Fusion(Fusion 360)の MCP × Claude で、散らかったアセンブリとフォルダを半日で整理した実録

Fusion の MCP サーバーに Claude をつなぎ、クラウド上に散らかっていた実験装置のアセンブリを、会話だけで約半日かけて整理しました。フォルダ分けだけのつもりが、共有メンバーに部品が見えていなかった原因まで見つかりました。

対象は、ガラスの切削と穴あけに使う小型の実験装置です。結果を先に書きます。

  • 3つのプロジェクトに散らばっていた約90ファイル(部品と図面)を、1つのプロジェクトの5フォルダに集約した
  • アセンブリを「共通ベース」と「切削構成」「穴あけ構成」に分け、共通部分を直せば両方に反映される形にした
  • 他プロジェクトへの参照をゼロにした(カメラと支柱まわりの4部品が該当)
  • 元のアセンブリは一切壊さず、旧版として残した

自分で手作業していたら、参照関係を追うだけで何日かかかったと思います。この記事では、進め方と、うまくいった点・つまずいた点をそのまま書きます。

目次

この記事でわかること

  • Fusion の MCP サーバーで、クラウド上のフォルダやアセンブリをどこまで操作できるか
  • 「共通ベース + 用途別の構成」にアセンブリを分け直す手順
  • 共有メンバーに部品が見えなくなる原因(他プロジェクトへの参照)と直し方
  • AI に CAD データを触らせるときに、安全に進めるための段取り

使った環境

使ったのは、Autodesk Fusion に入っている MCP サーバーと、Claude のデスクトップアプリです。追加のアドインは入れていません。

  • Fusion 側:基本設定の「API」にある「Fusion MCP Server」にチェックを入れ、適用を押して有効にする。初期設定ではオフ
  • Claude 側:デスクトップアプリから、同じ PC で動いている Fusion に接続する
  • 注意:MCP サーバーは自分の PC の中だけで動くので、Fusion を起動したままにしておく必要がある

操作対象は Fusion のクラウドデータ(データパネルのプロジェクトとフォルダ)です。PC 内の普通のフォルダは対象外です。

整理前の状態

同じ装置の部品が、3つのプロジェクトにほぼ丸ごとコピーされていました。派生を作るたびにプロジェクトごと複製していたためです。

プロジェクト 中身
設計検討用 案①〜③の検討履歴。約200ファイル
切削装置(メンバーに共有中) 現行の部品と組立図。フォルダ分けなしで84ファイル
スピンドル検討用 穴あけ用の組立図と、既存部品のコピー約70ファイル

困っていたのは次の3点です。

  • どのファイルが最新なのか、自分でも即答できない
  • 切削用と穴あけ用で組立図が別ファイルになっていて、共通部分を直すと2か所の修正が要る
  • 切削用の組立図は、タイムラインを途中まで巻き戻した状態で保存してあった

最初の質問は「Fusion の MCP でフォルダの整理はできますか」というだけのものでした。

やったこと

方針は「共通部分を1つのデザインにして、用途別のアセンブリからリンクで参照する」です。これは Claude からの提案で、フォルダ分けもこの構成に合わせて決めました。

Fusion の MCP サーバーには「フォルダ整理」という機能はありません。ツールは4つだけで、実際の作業は「Fusion API の Python スクリプトを実行する」ツールを通して行われます。Claude がスクリプトを書いて流し、結果を読んで次の手を決める、の繰り返しでした。

流れは次のとおりです。

  1. 現状の読み取り:プロジェクト一覧、ファイル一覧、アセンブリのツリーとタイムラインを読み取り専用で取得
  2. 線引きの相談:どこまでを共通にするかを、部品の一覧を見ながら決める
  3. 共通ベースの作成:既存の組立図を別名保存し、構成別の部品を削除(33部品、ジョイント32個が残る)
  4. 参照先の修正:他プロジェクトを参照していた部品を、同じプロジェクト内のファイルに付け替え
  5. 構成アセンブリの作成:新規デザインに共通ベースをリンク挿入し、切削用・穴あけ用の部品を元と同じ位置に組み付け
  6. フォルダ分け:ファイルを5つのフォルダに移動し、移動後に参照切れがないかを確認
  7. 旧プロジェクトの後始末:名前に「【旧】」を付け、新しい側に無いファイルがないか差分を確認

最終的なフォルダは次の形です。

フォルダ 中身
01_共通ベース 共通アセンブリ、自作部品と図面、複数の構成で使う部品
02_切削構成 切削用アセンブリと、刃物まわりの専用部品
03_穴あけ構成 穴あけ用アセンブリと、スピンドルまわりの専用部品
04_購入品 ステージ、動力計、カメラ、ナット類
90_旧版 元の組立図と、使わなくなった部品

将来別のステージを使う構成が増えても、共通ベースを挿入したアセンブリを1つ足すだけで済みます。

自分では気づいていなかったこと

今回いちばん価値があったのは、整理そのものより、調べる過程で出てきた指摘でした。4つ紹介します。

共有メンバーに見えていない部品があった

共有しているプロジェクトの組立図の中で、カメラと支柱まわり3部品が、共有していない別プロジェクトのファイルを参照していました。自分の画面では普通に見えるので、まったく気づいていませんでした。

「共有範囲はどこまでですか」と聞いたとき、Claude は「メンバー情報は API から読めない」と断ったうえで、参照先のプロジェクトが違う部品を洗い出してきました。わからないことをわからないと言い、調べられる範囲で答えを出す、という動きです。

同じ名前なのに形が違う部品があった

支柱の3部品は、参照先を付け替える前に形状を比べたところ、新旧で体積と面の数が違いました。片方にだけ追加工が入っていたわけです。Claude はここで作業を止め、どちらが実機の形かを聞いてきました。黙って付け替えられていたら、図面とアセンブリが食い違ったままになるところでした。

「共通」のつもりの範囲に、共通でない部品があった

自分は「タイムラインのここまでが共通」と思っていましたが、その範囲の中で、動力計の取付板と材料の固定板が切削用と穴あけ用で別物でした。取付板は外形が 137×90 と 107×80 で、穴の数も違います。数字を並べた表を見て、小さいほうに統一すると決めました。

図面が付いているファイルと、使っているファイルが別だった

同じ名前・同じ形の部品が2つあり、アセンブリが使っているのは図面の付いていないほう、という組み合わせが4件ありました。形状が同一であることを確認したうえで、図面付きのほうに付け替えています。

うまくいかなかったこと

一発で通ったわけではありません。途中で何度かおかしな状態になり、そのたびに Claude が自分で気づいて直していました。これから試す人の参考になりそうなものを挙げます。

起きたこと 原因 対処
日本語のファイル名で検索しても何もヒットしない スクリプト内の日本語が送信時に文字化けしていた 文字を Unicode エスケープで書くか、ファイル ID で指定する
カメラの参照先を変えたらレンズだけ床に落ちた レンズの位置は親アセンブリ側で動かしたもので、付け替えで初期位置に戻った 元のアセンブリから座標を読み、同じ位置に戻す
ジョイントを付けたらステージが原点に戻った 子部品を個別に動かしても保持されない 最上位のコンポーネントごと動かしてからジョイントを作る
動力計が元より90°回っていた 取付板を統一した結果、切削側で向きが変わった どちらの向きにするかを人が決める
平面ジョイントを5か所中1か所戻せなかった 部品が傾いて付いていて、接する平面がなかった そこだけ剛性ジョイントのままにする

レンズの件は、画面のスクリーンショットを撮って見比べたことで見つかりました。数値のチェックだけでは「エラーなし」と出ていたので、見た目の確認を挟んでいたのが効いた形です。

また、MCP ではできなかったこともあります。プロジェクトのメンバー一覧は API から読めないので、共有範囲は Web 画面で自分で確認しました。

人が決めたこと、AI に任せたこと

作業の手はほぼすべて AI が動かしましたが、設計上の判断はすべて自分がしています。分担は次のようになりました。

自分が決めたこと AI がやったこと
どこまでを共通にするか 部品とジョイントの依存関係を調べて、線引き案を出す
取付板をどちらに統一するか 2枚の外形と穴の数を比べて表にする
支柱はどちらの版が実機か 新旧の体積・面数の違いを見つけて作業を止める
動力計の向き 向きが90°違うことを報告する
判断のつかないファイルの行き先 どこからも参照されていないファイルを一覧にする
ファイルの削除 削除はせず、旧版フォルダに集める

安心して任せられた理由は、進め方にあります。

  • まず読み取りだけで調べる。 最初の1時間ほどは何も変更せず、現状の把握と提案だけでした。
  • 保存の前に確認を取る。 新しいファイルを作る、共有メンバーに見える変更をする、といった節目で必ず聞かれました。
  • 元のファイルは触らない。 新しいアセンブリは別名保存と新規作成で作り、元の組立図は保存せずに閉じています。
  • 変更のたびに照合する。 部品の座標を元と数値で比べ、タイムラインのエラーを確認し、スクリーンショットも見る、の3点セットでした。
  • 形が違うものは勝手に入れ替えない。 同名ファイルは形状を比べ、同一なら付け替え、違っていればこちらの判断を待つ、という動きでした。

まとめ

CAD データの整理は、AI に手を動かしてもらい、人が設計判断だけをする形で十分に回りました。質問から完了まで、実作業は約5時間です。

効いたのは「速さ」より「調べ漏れの少なさ」でした。参照先のプロジェクト、新旧の形状の違い、図面と部品の紐づきは、人が1ファイルずつ開いて確かめるには数が多すぎます。そこを全件チェックしてくれたことで、気づいていなかった問題が表に出ました。

これから試す人へ、経験から言えることを挙げます。

  • 最初に「何をしたいか」を目的で伝える。 「フォルダを分けたい」ではなく「共通部分をベースに派生を作りたい」と伝えたことで、構成そのものの提案が出ました。
  • 実機を知っているのは自分だけ。 どちらの版が正しいか、どちらの向きで付けているかは、モデルからはわかりません。聞かれたら現物を見て答えます。
  • 削除は最後に自分でやる。 不要に見えるファイルは旧版フォルダに集め、しばらく使ってから消すのが安全です。
  • 共有しているデータなら、メンバーへの連絡を忘れない。 プロジェクト名やフォルダが変わるので、案内メールの文面も一緒に作ってもらいました。

将来、別のステージを使う構成が必要になったら、同じやり方で追加するつもりです。


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