承知しました!成人の複視に関する治療およびリハビリテーションについて、最新の研究(特に過去5年以内)を対象に論文を調査し、まとめます。

しばらくお待ちください。完了次第、要点をわかりやすく整理してお伝えします。

成人複視の治療・リハビリの最新動向

成人の複視(二重視)は主に眼筋の斜視や神経障害などが原因であり、その治療・リハビリには多様な方法がある。近年の研究ではプリズム眼鏡やボツリヌス療法、手術療法だけでなく、視覚訓練(オルソプティクス)や仮想現実(VR)を活用した新しいリハビリテーション法も注目されている。本稿では過去5年程度の論文を中心に、成人複視の最新治療法・リハビリテーション法の動向をまとめる。

プリズム眼鏡

ボツリヌス療法

  • 概要: ボツリヌス毒素注射は眼筋の収縮を弱め、斜視の角度を一時的に矯正する非外科的手段である。手術の代替として小〜中等度斜視に適応される。
  • 効果例・エビデンス: 近年のCochraneレビュー(2023年)では、ボツリヌス注射と斜視手術を比較した4件のRCT(計242例)の結果が報告されている。その結果、短期的には手術が斜視矯正に優れる傾向を示したが、6か月以上のフォローでは結論は不明瞭であった ( Botulinum toxin for the treatment of strabismus – PMC )。ボツリヌス注射群では16–37%に一過性の眼瞼下垂、5–18%に縦ずれ(上転・下転偏倚)が観察された ( Botulinum toxin for the treatment of strabismus – PMC )。一方、ボツリヌス群は再手術の割合が高いが、この点の証拠は不確かとされている ( Botulinum toxin for the treatment of strabismus – PMC )。
  • 限界・適応: 効果の持続期間は数か月程度であり、角度が再び戻れば再注射が必要となる。大きな斜視角や長年放置された斜視(慢性麻痺性斜視)では効果が限定的で、手術や他の治療を検討する場合が多い。副作用として一過性の眼瞼下垂や異常頭位が起こる可能性がある。ボツリヌス療法は短期的な複視緩和手段としては有効だが、長期的な両眼視の獲得には手術療法が優先される場合が多い ( Botulinum toxin for the treatment of strabismus – PMC )。
  • 応用例: 一部の斜視手術では、術中にボツリヌス毒素を併用し拮抗筋の収縮を一時的に緩和する工夫が報告されている ( Delhi Journal of Ophthalmology )。また、眼内病変の存在する場合や明らかな原因がない複視においても、ボツリヌス注射が対症療法として試みられることがある。

外科(斜視)療法

薬物療法

遮蔽療法(眼帯・視野遮蔽)

  • 概要: プリズムや訓練では対応しきれない重度の複視では、一時的に片眼を遮蔽して症状を緩和する。眼帯、遮光眼鏡、レンズのすりガラス化などが用いられる。
  • 使用法: 通常は視機能の弱い方の眼を遮蔽する。若年者では遮蔽による弱視(アイシヨス)発症を防ぐため、左右を交替で遮蔽することもある ( Management of diplopia – PMC )。
  • 適応・注意点: 虚血性神経麻痺で自然治癒を待つ間や、一時的に目を休める必要がある場合に有効 ( Management of diplopia – PMC )。ただし遮蔽は片眼視になるため両眼視機能が失われるデメリットが大きい。可能な限り短期間の使用にとどめ、患者の生活への影響(運転、作業の可否)を検討する必要がある。

リハビリテーション・新しいアプローチ

効果・限界・適応のまとめ

  • プリズム眼鏡: 比較的小角度の斜視や不完全な麻痺性斜視で高い効果が得られる(87%で複視消失 ( Prisms in the treatment of diplopia with strabismus of various etiologies – PMC ))。しかし大角度・複合斜視や回旋成分のある複視にはプリズムの度数が過度になり使いにくい。プリズムを使えない症例では遮蔽や手術へ移行する。
  • ボツリヌス療法: 手術と異なり組織損傷が少なく繰り返し可能だが、効果は一時的である。即効性があり麻痺筋の伸張抑制に有効な一方、半年以上の長期維持には向かない。副作用として短期的な眼瞼下垂や立体視障害が起こる。医学的には小〜中度斜視や、手術困難例(基礎疾患、手術リスク等)での選択肢となる。
  • 手術療法: 最も確実に矯正効果が期待できるが、予測誤差により過矯正や新規複視のリスクが伴う。適応は大角度斜視や複視持続例で、患者の両眼視機能(融像能力)も考慮する。術後の新生複視発生率は低く、むしろQOLや顔貌改善効果が大きい ( Diplopia after strabismus surgery for adults with nondiplopic childhood-onset strabismus – PMC )。高齢者でも手術により複視解消例が報告されており、体力許容範囲であれば年齢だけで否定はされなくなっている。
  • 薬物療法: 原因疾患によるが、直接的に複視を治癒させる薬は乏しい。疾患特異的治療の進歩(例:TEDでのテプロツマブ、MGでの新しい免疫療法など)は複視改善につながる。対症的にはステロイド、免疫抑制剤、抗コリン剤などが使われる。薬物療法単独での複視解消は限定的で、他の治療と組み合わせて用いる。
  • 遮蔽療法: 簡便だが基本的に一時的対処法で、両眼視機能は得られない。就学前・学童期の患者には弱視誘発に注意する。成人でも運転・読書など機能低下が生じるため、最終手段的に用いられる。

注目トピックと今後の方向性

近年はデジタル技術と遠隔医療の応用が注目されている。VR/AR装置を使った眼筋訓練プログラムや、スマホ・タブレットで行うホームビジョントレーニングの開発が進む。AIによる斜視評価や、患者自身の複視評価を簡易化するツールも研究中である。また、眼筋や神経の再生・可塑性に着目した研究や、新たな分子標的薬(例:眼瞼下垂や外眼筋線維化への介入薬)の開発も今後の方向性として挙げられる。COVID-19以降、リモート診療の拡大に伴い、テレ検査・テレリハビリのエビデンス構築も急務である。患者個々の病態に応じた個別化治療と、QOL改善に焦点を当てた包括的アプローチが今後ますます重視されるだろう。

参考文献・重要論文例

以上、近年の研究成果を参考に成人複視に対する多角的アプローチ(薬物・光学・外科・訓練)とその限界・適応を整理した。患者の病態と希望を考慮し、最適な治療・リハビリプランを組み立てることが重要である。