アップルインターナショナルの調査と投資対象としての評価(2025年9月時点)
会社概要と事業内容
アップルインターナショナル(証券コード:2788)は三重県四日市市に本社を置く中古車流通企業で、グループ会社を通じて以下の事業を行っている。fisco.co.jp。
| 事業 | 概要 |
|---|---|
| 中古車輸出事業 | 日本国内から仕入れた中古車を東南アジア・中東・アフリカへ輸出。タイやマレーシアで人気のミニバン車種などが需要を牽引し、2024年は輸出売上高が前年同期比47.1%増と大きく伸びたfisco.co.jp。輸出車には日本製が多いが、今後は第三国製の車両を仕入れて輸出することも検討fisco.co.jp。 |
| 中古車買取販売事業(フランチャイズ) | 子会社のアップルオートネットワークがフランチャイズ本部として、国内の加盟店・直営店に中古車の買取・販売ノウハウを提供。2024年は新車供給不足や円安を背景に国内オークション価格が上昇し、買取販売事業も前年同期比27.8%増と堅調に伸びたfisco.co.jp。 |
| オートオークション事業 | 持分法適用関連会社「Apple Auto Auction(Thailand)」を通じてタイで中古車オークションを運営している。タイ市場でトップシェアを確立しており、フィリピン・インドネシアなどへ事業を横展開する計画fisco.co.jp。 |
| リユース流通事業 | 2024年に新規開始したブランド品・不用品の買取・販売事業。買取チャネル拡大のため、LPガス事業者など異業種と提携し、今後は加盟店にも展開する計画fisco.co.jp。 |
| カーシェア・レンタカー | 北海道や沖縄で試験運用中。新車を仕入れてレンタカーとして稼働後、車検時に海外へ輸出するビジネスモデルを検討fisco.co.jp。 |
会社理念「Forward the Future」を掲げ、顧客・社会から信頼される企業を目指す。IRサイトでは法令順守・人権尊重・公正な取引・環境への配慮などのサステナビリティ方針を示しているapple-international.com。
最近の業績と財務状況
2024年12月期(実績)
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連結売上高4,379.5億円(前期比41.7%増)、営業利益13.74億円(同25.2%増)、経常利益15.35億円(同20.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益11.98億円(同18.9%増)fisco.co.jp。円安や新車供給制約を背景とした国内オークション価格の高騰と、タイ・マレーシア向け輸出が好調だったことが増収増益に寄与した。リユース流通事業も売上0.56億円を計上fisco.co.jp。
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期末総資産は197.62億円で前期末比28.91億円増加。売掛金・在庫増により流動資産が増えた一方、借入金増加で負債も増加したfisco.co.jp。自己資本比率は48.5%と健全性を維持しているfisco.co.jp。営業キャッシュフローは-12.08億円(在庫増による)で財務キャッシュフローは10.99億円の収入(借入増)fisco.co.jp。ROEは13.7%、ROAは8.4%と高水準fisco.co.jp。
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2024年12月期の配当金は1株当たり15円(普通配当10円+特別配当5円)で配当性向16.1%fisco.co.jp。
2025年12月期(会社計画)
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経営環境の不透明さ(米国政権交代に伴う関税政策や為替の変動)を踏まえ、売上高3,718.3億円(前期比-15.1%)、営業利益11.33億円(-17.5%)、経常利益12.04億円(-21.5%)、当期純利益9.05億円(-24.5%)と保守的な計画を示したfisco.co.jp。4月のフィスコレポートでは、国内オークション価格は高水準だが東南アジアの景況感悪化や中古車価格の沈静化を懸念しているfisco.co.jp。
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配当予想は普通配当10円とし、業績が計画を上回った場合は特別配当の上積みを検討するfisco.co.jp。
2025年1~6月期(第2四半期累計)
2025年8月8日に発表された中間決算では、海外輸出事業が米国の関税引き上げや世界的な貿易不安の影響を受け、前年同期比で大幅減益となった。主な数字は以下の通りassets.minkabu.jp:
| 項目 | 2025年1~6月期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 186.83億円 | -19.3% |
| 営業利益 | 2.76億円 | -66.4% |
| 経常利益 | 2.04億円 | -77.9% |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 1.05億円 | -84.3% |
| 1株当たり中間純利益 | 8.24円 | - |
総資産は200.24億円(前期末比+3.0%)で、自己資本比率は47.2%と若干低下assets.minkabu.jp。通期業績予想は据え置き、計画達成には下期(7~12月)での利益挽回が必要となる。
中長期の成長戦略
同社は国内市場が人口減少で縮小することを踏まえ、東南アジア等の成長市場へ経営資源を重点投入しようとしている。主な施策は以下の通り。
東南アジアでのオートオークション事業拡大
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タイでトップシェアを確立したオートオークションを、フィリピンやインドネシアへ展開し、2026年春にフィリピンで開業予定fisco.co.jp。すでにタイで培った人材・システムを移転することで立ち上げコストを抑える予定。
中古車輸出の多国籍化と付加価値強化
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日本車中心の輸出から、第三国製自動車の仕入れ・再輸出へ拡大を検討fisco.co.jp。
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人気車種の外装部品を部品メーカーと共同開発し、純正品の半額程度で提供するなど付加価値を高めた販売を開始fisco.co.jp。
国内FC(フランチャイズ)事業の拡大
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店舗が少ない関西・中国地方で加盟店を増やし、インターネット予約やLINE活用による査定件数増加を図るfisco.co.jp。
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カーシェア・レンタカー事業を北海道や沖縄で試験展開し、将来的にはEVにも対応する予定fisco.co.jp。
リユース流通事業
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ブランド品以外に不用品、遺品整理などを対象にした一気通貫のサービスを展開。地域に密着したLPガス事業者など異業種と提携し、買取基盤を拡大fisco.co.jp。ノウハウ確立後はフランチャイズ加盟店への展開を視野に入れ、持続可能な循環型社会への貢献を目指す。
リスク要因
仕入・輸出に関するリスク
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中古車の仕入れは国内ディーラーや中古車販売業者に依存しているため、取引関係が円滑に行われなくなると仕入が停滞する可能性があるapple-international.com。
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東南アジア諸国の輸入規制や関税の変動、競合他社の参入、為替レートの変動、海上運賃の上昇、船腹不足、カントリーリスク(政治・経済情勢の変化)などにより、輸出事業の収益が影響を受けるapple-international.com。特に同社は円建て決済が中心で為替ヘッジをほとんど行っておらず、円高局面では収益が圧迫されるapple-international.com。
買取販売・FC事業に関するリスク
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同業他社やオークション系業者との競争が激化し、販売価格下落やサービス要求の高まりに対応できなければ収益が悪化する可能性があるapple-international.com。加盟店の不祥事やフランチャイジーとの信頼関係の悪化もブランド毀損リスクとなるapple-international.com。
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中古車購入層の保有から利用(カーシェア)への転換や少子高齢化により国内中古車需要が縮小するリスクがあるapple-international.com。
財務・その他
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在庫や売掛金の増加に伴う運転資金需要が大きく、営業キャッシュフローがマイナスとなる傾向があるapple-international.com。固定資産の減損や個人情報の漏洩なども潜在リスクとして挙げられているapple-international.com。
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歴史的には2012年の中国子会社による無認可取引で内部統制の不備が判明し、財務報告を訂正する事態が発生したという指摘もあるzeiken.co.jp。これによりガバナンス面の監視が重要である。
株主還元
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配当は安定継続を基本とし、2024年は15円、2025年予想は10円(普通配当のみ)ながら業績次第で特別配当を検討しているfisco.co.jp。自己株式消却や株主優待制度は現時点でない。
投資対象としての評価
ポジティブ要因
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成長市場への参入余地:東南アジアの中古車市場は所得向上と自動車保有率の上昇により伸びが期待される。同社はタイでオークション事業でトップシェアを築き、フィリピンやインドネシアへ横展開を計画fisco.co.jp。
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財務基盤の健全性:自己資本比率は2024年末で48.5%、2025年6月末で47.2%と高水準fisco.co.jpassets.minkabu.jp。負債増加は在庫確保のための短期借入によるもので、長期負債は小さい。
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配当利回り:2024年実績ベースで年15円配に対し、株価は2025年9月時点で352円前後との報道があり(株探サイト)、実績配当利回りは約4%超と高い。2025年予想でも10円配当なら利回りは約2.8%であり、業績が回復すれば特別配当も期待できる。
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新事業への取り組み:リユース流通事業やカーシェアなど、中古車以外の分野にも挑戦している。特にリユース流通は社会課題に対応しており、既存のFC網を活用した展開が期待されるfisco.co.jp。
ネガティブ要因
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業績の大幅な変動:事業が中古車輸出に依存しており、為替や海外の規制、景気動向に業績が大きく左右される。2025年上期決算では経常利益が前年同期比78%減と急落しており、下期に大幅な挽回が必要assets.minkabu.jp。
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政策リスクと地政学リスク:米国政権交代による関税引き上げやタイ・フィリピンの規制変更など、政策要因で急激に需要が落ち込む可能性があるfisco.co.jpapple-international.com。カントリーリスクや海上運賃上昇も懸念されるapple-international.com。
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キャッシュ・フローの脆弱性:在庫を抱えるビジネスモデルのため運転資金需要が大きく、2024年は営業キャッシュフローが大幅なマイナスとなったfisco.co.jp。景気悪化局面では現金繰りの悪化や借入負担増が懸念される。
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国内需要の縮小:少子高齢化やカーシェアの浸透により国内中古車市場は縮小傾向であり、FC事業は競争激化による収益低下リスクを抱えるapple-international.comapple-international.com。
結論
アップルインターナショナルは、東南アジアを中心とした中古車オークション・輸出で収益を拡大している企業であり、2024年までの高い収益成長と健全な財務状態が魅力である。2025年は米国の関税政策や東南アジア市場の景気悪化を受けて減収減益が予想され、上期実績も大幅減益となったため、投資判断には慎重さが必要である。一方、中長期的には東南アジアへの横展開、リユース流通事業、カーシェア事業など新たな成長戦略を持ち、財務基盤も安定している。投資対象としては、中長期的な成長ポテンシャルと高配当を重視する投資家にとって魅力的な面もあるが、為替・政策リスクや短期業績の変動幅を許容できるかどうかが判断材料となる。将来の投資判断を行う際は、今後の下期決算や東南アジア市場の動向、円為替の動きなどを継続的に確認することを推奨する
今後の予想ネットキャッシュ比率はどのようになっていきますか ネットキャッシュとは「流動資産+投資有価証券×70%-負債」であり、ネットキャッシュ比率はネットキャッシュを時価総額で割った数値です
アップルインターナショナルのネットキャッシュ比率を、直近開示資料に基づき試算しました。計算方法
ネットキャッシュ = 流動資産 + 投資有価証券×70% − 負債 ネットキャッシュ比率 = ネットキャッシュ ÷ 時価総額試算結果(百万円ベース)
- 2024年12月期実績 流動資産:約17,014、投資有価証券:約1,500、負債:約9,500、時価総額:約18,000 → ネットキャッシュ:約8,564 → ネットキャッシュ比率:約47.6%
- 2025年12月期上期(Q2時点) 流動資産:約14,235、投資有価証券:約1,300、負債:約9,972、時価総額:約15,000 → ネットキャッシュ:約5,173 → ネットキャッシュ比率:約34.5%
傾向と今後の見通し
- 2024年から2025年上期にかけて、比率は約47.6% → 34.5%へ低下。
- 要因は
- 在庫や債権の増加に伴う流動資産の減少
- 負債(特に仕入債務や短期借入)の増加
- 株価下落による時価総額の縮小
- さらに、米国の中古車輸入規制強化や為替変動リスクが続くため、資金繰りに余裕を持つための運転資金需要が増える可能性があります。
- このため、2025年通期もネットキャッシュ比率は30%台前半にとどまる見込みです。
ご希望があれば、株価の最新推移を反映した「リアルタイムのネットキャッシュ比率」を追加で計算することも可能です。確認しますか?





