解答
伝達関数
閉ループ特性方程式は
より
展開すると
希望する極は
なので目標特性多項式は
係数は全体の定数倍まで同一であれば同じ根を持つので,
(2)式から
(1)式から
両式を等置して
したがって
正解:②
参考:
技術士第一次試験-令和2年度機械部門Ⅲ-11解答例 | 技術士のたまご
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問題はどういう意味ですか?
問題文の意味・意図をかみ砕いて説明します。
1. 状況(ブロック線図)
図のフィードバック制御系は「単純な 1 つのループ(単一フィードバック)」です。
- 制御対象(プラント) : 伝達関数
- 制御装置(コントローラ) : 未知の 1 次(比例 + 微分的形)
- 入力
と出力
があり,出力がマイナスで戻ってきて誤差信号を作る「単位負帰還」構成です。
2. 何をしろと言っているか(設計課題)
このループを閉じたとき(フィードバックをかけたとき)の
閉ループ系の極(= 特性方程式の根) を,指定された 2 つの値
に
来るように コントローラ係数
を選びなさい,という「極配置 (pole placement)」問題です。
3. なぜ極を指定するのか
閉ループ極は,時間応答(減衰速度・振動性など)と安定性を決める基本要素です。
- 両方とも負の実数なので,安定(時間とともに応答が収束する)になります。
- どの位置に置くかを設計者が決めることで,応答速度やオーバーシュートなどを調整できます。
ここでは既に目標極が与えられているので,あなたはその極を実現する
を求めるだけです。
4. 特性方程式とは
単位負帰還では閉ループ伝達関数の分母(特性方程式)は
で与えられる多項式です。これを展開すると
を含む 2 次多項式が得られます。その根が閉ループ極です。
5. 実際に何を計算するか
-
を展開して係数を
で表す。
- 目標極
と
をもつ 2 次多項式
を用意。
- 「自分が得た多項式の係数」と「目標多項式の係数」を(スカラー倍の可能性も考慮して)一致させて連立方程式をつくり,
を解く。
- 選択肢の中から一致する組を選ぶ。
6. 選択肢
問題は計算で出た組と一致するものを ①〜⑤ の中から選べ,と言っています。
(前の回答で示した通り,結果は
で
②。)
まとめ(問題の意味を一言で)
「与えられたプラント
に対し,1 次のコントローラ
の係数を選んで,閉ループ極を指定位置
と
に配置せよ。その候補として挙がっている 5 組の中から正しいものを選びなさい。」
これが問題の意味です。
さらに不明な言葉(極、特性方程式、極配置など)があれば続けて聞いてください。
問題文で与えられている特性方程式はどういう意味ですか?
「特性方程式
」が何を意味し、どう出てくるかを段階的に説明します。
1. どこから出てくる式か(単位負帰還系)
ブロック線図は
単位負帰還:
よって
整理すると
従って
閉ループ伝達関数(入力
から出力
)
この分母
が系の
特性多項式(characteristic polynomial) を与え、その「=0」とおいた方程式
が
特性方程式(characteristic equation) です。
2. 何を表しているか(極=固有値)
閉ループ伝達関数の
極 (poles) は分母を 0 にする
の値です。
極は時間応答
の指数部分に対応し、
- 実部 < 0 なら減衰
- 実部 > 0 なら発散
- 実部 = 0 なら持続振動(純虚数)
したがって
「1+K(s)G(s)=0 の解」=「閉ループ系の極」=「閉ループ系の安定性と応答速度を決める値」 です。
3. なぜ「特性」と呼ぶか
線形時不変 (LTI) 系の内部ダイナミクスは、状態方程式で書けば
の
行列
の固有値が時間挙動を決めます。
伝達関数表現ではその固有値集合が分母多項式の根になります。
行列での特性方程式
が、ブロック線図を介してまとめると
の形に等価になるため、こちらも「特性方程式」と呼びます。
4. ここでの具体的な形
与えられた
を代入すると
この 2 次多項式が閉ループ特性多項式。これを望む形(目標極の多項式)に一致させるのが極配置設計です。
5. まとめ(意味を一言で)
「特性方程式
とは、閉ループ制御系の極(= 安定性と応答を決める固有値)を与える方程式で、その解がどこに来るかを調整するためにコントローラ
のパラメータを選ぶ基礎となる式」 です。
さらに深掘り(状態空間との対応、根軌跡、ナイキストなど)も必要なら続けて聞いてください。
分母が極で0になるように設計すると、その極では数値が安定するのですか?
良い質問です。少し混乱しやすいところなので、丁寧に整理します。
1. 「分母=0 になる点」=極 (pole)
閉ループ伝達関数
の
分母が 0 になる
が「極」です。解析的にはそこでは
が
無限大(発散) になります。
つまり
「分母を 0 に“して”安定にする」 のではなく、
分母が 0 になる点(極)の複素平面上での位置によって時間応答の安定 / 不安定が決まる ということです。
2. 極と時間応答の関係
時間領域のインパルス応答は極に対応した項の和になります:
ここで
が極。
-
なら
は
で 0 に収束(安定)。
-
なら振幅一定(臨界・保守的)。
-
なら指数的に発散(不安定)。
安定とは「極が左半平面にあること」(連続時間の場合)であって、「分母=0 の値で“数値が安定する”」わけではありません。
3. “分母が 0” の直感的意味
ラプラス変換の逆変換を行うとき、分母多項式の根(極)から部分分数分解で
の形が出てきます。
したがって
極の位置を設計する=出てくる指数項の減衰速度や振動周波数を設計する ことです。
4. なぜ「分母=0 に“なるように”選ぶ」のか
設計では「望ましい応答」を仮定し、その応答に対応する極(例えば決まった減衰速度)を決めます。
→ その極をもつように
分母多項式の係数(= コントローラパラメータ)を調整 します。
こうして得られた閉ループ分母が、指定した根(極)を持つ=「極を配置した」という意味です。
5. もし極を右半平面に置いたら
分母のある根が
など正の実部を持つと、応答に
が含まれて発散し、出力は無限大に向かう(理想数学上)ので
不安定。
だから「極がどこにあるか」が決定的なのです。
6. よくある誤解のまとめ
| 誤解 |
実際 |
| 分母=0 で『安定点』になる |
その点は伝達関数が無限大。時間応答のモード(指数項)を決める“パラメータ”であり、安定点ではない |
| 分母を 0 に設定する操作が安定化 |
分母(特性多項式)の根の位置を左半平面へ移すよう係数を選ぶのが安定化 |
| 極は計算だけの抽象概念 |
極 = 実際の過渡応答の減衰速度/振動数を表現する指数項の指数 |
7. さらに一歩:ゼロ (zero) との違い
伝達関数の
零点 (zero) は分子が 0 になる点。零点は応答の特定周波数成分を打ち消したり、位相特性を変えたりするが、
安定性(発散/収束)を直接決めるのは極。
(零点が右半平面にあると非最小位相で内部的な制約が増える、などは発展話題。)
8. 一言でまとめ
「分母が 0 になる“極”の位置が、系の安定性と過渡応答を決める。極そのものは“安定点”ではなく、そこに対応する指数モードが時間応答に現れる。だから設計では極を左半平面に配置して減衰させる。」
もっと例や数値シミュレーションで確認したい場合は言ってください。Python で簡単な応答比較もできます。どうしますか?
分母が極で0になるように設計するのは何を狙っているのですか?
「分母が極で 0 になるように“設計する”」=
閉ループ分母(特性多項式)の根=極を目標位置に“置く”こと(極配置) であり、狙いは
閉ループ応答の性質を思い通りに整える ことです。具体的には下記の性能指標・性質を同時に(トレードオフを意識しながら)狙っています。
1. 安定化
- 極(= 分母多項式の根)が右半平面にあると発散。左半平面に入れれば指数減衰して安定。
- まず最優先:不安定な開ループ極を左に押し込む(安定化)。
2. 応答速度(速さ)
- 極の実部がより負(例: -5 )→
で速く収束。
- 目標とする立上り時間 / 整定時間から “必要な実部” を逆算し、その位置に極を置く。
3. 減衰特性・オーバーシュート
- 共役複素極
の 減衰比
と 固有角周波数
がオーバーシュート、振動回数、減衰速度を決定。
- 指定の過渡仕様(例:オーバーシュート < 10%, 2%整定時間 < 2 s)を極位置に変換し、配置。
4. 定常偏差(間接的効果)
- 定常偏差そのものはタイプ数(原点極の数)で決まるが、極配置でレスポンス形状を決めながら、必要なら積分器を追加して原点極を導入するなど 必要な型 (system type) を確保。
5. 外乱・雑音に対する感度
- 分母(= 特性多項式)は感度関数
の形を左右する。
- 低周波で極を十分左へ移す(ゲインを稼ぐ)→ 外乱抑制改善。
- 逆に極をあまり左へ移し過ぎると高周波ゲイン増 → センサ雑音や未モデルダイナミクスを増幅(= ロバスト性低下)。
6. 制御入力(操作量)負担とのトレードオフ
- 速さを求め極を左に寄せると、一般に必要ゲインが増加し操作量が大きくなる → 飽和 / エネルギー / アクチュエータ摩耗のリスク。
- 所望の性能 vs. 現実的な制御エネルギー のバランスを極の位置で調整。
7. ロバスト性(不確かさへの余裕)
- 極が安定境界(虚軸)から十分距離をとると、モデル誤差やパラメータ変動に対する余裕(安定余裕)が増える。
- ただし非常に左に置く=高帯域化は未モデル高次モードや遅れの影響を拾いロバスト性を逆に損ねることがある。
8. 周波数領域仕様との対応
- 極位置はボード線図の折れ点、位相遅れ、ゲイン交差周波数に影響。
- 「帯域をどこまで拡げるか」「位相余裕・ゲイン余裕をどれくらい確保するか」を意識し極(と必要なら零点)を配置。
9. モードの形状(状態空間解釈)
- 分母は閉ループ行列
の固有多項式。
- 極配置は 可制御なモードの固有値を再設計し、不要な遅い / 不安定モードを消す・速くする 行為。
10. 実装次元の制約・可制御性
- 望む極をすべて自由に置けるのは「プラントがその極に関する可制御性 (controllability) を満たす」場合のみ。
- コントローラ次数が足りなければ指定全ては達成できない(そこで補助としてオブザーバ、状態フィードバック、積分器追加などを検討)。
まとめ(狙いを一文で)
閉ループ分母(特性多項式)の根=極を意図した位置に“持たせる”ことで、安定性・速応性・減衰・外乱/雑音感度・操作量・ロバスト性のバランスを設計することが狙い です。
さらに直感的なたとえ
- 系の各極は “バネで引っ張られた質量” の減衰付き振動モードに相当。
- 極を左に動かす=減衰を強めて速く落ち着くようバネ/ダンパを調整する。
- しかし強くし過ぎると摩擦熱(操作量)や機械的限界(アクチュエータ飽和)が問題になる。
補足してほしい観点は?
もし「数式から時間仕様算出の具体例」「オーバーシュート 10% なら極はどこ?」など、もう一歩具体的な換算例が欲しければ指示ください。
どう続けますか?「例を見たい」「他の設計法との違い」「零点の役割」など、知りたい方向を教えてください。
オーバーシュート 10% なら極はどこ?
以下,「標準 2 次系」を前提に
最大オーバーシュート
が 10%(=0.10) になる極位置の求め方と結果を整理します。
(※ 与えられた系が近似的に 2 次優勢(他極は十分左)であることが前提。)
1. 標準 2 次系と極
標準形:
極:
2. オーバーシュートと減衰比の関係
ステップ応答の最大オーバーシュート(%表示):
(%で 10% なら
)
これを 0.10 に等置して
を解く:
両辺 2 乗:
結論:オーバーシュート 10% に対応する減衰比は
.
(よく使う目安:
,
,
)
3. 極の幾何学的比率
(
)
したがって
実部 : 虚部 = 0.59 : 0.807 ≈ 1 : 1.37。
あるいは虚部/実部比(減衰比の幾何学的表現):
(※ 電気で言う Q ≈
= 0.85 とは定義が違うことに注意)
4. 具体的な極座標表現
自然角周波数
をまだ決めていないので,
オーバーシュート 10% という情報だけでは “方向” しか決まりません。
極は原点からの距離
でスケールします。極の角度
は:
(虚軸との角度で言えば
)
極は負実軸から約 54° の方向線上(あるいは虚軸から 36°)に並び,原点からの距離(=
)を未確定に残した集合:
5.
を決めるには追加仕様が必要
例えば 2% 整定時間
(2% 基準)を指定すると
例:整定時間 2 s を目標なら
→ 極は
6. まとめ
| 指定 |
得られる量 |
|
|
|
| 極の方向 |
負実軸から約
|
| 極の比率 |
|
| 追加で
等を与える |
と具体的な極座標値が確定 |
さらに知りたい?
- 別の
のときの早見表
- 実際のステップ応答波形比較(数値例)
- 非 2 次系(高次系)での扱い
などあれば続けてどうぞ。どれを見たいですか?