白黒写真1枚から、ここまで立体になりました
結論から言うと、150年前の白黒写真1枚だけでも、飾っておけるレベルの立体になりました。使ったのは画像から3Dモデルを作る生成AI「Meshy AI」と、家庭用の3Dプリンターです。
普段はNC旋盤やフライス盤などの工作機械を扱っています。切削の世界では「図面がないものは作れない」のが常識です。ところが生成AIを使うと、図面どころか立体の情報すらない写真から形が出てきます。その実力を試す題材として、誰もが知る幕末・明治の古写真を選びました。
使った道具と手順
作業は「写真を用意する→AIで立体にする→データを整える→印刷する」の4段階だけです。モデリングの知識はほとんど要りません。
| 道具 | 用途 |
|---|---|
| Meshy AI(Premiumプラン) | 写真から3Dモデルを生成(Image to 3D) |
| Bambu Lab P2S Combo / A1 mini Combo | FDM方式の3Dプリンター。AMSで多色印刷も可能 |
| Bambu Studio | スライサー(印刷用データ作成、簡単な修復) |
| PLAフィラメント | 造形材料 |
- 写真を用意する:なるべく高解像度のものを使います。検索結果の小さなサムネイルだと、顔や服の情報が足りません。
- MeshyのImage to 3Dに入れる:写真をアップロードすると、数分で立体モデルが返ってきます。
- データを整える:生成直後のデータは数百万ポリゴンと重いので、軽量化して浮いた破片を削除します。
- スライスして印刷する:細い部分に合わせて大きさや積層ピッチを決めます。
Meshyの生成データはサーバー上の保存期間が短いため、気に入ったものはすぐにダウンロードするのがおすすめです。色情報も残すなら3MF形式が便利です。
作例1:岩倉使節団(5人のジオラマ)
集合写真を丸ごと入れたところ、椅子や机まで含めた5人のジオラマが出てきました。元にしたのは、1872年にサンフランシスコで撮影された有名な1枚です。右大臣の岩倉具視を中央に、木戸孝允、山口尚芳、伊藤博文、大久保利通が並んでいます。


驚いたのは、写真に写っていない「裏側」まで作られていたことです。椅子の背もたれや人物の後ろ姿が自然に補われ、どの角度から見ても置物として成り立ちます。
- 岩倉だけが和装と髷、ほかの4人が洋装という対比が、そのまま立体になっている
- 中央の机に置かれたシルクハットも再現されている
- 生成されたデータは幅76×奥行45×高さ50mm、約275万ポリゴン(138MB)
ただしこのままでは重すぎるので、40万ポリゴン(20MB)まで軽量化しました。この大きさでは、見た目の差はほぼ出ません。あわせて、本体から離れて浮いていた小さな破片61個も削除しています。
作例2:坂本龍馬(立像)
懐に手を入れた、あの有名なポーズのまま立体になりました。元にしたのは、幕末に長崎の上野彦馬の写場で撮られたと伝わる立ち姿の写真です。


- 髷の乱れ、袖の家紋、引き結んだ口元まで雰囲気が出ている
- 袴のひだや帯の結び目も形になっている
- 写真は膝上までしか写っていないのに、足元まで補って全身像にしてくれた
- 生成されたデータは幅17×奥行11.5×高さ50mm、約105万ポリゴン
ただし、足の裏だけで立つ形なので、そのままでは印刷中に倒れやすくなります。Bambu Studio上で直径20~25mmほどの円形台座を足すと安定します。台座に「坂本龍馬」と刻むと、置物らしさも増します。
龍馬の3Dデータをダウンロードできます
今回生成した龍馬のデータを公開します。Bambu Studioでそのまま開ける3MF形式で、黒とグレーの2色に塗り分け済みで、高さ75mm(生成時の1.5倍)に拡大してあります(約105万ポリゴン)。
Meshy_AI_Ryoma.zip をダウンロード(zip・約18MB)
印刷設定はBambu Lab X1 Carbon・0.4mmノズル用で保存されています。ほかの機種で印刷する場合は、プリンターの設定を切り替えてからスライスしてください。
古写真を使うときの権利まわり
今回の2枚は、写真の著作権もMeshyで生成したデータの扱いも、ブログでの紹介に問題はありません。ただし、同じことを試すなら次の3点は押さえておきましょう。
- 元の写真:どちらも150年以上前の撮影で、著作権はすでに切れています。ただし博物館や画像サイトが公開している複写画像には、独自の利用条件が付いていることがあります。Wikimedia Commonsなどのパブリックドメイン版を使い、出典を書いておくと安心です。
- Meshyで作ったデータ:有料プラン(Pro・Premium・Studio)で作ったデータは、利用者のものになります。無料プランではCC BY 4.0ライセンスとなり、商用利用できますがMeshyのクレジット表記が求められます(Meshyの料金ページ)。
- 生成の元にする素材:上の扱いは、他人の著作物を侵害していないことが前提です。アニメキャラや現代の写真家の作品を入れるのは避けましょう。
なお、本記事のモデルはすべてMeshy AIで生成したものです。
うまくいかなかったことと対策
いちばんの壁は、AIの生成よりも「小さく印刷すると細部が残らないこと」でした。
| つまずき | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 生成結果が崩れる | 元画像が検索サムネイル(236×186px)で解像度不足 | 高解像度の元画像を使う |
| 椅子や机の脚が欠ける | 幅76mmでは脚が0.4mmノズルに対して細すぎる | 1.5倍に拡大、または0.2mmノズル+積層0.08~0.12mm |
| サポートを外すときに脚が折れる | 椅子の下にサポートが入り込む | ツリー型サポートをビルドプレートからのみにする |
| 立像が印刷中に倒れる | 足の裏だけで接地している | 円形の台座を足す |
単色・2色・スミ入れを比べる
白黒写真が元なので、フルカラーよりも「色数を絞る」ほうが古写真の味が出ます。
- 単色(白・グレー):細部の多い岩倉使節団に向く。ブロンズ像のような落ち着いた仕上がり
- 2色(黒と白):龍馬に向く。黒い着物と白い袴・家紋で、写真そのままの印象になる
- 白で印刷してスミ入れ:ひだや顔の陰影が浮き出て、いちばん古写真らしくなる
まとめ
古写真1枚と生成AIがあれば、教科書の偉人を手のひらに乗せられます。モデリングの手間はほぼゼロで、人が考えるべきは「どの大きさでどう印刷するか」というものづくりの部分でした。
次は誰を立体にしてみましょうか。作ってほしい人物がいれば、ぜひコメントで教えてください。
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