生成AIと3Dプリンターを組み合わせた、ものづくり教室を実施しました。
今回の教室では、AIを活用して絵から3Dモデルを生成し、そのデータを3Dプリンターで実際の立体物にする体験を行いました。
生成AIの進歩によって、これまで専門的なCAD操作が必要だった3Dモデルの作成も、ずいぶん身近になっています。
一方で、実際に教室を運営してみると、事前には気づかなかった課題も見えてきました。
今回は、その体験と気づき、今後の改善点をまとめます。
1. 今回の3Dプリンター教室の概要
今回の教室は、以下の条件で実施しました。
- 参加者:10人
- 使用した3Dプリンター:2台
- 造形した作品:5個
- 1個あたりの造形時間:約40分
- 使用した3Dモデル生成AI:Meshy AI
基本的な流れは、絵をもとにAIで3Dモデルを作成し、そのモデルを3Dプリンターで造形するというものです。
従来の3D CADでは、立体形状を作るために一定の操作技術が必要でした。しかし、Meshy AIのような画像から3Dモデルを生成できるサービスを利用すれば、CADを操作できなくても、立体的な作品づくりに挑戦できます。
この点は、子どもたちが参加するものづくり教室との相性がよいと感じました。
2. Meshy AIの複数PC利用が課題に
最初に直面したのは、AIサービスのアカウント運用でした。
今回使用したMeshy AIでは、同じアカウントを複数のPCで同時に利用しようとしたところ、うまくいきませんでした。
教室では複数の参加者が並行して作業するため、同時に利用できる端末数は重要です。
個人でAIサービスを利用する場合と、複数人を対象に教室を実施する場合では、求められる環境が異なることを実感しました。
今後は、参加者がそれぞれ画像を準備し、3Dモデルの生成だけを講師用PCに集約する方法も考えられます。
また、複数人が同時利用できる契約や運用方法についても、事前に確認しておく必要があります。
3. AIが得意な形状と苦手な形状がある
今回、3Dモデルを生成してみて興味深かったのが、モチーフによって生成品質に違いがあったことです。
例えば、カメのような一般的な生き物では、比較的きれいな3Dモデルが生成されました。
一方で、人の顔のような形状では、元の絵の特徴を十分に再現できていないように感じました。
この違いには、AIが学習している形状の特徴や、画像から立体形状を推測する難しさが関係しているのではないかと考えています。
カメであれば、甲羅、頭、足といった共通した特徴があり、多少形状が変化してもカメとして認識できます。
しかし、人の顔では目や鼻、口の位置、輪郭などの微妙な違いが、その絵らしさにつながります。
AIが一般的な顔としては自然な形状を生成できても、元の絵にある独特な特徴が失われてしまうことがあります。
ただし、これもAIを学ぶうえでは面白い題材です。
「どうしてAIはこの形にしたのか?」
「元の絵とどこが違うのか?」
こうした疑問から、AIが得意なことと苦手なことを考える機会にもなります。
4. 最大のボトルネックは3Dプリンターの造形時間
今回の教室で最も大きな課題だと感じたのが、3Dプリンターの造形時間です。
AIを使えば、3Dモデルの作成に必要な作業を大幅に省力化できます。しかし、3Dプリンターで実際に造形するには、どうしても一定の時間が必要です。
今回は2台の3Dプリンターを持ち込み、5個の作品を造形しました。
1個あたりの造形時間は約40分です。
2台を同時に使用できる場合、計算上は次のようになります。
| 造形回数 | 1台目 | 2台目 |
|---|---|---|
| 1回目(0〜40分) | 作品1 | 作品2 |
| 2回目(40〜80分) | 作品3 | 作品4 |
| 3回目(80〜120分) | 作品5 | — |
理想的な条件でも、5個の作品を完成させるには約120分が必要です。
実際には、モデルの確認、スライス、プリンターの準備、完成品の取り外しなども必要になります。
つまり、AIがどれだけ短時間で3Dモデルを作れるようになっても、造形に必要な物理的な時間は残ります。
デジタル上でのものづくりが高速化したことで、今度は現実世界での製造工程がボトルネックになっているのです。
これは今回の体験で最も印象に残った点でした。
5. 造形待ち時間をどのように活用するか
次回の教室で改善したいのが、造形を待っている時間の使い方です。
3Dプリンターの台数を増やせば、造形できる作品数も増やせます。しかし、設備の準備や運搬、管理の負担も大きくなります。
そこで、単純にプリンターを増やすだけでなく、待ち時間そのものを学習や体験の時間にできないかと考えています。
例えば、次のような活動です。
① 3Dプリンターの仕組みを観察する
ノズルから樹脂が押し出され、少しずつ立体物ができていく様子は、それ自体が面白いものです。
積層の仕組みや、サポート材が必要になる理由などを説明すれば、待ち時間を技術について学ぶ時間にできます。
② 完成済みの3Dプリント部品を組み立てる
あらかじめ3Dプリンターで製作した歯車や可動部品、パズルなどを用意し、それらを組み立てる体験も考えられます。
実際に部品を触り、組み立てて動かすことで、3Dプリンターが単に置物を作る道具ではなく、機械部品や機構の製作にも利用できることを知ってもらえます。
③ AIで作ったモデルを比較・改良する
最初のモデルが完成したら、指示を変えて別のモデルを作り、形状を比較することもできます。
例えば、「カメを作る」という指示に対して、「甲羅を大きくする」「足を短くする」といった条件を加えることで、AIの生成結果がどのように変化するのかを確かめられます。
これなら、作品の造形を待ちながら、生成AIの使い方について学習できます。
6. 子どもたちは意外とタイピングができる
もう一つ、今回の教室で印象に残ったことがあります。
当初、子どもたちがAIに指示を出す際には、音声入力を利用することを考えていました。
文字を入力するよりも、話しかけたほうが簡単ではないかと思っていたためです。
しかし、実際にはタイピングができる子どもも思っていたより多く、音声入力を必須にする必要性はそれほど高くないように感じました。
もちろん、参加者の年齢や経験によって入力方法の向き不向きは異なります。
今後は、文字入力と音声入力のどちらにも対応できるようにし、参加者が使いやすい方法を選べるようにするのがよさそうです。
また、AIへの指示を自分で考えて入力すること自体も、学習の一つになると感じました。
7. 次回に向けて改善したいこと
今回の経験を踏まえ、次回は次のような改善を検討しています。
まず、造形時間の短縮です。
今回の約40分から、できれば15〜20分程度で造形できるサイズや形状に調整できないか試したいと考えています。
例えば、5個の作品がすべて20分で造形できれば、2台のプリンターで最短60分まで短縮できます。
ただし、作品を小さくしすぎると細部が再現できなくなるため、造形品質とのバランスも重要です。
次に、造形と他の活動を並行させることです。
全員がモデルを作り終わってから造形を開始するのではなく、完成したモデルから順次造形することで、プリンターの待機時間を減らせます。
さらに、造形中には別のものづくり体験を実施するなど、参加者が長時間待つだけにならない教室を目指したいと思います。
最後に、AIサービスの運用方法の改善です。
複数の参加者が効率的にAIを利用できる環境を整えることも、教室運営では重要になります。
8. まとめ:AIがものづくりを簡単にした先にある課題
今回の3Dプリンター教室では、生成AIを活用することで、従来よりも簡単に立体的な作品を作れることを実感しました。
一方で、実際に運営してみると、次のような課題も見えてきました。
- 複数人でAIサービスを利用するための環境整備
- 元の絵の特徴をどこまで3Dモデルに再現できるか
- 3Dプリンターの造形時間
- 造形待ち時間の有効活用
- 参加者に合わせたAIの入力方法
中でも、最も大きかったのは造形時間の問題です。
従来は、3Dモデルを作る技術や時間がものづくりの大きなハードルでした。
しかし、生成AIによってモデル作成が容易になると、今度は製造工程の時間や設備の能力が重要になります。
これは、今後AIが製造業に広く導入されていく中でも、共通する課題なのかもしれません。
AIによって「設計すること」のハードルが下がったからこそ、「実際に作ること」の価値や課題が、これまで以上にはっきり見えてくる。
今回の教室は、そんな変化を実感できる機会となりました。
今後も、生成AIと3Dプリンターを組み合わせたものづくりについて、実際に試しながら改善を続けていきたいと思います。

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