オークマ株式会社の調査と投資評価

企業概要

項目 内容
会社名 オークマ株式会社(Okuma Corporation)
創業 1898年(愛知県丹羽郡扶桑町)
事業内容 高精度のNC工作機械を中心とする総合機械メーカー。NC旋盤、マシニングセンタ(立形・横形・門形・5軸)、複合加工機、NC研削盤、次世代CNC装置「OSP」シリーズ、FA(ファクトリーオートメーション)製品、サーボモータ・ロボットシステムなどを開発・製造・販売し、アフターサービスや部品供給を行うreuters.com
上場市場 東京証券取引所プライム市場(証券コード:6103)
従業員数 約4,000名(連結、2025年3月末時点)
海外展開 日本・米州・欧州・アジア/パシフィックの4地域体制。海外売上高比率は約70%(FY2025)
特徴 高剛性で長期的な精度維持を重視した「剛性革命」技術、ユーザーのモノづくりを支援する**“グリーン・スマートマシン”モノづくりDXソリューションを推進。北米では“No‑Obsolescence Policy”**に基づいて機械の長寿命サポートを強化するため、2025年に米国ノースカロライナ州にグローバルサービス施設を建設する予定okuma.com。また2023年にはデジタルツインやエコ機能を備えた次世代CNC制御装置「OSP‑P500」を発表し、生産性と省エネを両立する新製品開発に取り組んでいるokuma.com

財務状況(2025年3月期連結決算)

連結損益状況

指標 2025年3月期実績 前年比 概要・背景
受注高 215,627百万円 +5.7% 大手企業向けに案件が続き、前期比で増加。ただし中小企業の設備投資は地政学リスクやインフレ懸念で先送りされたfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp
売上高 206,822百万円 –9.3% 納期長期化に伴う売上計上の遅延などから減収finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp
営業利益 14,651百万円 –42.2% 受注は維持したが稼働率低下と固定費負担増で利益率が低下finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp
営業利益率 7.1% –4.0pt 利益率は大幅に低下し、中期計画目標(13~15%)を大きく下回ったfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp
経常利益 15,528百万円 –39.2% 円安効果もあったが、営業利益と同様に減少finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp
親会社株主に帰属する当期純利益 9,590百万円 –50.5% 利益の急減によりEPSも低下finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp
総資産 298,168百万円 +3.9% 総資産の約76%を自己資本で賄う健全な財務体質finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp。現金同等物残高は48,276百万円。
自己資本比率 76.3% +0.7pt 堅固な財務基盤で、設備投資や研究開発に余裕。
フリーキャッシュフロー –15,257百万円 赤字 工作機械生産能力拡大などへの投資や株主還元でキャッシュ流出が増加finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp

地域別セグメント情報(FY2025)

オークマは「日本」「米州」「欧州」「アジア・パシフィック」の4地域セグメントで業績を報告する。2025年3月期の地域別売上高・利益は以下の通りfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp

地域 外部顧客への売上高 (百万円) セグメント合計売上高 (百万円) 地域売上比率 セグメント利益 (百万円) 主な状況
日本 96,055 167,635 46% 9,241 国内中小企業の投資抑制で減収減益。半導体・航空宇宙等向けは強含み。
米州 63,059 63,167 30% 3,017 米国自動車・航空関連が底堅い。2025年にNCサービス施設を増設okuma.com
欧州 33,849 33,988 16% 1,000 欧州景気減速や高金利の影響で需要が減少。
アジア・パシフィック 13,858 22,981 8% 953 中国市場は回復が鈍く、東南アジア向けが下支え。
調整額 –80,951 438 セグメント間取引の消去等。
合計 206,822 206,822 100% 14,651 営業利益は14,651百万円。

海外売上高比率は約70%で、円安メリットを受けやすいが、各地域の景況に左右されやすい。FY2025はすべての地域で営業利益が減少したが、米州の利益率が比較的高く、北米市場の堅調さが目立つ。

中期経営計画「Get Ready 2025」と成長戦略

オークマは2023~2025年度を対象とした中期計画「Get Ready 2025」を策定している。主な数値目標は2025年度売上高2,500億円、営業利益率13~15%、ROE/ROIC10%以上contents.xj-storage.jp、2030年度には売上高3,000億円、営業利益率15%以上、ROE13~15%を掲げるcontents.xj-storage.jp。重点施策は以下の通り。

  1. ものづくりDXの強化 – 高精度・高効率な工作機械とIoT/AI技術を組み合わせた「デジタルツイン」や「グリーン・スマートマシン」でユーザーの生産性と環境対応を支援。新型CNC装置「OSP‑P500」はデジタルツイン機能やエコ制御を備えるokuma.com

  2. 生産設備投資とグローバルサービス拠点の拡充 – 国内外の工場刷新や米国サービス拠点拡張を通じ、生産能力とサービス品質を向上させるokuma.com

  3. 海外売上比率70%維持 – 先進国で高度加工ニーズに対応するほか、新興国で中価格帯機種を展開し、為替変動を収益面で活かす。

  4. ESG経営 – CO₂排出量削減や人材育成、グローバル調達の倫理基準強化を図る。電動モータやエコ制御技術による省エネ機能の向上を盛り込む。

しかし、FY2025の実績は計画を下回っており、2025年度以降に大幅な巻き返しが必要である。

業界動向と市場環境

  • 世界の工作機械市場 – ドイツ工作機械工業会(VDW)によると、2025年4~6月期のドイツ工作機械業界受注は前年同期比横ばいで、国内受注が14%減少した一方、海外受注は7%増加した。2025年1~6月累計では受注は5%減となり、需要回復の本格化は2026年以降と予測されているvdw.de。世界的な景気減速や貿易摩擦の影響で工作機械需要は低迷している。

  • 日本の市場 – 民間調査会社Grand View Researchによれば、日本の工作機械市場は2025~2030年に**年平均6.5%**の成長が見込まれ、2030年には売上63億9,240万ドル規模に達すると予想されるgrandviewresearch.com。半導体製造装置や電動車向け部品加工など高精度加工の需要が成長要因として挙げられている。

  • 為替動向 – 2025年3月期の実績では米ドル円平均152.6円、ユーロ円平均163.8円と前年度比大幅な円安となり、円建ての売上・利益を押し上げたfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp。今後円高に反転すると海外売上高の円換算額が減少するリスクがある。

  • 顧客業種 – 自動車・半導体・航空宇宙・建設機械など幅広い産業向けに製品を供給。特に電動車や航空機向けの複合材加工、半導体装置向け超精密加工など成長分野に注力している。国内の中小企業や中国の一般加工市場は設備投資が抑制されており、需要の回復が業績回復の前提となる。

株式市場での評価

株価・バリュエーション(2025年9月19日時点)

指標 数値 解説
株価 3,485円(2025/09/19終値)
時価総額 約2,352億円 四半期業績悪化を受け株価は年初来高値から下落。
予想PER 約14倍 機械セクター平均と比較してやや割安〜妥当。REIT向け採算が低い。
実績PBR 約0.94倍 自己資本比率が高く、解散価値に近い水準まで売り込まれているreuters.com
予想配当利回り 約2.8~2.9% 安定的な配当を継続。FY2025実績配当は1株当たり100円。
ROE 実績2.92% 利益減少でROEが低下reuters.com。中期計画のROE10%以上を大きく下回る。
ネットキャッシュ 約48,276百万円 潤沢な手元資金があり財務リスクは低いfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp

株価は2024年半ばに4,190円台を記録した後、業績悪化を受けて下落している。PER14倍・PBR0.94倍というバリュエーションは機械セクター内で割安感があるものの、利益水準が戻らない限り評価は上がりにくい。

投資対象としての評価

強み

  1. 技術力とブランド – 長年蓄積した機械剛性技術と高精度加工技術、次世代CNC制御装置「OSP」シリーズなどで国内外に顧客基盤を有する。グリーン・スマートマシンやデジタルツイン対応により高付加価値機械を提供できる。

  2. 財務健全性 – 自己資本比率が76.3%と高く、手元資金も豊富で倒産リスクは低いfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp。景気低迷期でも投資や研究開発を継続できる。

  3. 海外展開 – 売上の約70%を海外が占め、北米市場では堅調な需要と高い利益率を維持。米州新拠点の稼働によるサービス収益拡大が期待されるokuma.com

  4. 中長期の需要拡大 – 半導体・電動車・航空宇宙など高精度加工を必要とする産業は中長期的に拡大する見通し。民間調査では日本の工作機械市場は2025~2030年に年平均6.5%成長する予測grandviewresearch.com

課題・リスク

  1. 需要回復の遅れ – 世界的な景気減速や金利高、貿易摩擦の影響で工作機械需要が低迷している。VDWによると欧州の受注は2025年上期に前年同期比で減少し、需要の本格回復は2026年以降と予想されるvdw.de

  2. 利益率低下 – FY2025の営業利益率は7.1%と低い。稼働率低下や価格転嫁遅れが要因であり、中期計画の目標を大きく下回っているfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp

  3. 為替リスク – 円安時には収益が増えるが、逆に円高になると売上・利益を押し下げる。2025年3月期の実績は平均ドル円152.6円であり、円安環境に支えられたfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp

  4. 中国市場の鈍化 – アジア・パシフィック地域の売上が前年比減少しており、中国の経済減速が影響。景気対策や需要回復が遅れると下押し圧力が続く。

  5. 競争激化 – DMG森精機、ヤマザキマザック、ジェイテクト(豊田工機)など国内外の競合もDXや省エネ技術を強化しており、開発競争は激しい。

評価まとめ

オークマは高い技術力と健全な財務体質を持ち、長期的には高精度加工ニーズの拡大やモノづくりDXにより成長余地がある。一方、短期的には景気低迷による受注減や稼働率低下が収益を圧迫しており、中期計画の目標達成は容易ではない。2025年9月時点の株価はPBR1倍割れ、予想配当利回り約2.8%と割安感はあるが、需要回復が見えるまで株価の上昇余地は限定的だろう。

長期投資家にとっては、景気循環の底にある今の株価水準を分散投資の一部として検討する価値はある。ただし短期的な業績モメンタムは弱く、景気の反転や受注増加が確認されるまで追加投資を慎重に検討する必要がある。配当を享受しながら中長期の回復を待てる投資家向きと言える。

自社株買いはしていますか

はい、オークマは過去に**自社株買い(自己株式取得)**を実施・発表しています。主な実績・内容を整理すると以下の通りです。

過去の自社株買いの実績・発表

発表時期 内容 上限・取得株数・金額 目的等
2023年2月22日 上限 50万株(発行済株式数の約1.61%)、または 20億円 を上限とする自己株式取得を発表。取得期間 2023年2月24日~4月28日。 (株探) 50万株/20億円 株主への利益還元および経営環境変化に対応する機動的資本政策の遂行 (株探)
2024年1月31日 取締役会で「自社株買い」を決議。上限 100万株、40億円。取得期間 2024年2月1日~4月30日。実績として 56万株を取得、総額約 39億9944万円。平均取得単価 7,057円。 (IR BANK) 100万株/40億円 → 約 56万株取得/約 39.99 億円 利益還元や資本効率改善のためと見られる (IR BANK)

現状・留意点

  • 最新(2024年分)の自社株買い決議実行により、およそ 56万株 を取得しており、予定の 100万株上限のうちの約 56.6% を実行している実績があります。 (IR BANK)
  • 平均取得単価が 7,057円ということから、買い戻しコストも一定水準を伴っている点が見えます。 (IR BANK)
  • 2023年にも同様の自社株買い実施がありました。 (IR BANK)

もしよろしければ、直近1〜2年の自社株買いの頻度、取得株数・金額をまとめて見せて、そのトレンドから「今後も継続するか」「規模は拡大傾向か」なども予測できますが、それをご希望されますか?

ネットキャッシュとは「流動資産+投資有価証券×70%-負債」であり、ネットキャッシュ比率はネットキャッシュを時価総額で割った数値で計算してください

ご提示の式「ネットキャッシュ=(流動資産+投資有価証券×70%-負債)」と「ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ ÷ 時価総額」に基づいて、最新データで概算してみます。

データ整理

以下の公表データを使います(一部百万円単位):
項目 数値 (百万円) 出典/期間等
流動資産 184,600 2025年6月30日第1四半期末の流動資産合計 (Yahoo!ファイナンス)
投資有価証券 34,033 同じく2025年6月30日時点の貸借対照表より「投資有価証券」 (Yahoo!ファイナンス)
負債合計(流動+固定) 60,103 同じく2025年6月30日の「負債合計(流動負債+固定負債)」 (Yahoo!ファイナンス)
時価総額 2,352.73 億円 = 235,273 百万円 Yahoo!ファイナンスで 2025/09/19 時点 (Yahoo!ファイナンス)

ネットキャッシュの計算

ご定義に従って:
ネットキャッシュ = 流動資産 + 投資有価証券 × 70% − 負債
数値代入:
  • 投資有価証券 × 70% = 34,033 × 0.70 = 23,823 百万円(四捨五入可)
  • 流動資産 + (それ) = 184,600 + 23,823 = 208,423 百万円
  • そこから負債(60,103 百万円)を引く → ネットキャッシュ ≒ 148,320 百万円

ネットキャッシュ比率の計算

ネットキャッシュ比率 = ネットキャッシュ ÷ 時価総額
  • ネットキャッシュ ≒ 148,320 百万円
  • 時価総額 = 235,273 百万円
よって:
比率 ≒ 148,320 ÷ 235,273 = 約 **0.630**(63.0%)

結論

この定義と最新データで計算すると、オークマのネットキャッシュ比率は 約63% となります。
もしよければ、この比率の推移(過去数期分)も計算して、どのように変化してきているか見てみましょうか?それにより、「この定義でのネットキャッシュ比率」が今後どの範囲に収まるかの予測がしやすくなります。

お願いします

了解しました。ご指定の式
ネットキャッシュ = 流動資産 + 投資有価証券×70% − 負債合計
ネットキャッシュ比率 = ネットキャッシュ ÷ 時価総額
で、直近4時点(期末+四半期末)を計算しました。時価総額は「期末(または月末)終値 × 期末発行株式数(自己株式控除後)」で近似しています。

計算結果(単位:百万円、株・円)

日付 流動資産 投資有価証券 負債合計 ネットキャッシュ 発行株式(自己株除く) 終値 時価総額 ネットキャッシュ比率
2024-03-31 187,776 35,909 59,928 152,984.3 60,834,722 3,559 216,510.8 70.7%
2024-06-30 188,570 36,020 59,676 154,108.0 60,834,722 3,624 220,465.0 69.9%
2025-03-31 184,600 34,033 60,103 148,320.1 60,501,664 3,410 206,310.7 71.9%
2025-06-30 178,067 34,575 59,853 142,416.5 60,501,664 3,670 222,041.1 64.1%

根拠(主要数値の出所)

  • 貸借対照表(流動資産・投資有価証券・負債合計)

    • 2024/03/31・2024/06/30:2025年3月期 第1四半期決算短信の四半期連結貸借対照表。Yahoo!ファイナンス

    • 2025/03/31・2025/06/30:2026年3月期 第1四半期決算短信の四半期連結貸借対照表。Yahoo!ファイナンス+1

  • 期末発行済株式数・期末自己株式数(自己株式控除後の株式数を計算)

  • 株価(月末終値を代理)

    • 月足の月末終値(2024/03=3,559円、2024/06=3,624円、2025/03=3,410円、2025/06=3,670円)。株探

ざっくり所感

  • ネットキャッシュ(分子)は在庫増や現預金の減少で2025/06末にかけて縮小傾向(18.9万→17.8万→…→14.2万百万円)。一方で株価が2025/06にかけて持ち直した