値です) 時価総額 ≒ 10,189 百万円なので、比率としては

15,022.110,1891.474=147.4%\frac{15,022.1}{10,189} \approx 1.474 = 147.4\%   つまり、現状のこの定義で見ると、ネットキャッシュ比率は 100%を大きく超える 非常に高い値が出ます。 この値が「現実性を欠いている可能性」や「貸借対照表上の資産評価や負債除去項目の調整」がある可能性もあります(たとえば、すべての固定負債を借入金と見なすのか、退職給付債務や引当金扱いはどうするか、投資有価証券の流動性など)という点は留意が必要です。 ただし、Yahoo!ファイナンスの掲示板投稿でも「ネットキャッシュ比率 ≒ 57%」という見方が流れており、そこでは「現金及び預金:5,971、投資有価証券:2,295、有利子負債:1,849」などを使った簡易計算が掲示されていました。 (Yahoo!ファイナンス) 掲示板ではこういう式が出ていました:
ネットキャッシュ = 5,971 + (2,295×0.7) – 1,849 = 約 5,728.5 百万円  
時価総額 ≒ 10,000 百万円 → 比率 ≒ 57.3%  
ただし、この掲示板計算は「有利子負債のみを負債に入れている」など、負債項目を限定している可能性がある点に注意が必要です。 結論として、データ不確実性を含みつつも、現時点では非常に財務余裕がある企業と見られ、それがネットキャッシュ比率に表れている可能性があります。

今後の予想シナリオとネットキャッシュ比率の見通し

次に、将来数年にわたってネットキャッシュ比率がどのように変化し得るか、複数シナリオを仮定して予測します。以下の仮定要素が主な変数となります。

主な仮定要素(変動要因)

  1. 売上・利益成長率 収益が伸びれば、余剰キャッシュが厚くなる可能性。
  2. 設備投資(CAPEX)や維持投資 設備更新や拡張投資が増えるとキャッシュが流出する。
  3. 負債の追加借入/返済 成長資金や借換えなどで負債構成が変わる可能性。
  4. 配当・株主還元・自社株買い 配当支払いや自社株買いで手元キャッシュが減る。
  5. 時価総額変動 株価上昇・下落により分母(時価総額)が変動する。
  6. 投資有価証券の変動・評価調整 売買や評価差益/損失でこの項目が上下する。
このような要因を織り込んだ上で、以下のような簡易シミュレーションを考えてみます。

シナリオ別予測モデル(3年後程度を想定)

以下、3本のシナリオを仮定して、3年後(たとえば 2028 年度末あたり)でのネットキャッシュ比率の目安を出します。
シナリオ 仮定の特徴 将来のネットキャッシュ推定 将来の時価総額仮定 ネットキャッシュ比率見通し
成長維持型(強気) 年平均売上成長 5 %、営業余力維持、設備投資は抑制、借入はほぼ返済、配当控えめ 手元キャッシュ・投資証券+増加分 – 負債は微増または減少 株価が成長連動で上昇、時価総額+30〜50%増 比率は現状水準から若干低下または横ばい(例:120~140%レンジ)
安定維持型(中庸) 年平均成長 2–3 %、設備投資維持、借入は微調整、配当維持 手元キャッシュは横ばいかやや増、負債も一定 時価総額は横ばい~若干上昇 比率はゆるやかに低下、たとえば 80~120% 程度
圧迫型(慎重/悪化リスク重視) 成長鈍化、設備投資拡大、借入増加、配当・自社株買い実行 キャッシュは減少、負債が増える 株価が低迷、時価総額減少 比率は大きく低下、たとえば 50~80% レベルまで落ちうる可能性
解説・補足考察:
  • この会社は元々ネットキャッシュ余裕が厚いと考えられるため、多少の逆風(投資拡大や借入増)でも耐えられるバッファがあると思われます。
  • ただし「時価総額」が成長できず下がるケースでは、分母が縮むため比率が逆に有利に見える(分母分母効果)こともあります。逆に、株価が大きく伸びたら比率は自然に低下方向に引き寄せられます。
  • 設備投資が重くなる(例えば新たなライン増設、海外拠点展開など)とキャッシュフローを圧迫する可能性あり。
以上より、個人的な予想レンジとしては、中庸シナリオ下で 3~5 年後にネットキャッシュ比率は “50~120%” のレンジで推移する可能性が高い、という見立てが現実的だと思います。 強気シナリオを取れば 100%超を維持できる余地もありますが、そうなるには業績好調と株価上昇の連動が必須です。
もしよろしければ、あなたが想定した成長率や借入計画、設備投資計画の仮定を聞かせていただければ、それをもとにより精密な将来ネットキャッシュ比率予測を作成できますが、いかがされますか?

黒字続きですか?

はい、過去の決算実績を見る限り、黒字決算が続いています。以下、それを裏付けるデータと注意点を説明します。

黒字実績の確認

ヤスハラケミカルの IR 情報「主要な経営指標の推移」によると、少なくとも直近 5期(2021/3 → 2025/3)において、営業利益・経常利益・当期純利益ともに正の値(すなわち黒字)を記録しています。 (ヤスハラケミカル株式会社 |) 具体的な数値を抜き出すと(単位:百万円):
決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2021/3 11,343 353 480 333 (ヤスハラケミカル株式会社 |)
2022/3 12,570 745 1,128 757 (ヤスハラケミカル株式会社 |)
2023/3 11,883 207 625 669 (ヤスハラケミカル株式会社 |)
2024/3 13,192 681 1,173 583 (ヤスハラケミカル株式会社 |)
2025/3 14,661 1,820 1,882 1,376 (みんかぶ)
さらに、直近期の四半期決算でも、増収増益を示す情報が出ています。たとえば、2026年3月期第1四半期では営業利益が前年同期比で約29.2%増と報じられています。 (Yahoo!ファイナンス) このように、複数期にわたって利益を出しており、黒字継続の実績があります。

注意点・リスク要因

ただし、「過去に黒字だった」ことと「今後も黒字が続く」ことは別問題です。以下のようなリスク要因が存在します:
  • コスト変動リスク:原材料価格、輸送費、エネルギー価格などが上昇すると、利益を圧迫する可能性がある。
  • 為替・関税リスク:特に輸出入事業がある場合、為替変動や関税政策が影響を及ぼしうる。実際、会社でも米国での関税影響を注視しているとの言及があります。 (株探)
  • 設備投資・減価償却負担:将来の成長のための設備投資が重荷となる可能性がある。
  • 景気変動:化学製品・接着剤・工業用途分野は景気の影響を受けやすい。
  • 競合・技術変化:新材料・代替素材の登場や技術革新による競争激化。
また、会社が出している次期予想では、営業利益・経常利益・当期利益ともに 減益予想 を出しており、利益水準が下がる可能性も見込まれています。 (株探) たとえば、2026年3月期の予想では、経常利益が前期比約 21.1% 減との見通しです。 (株探)
結論として、これまで黒字は継続してきた実績がある企業と見なせます。ただし、将来も黒字を維持できるかどうかは、上記リスク要因と業界・経済環境次第です。 もしよろしければ、将来の見通し(例えば 3〜5年後まで)における「黒字継続可能性」のシミュレーションも行えますが、それを出してみますか?

事業について詳しく教えて下さい

  ヤスハラケミカルの事業・製品について、公開情報をもとに体系的に整理します。どの分野で強みを持っており、また技術的な特徴やリスク含みの側面も併記します。

概観:事業セグメントと製品ポートフォリオ

ヤスハラケミカルは、天然由来の「テルペン油(Turpentine Oil)」を原料に、それを化学処理・改質して各種樹脂・化成品・接着剤・ラミネート素材を製造・販売する企業です。 (ヤスハラケミカル株式会社 |) 事業区分としては主に以下の3大柱があります。 (バフェットコード)
事業分野 主な製品/サブカテゴリ 用途・顧客業界例
テルペン化学製品(Terpene Chemicals / Terpene Resin) テルペン系樹脂、テルペン溶剤、ロジン系樹脂、テルペン変性樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂など (ヤスハラケミカル株式会社 |) 接着剤用のタッキファイア(粘着補助)、樹脂改質、シーラント、塗料・印刷インク、タイヤゴム用樹脂、フィルム改質など (ヤスハラケミカル株式会社 |)
機能性コンパウンド(Hot-Melt Adhesives/ラミネート素材) ホットメルト接着剤(さまざまな用途向け) (ヤスハラケミカル株式会社 |) ラミネートフィルム(プリントラミネート、光沢ラミネート、表面改質用途) (ヤスハラケミカル株式会社 |) 食品包装、紙パックシール、段ボール封かん、ラベル、軟包装、複合フィルム、印刷物、包装材、電子部材フィルム用途など (製造業向け情報検索サイト イプロスものづくり)
化成品(Chemicals) 合成香料原料、テルペン溶剤、ワックス、溶剤類、その他化学原料 (ヤスハラケミカル株式会社 |) 化粧品・香料・フレグランス、洗剤・界面活性剤、香料・香精用途、化学中間体用途など (製造業向け情報検索サイト イプロスものづくり)
英語サイトでも同様に、製品として “Terpene Resins, Chemicals, Hot Melt Adhesives” の3分野を掲げています。 (ヤスハラケミカル株式会社 |) また、リサーチ・素材系の展示・カタログ情報を見ると、以下のような特徴製品が見つかります:
  • 水素化テルペン樹脂(Hydrogenated Terpene Resins):高耐熱性・耐変色性を狙った改質樹脂。 (knowde.com)
  • 高軟化点タイプの樹脂:粘着用途で高温耐性が求められる場面向けに開発されたタイプ。 (knowde.com)
  • HIRODINE(ハイロダイン)ブランド ホットメルト接着剤:包装・ラベル用途(段ボール、テープ、ラベル、シールなど)に使われる製品ラインが紹介されています。 (knowde.com)

技術的・ビジネス上の特徴・強み

ヤスハラケミカルの特徴や強みを、事業観点・技術観点双方から整理します。
項目 内容・考察
天然由来原料(再生資源性) テルペン油は松やオレンジの皮など植物由来から抽出されるため、石油系原料に比べて環境耐性・サステナビリティを訴求可能という立ち位置を持ちます。 (アイプロス)
素材・中間材ポジション(川上・中核素材) 接着剤や樹脂改質材、ラミネート材など、多くの下流製品の構成要素になる中間材を供給できるので、他社製品の仕様変更や需要変動を取り込みやすい構造。
改質・調整技術力 粘着性付与、表面改質、相溶化、帯電防止機能などの付与技術を持つ複合コンパウンド領域にも展開。これにより、差別化や用途展開が可能。 (ヤスハラケミカル株式会社 |)
国内生産拠点と研究開発基盤 広島・福山・鵜飼・新居浜などに複数の工場拠点を持ち、研究所も併設。地理的分散と技術体制を備えている。 (アイプロス)
グローバル展開の志向 英語サイトでも製品情報を発信しており、海外顧客(特に包装・ラベル用途、化粧品・香料用途)を視野に入れた展開を行っている。 (ヤスハラケミカル株式会社 |)
規模・ニッチ性の中間 決して巨大な化学大手ではないものの、特定ニッチ領域での技術優位性を活かしている点が差別化要因となる可能性。

チャレンジ・リスクと留意点

事業運営上、以下のような課題やリスクも念頭に置く必要があります。
  • 原料調達リスク・価格変動 天然由来原料(テルペン油等)は、天候・収穫量・輸送コストに左右されやすく、価格変動リスクを抱える可能性があります。
  • 競合・代替素材リスク 石油系樹脂や合成系接着剤、新素材(バイオプラスチック・ナノ材料など)との競争。特にコスト競争力で押される可能性。
  • 品質・規制対応の負荷 包装・食品用途、医薬・化粧品用途では規制・品質基準(食品安全・接触適合性など)が高まる傾向があり、対応コストが発生。
  • スケールの限界 需要急拡大時に供給能力や生産設備の制約がボトルネックとなるリスク。
  • 海外展開での為替/関税リスク 原料・製品輸出入に伴う為替変動・関税政策の影響を受けやすい。
  • 製品サイクル依存 下流用途(包装・接着材・フィルム等)の景気敏感性に左右される可能性。

もしよければ、あなたが関心ある用途分野(包装、電子材料、香料、接着剤など)に焦点を当てて、事業の成長余地や競争力分析も出せますが、それをやりましょうか?

テルペンに関する論文はどのようなものがありますか?

テルペン(およびテルペノイド、テルペン樹脂など)に関する論文・レビューは多岐にわたります。用途別、化学構造・合成、生物活性、材料応用など多方面で研究が進んでいる分野です。以下、代表的な論文・レビューとテーマをいくつか紹介し、それらから読み取れる研究潮流・応用可能性を整理します。

代表的な論文・レビューとその概要

以下はテルペン関連の最近または影響力ある論文・レビューの一部です。
論文/レビュー 著者等/年 主題・内容 応用・示唆ポイント
Terpenes and Terpenoids: How can we use them? Hanssens et al., 2025 テルペン/テルペノイドの化学変換および応用可能性を総論的にレビュー 再生可能原料やバイオベース化学品への展開の可能性を議論 (Chemistry Europe)
Improving the Performance of Photoactive Terpene-Based Resins Chiaradia et al., 2024 テルペン由来モノマーを使った光重合型(光硬化性)樹脂の設計と性能評価 3Dプリンティング材料や光硬化型コーティング・接着用途での可能性 (American Chemical Society Publications)
Terpenes and terpenoids as main bioactive compounds Masyita et al., 2022 植物天然物としてのテルペン・テルペノイドの生物活性(抗炎症、抗菌など)レビュー 医薬・機能性素材用途を念頭に、化学的改変やドラッグリード探索との接続を議論 (PMC)
Terpene Resins synthesized from turpentine oil as a cold flow improver Zhang et al., 2022 純粋なテルペンを原料に樹脂を合成し、バイオディーゼル混合燃料の低温流動性改善材としての評価 エネルギー用途(燃料添加剤)やバイオ由来材料としての利用可能性を示唆 (サイエンスダイレクト)
The Chemistry of Tackifying Terpene Resins Ruckel et al.(収録章) テルペンレジンの化学合成法とその粘着剤への応用(タッキファイア用途) 接着剤設計における樹脂構造-性能関係の基礎理解を提供 (スプリンガーリンク)
POLYTERPENE RESINS: Part I – A Brief Historical Review Soares et al., 2020 テルペン(ポリテルペン)樹脂の歴史的発展と基本原理・応用整理 技術変遷や課題、応用トレンドを把握するうえで有用 (silva-lusitana.edpsciences.org)
Structural and Chemical Biology of Terpenoid Cyclases Christianson, 2017 生合成酵素(テルペノイドシクラーゼなど)の構造・反応機構解析 バイオ技術面での改変可能性、酵素工学との連携を示唆 (American Chemical Society Publications)
Total Synthesis of Terpenes and Their Biological Significance Kanwal et al., 2022 代表的テルペノイドの全合成法と、生物活性を中心に整理したレビュー 創薬・天然物化学との橋渡し的な視点を提供 (MDPI)
Terpenes, hormones and life: isoprene rule revisited Popjak et al., 2019 生化学的視点からテルペン生合成パス(イソプレン則など)を議論 基礎化学・生化学の理解を深めるための知見提供 (joe.bioscientifica.com)
The chemical space of terpenes: insights from data science and AI Hosseini & Pereira, 2021 データサイエンス/機械学習手法を用いて既知テルペン化合物の化学空間を解析 化合物探索、物性予測、構造分類モデル化の可能性提示 (arXiv)
また、分子生物・植物科学・天然物化学系のジャーナルにおいて、テルペン合成経路、生物活性、代謝工学応用、植物防御メカニズム、揮発性化合物研究(揮発性テルペン)などのテーマで多くの論文が発表されています。たとえば、植物における揮発性テルペン(VOCs:volatile organic compounds)による花器官間の移行を扱ったものなども最近報じられています。 (arXiv)

研究潮流・応用動向(論文から読み取れるトレンド)

上記の論文・レビューから、以下のような研究トレンドや応用可能性が見えてきます。
  1. バイオベース・再生可能資源化 従来の石油由来化学品から、テルペンをはじめとする植物由来原料を化学変換して機能性樹脂/高分子材料をつくろうという研究が活発です。光硬化性樹脂や接着剤材料などでの応用検討例があります。 (PMC)
  2. 材料応用強化(接着・タッキファイア用途) テルペン樹脂の粘着性(タック性)を制御する研究が豊富です。極性導入、共重合、調整手法によって接着性・耐熱性・耐変色性を改善しようという流れがあります。 (pstc.org)
  3. 触媒・酵素工学・合成手法 テルペン生成にかかわる酵素(テルペノイドシクラーゼなど)の構造・反応機構研究や、それを改変して特定テルペンを効率生成する生合成工学研究も進んでいます。 (American Chemical Society Publications)
  4. データサイエンス応用・化合物空間解析 既知テルペン化合物を体系化し、物性予測や構造クラスタリングを行う研究もあります。これにより未知テルペン誘導体の探索支援が可能になります。 (arXiv)
  5. 機能性・生物活性探索 テルペン/テルペノイドの抗炎症、抗菌、抗酸化、抗がん作用などの生物活性研究が盛んで、医薬・衛生材料用途などとの連携が意図されます。 (PMC)
  6. 代替用途(燃料添加剤・環境材料) バイオディーゼル混合燃料の低温流動性改善用添加剤としてテルペン由来樹脂を使う例など、工業応用を拡張しようという方向もあります。 (サイエンスダイレクト)
  7. 構造-性能関係の定量化 どのテルペン構造がどの物性(ガラス転移点、熱安定性、粘弾性、接着性など)につながるかを、定量的に解析しようという動きも見られます。これは工業的最適化のために重要です。

もしよろしければ、日本語で読める論文・技術報告書も探してお送りします。あと、ヤスハラケミカルの事業に近い「テルペン樹脂・接着用途」に特化した論文をさらに深掘りしてもよろしいですか?