今回、ChatGPTでもMidjourneyでもなく、Anthropic Claude × Autodesk Fusion 360(MCP連携) で植木鉢スタンドを設計するという、今までにない体験をしたので記録しておきます。
結論から言うと、「こういうのが欲しい」と日本語で言うだけで、Fusion 360の中に実際の3Dモデルが組み上がっていくという、SFみたいな体験でした。設計初心者にとっては福音、熟練者にとっては「アイデアを高速で形にする」武器になりそうです。
やったこと:7号鉢用のボロノイ風スタンドと、Drosera用の腰水トレイを設計
きっかけは単純で、「7号サイズの植木鉢が置ける、かっこいいスタンドを考えて」とClaudeに投げたことでした。返ってきたのは4つのデザイン方向性。インダストリアル系、ミニマルなカンチレバー、ボロノイ風、旋盤削り出し風。
私が選んだのは「ボロノイ風 × 3Dプリント」。理由は、自分の食虫植物用カスタム鉢(露珠・湿原・繊毛シリーズ)と世界観が揃うから。
そこから先は対話の連続でした:
- 「Fusionで作って」→ Pythonスクリプトを生成
- 「MCPでFusionに直接アクセスして製作して」→ Claudeが直接Fusionを動かす
- 「底プレートはいらない?」「鉢が中に入る設計にしてほしい」→ その場で再設計
- 「結合してフィレットかけて」→ そのまま仕上げ作業
そして最終的に、**「露珠(ROSHU)の鉢に合う腰水トレイ一体型スタンド」**まで完成。これは私の自作鉢シリーズの一つで、Droseraの粘液腺の「露の珠」をモチーフにしたものです。
Fusion MCPとは何か:Claudeが3D CADを直接操作する仕組み
MCP(Model Context Protocol)は、AIアシスタントと外部アプリケーションをつなぐためのAnthropic主導のプロトコルです。Fusion 360は2024年からこのMCPに対応していて、Claudeから直接Fusionの中でPythonスクリプトを実行したり、現在のモデルを画像で取得したりできます。
仕組みとしては:
- Fusion 360内でMCPサーバ(ローカルポート27182)が動く
- Claude Desktopアプリがそのサーバに接続
- Claudeが「このスクリプトを実行して」「現在の画面のスクリーンショットを撮って」と命令
- Fusionが実行して結果を返す
私が「鉢を中に入れたい」と言うと、Claudeが「了解、では既存モデルをクリアして新仕様で組み直します」と判断し、その場でクリアスクリプトを実行→新設計スクリプトを実行→スクリーンショット取得→「こんな感じになりました、確認してください」と画像を見せてくれる。人間の設計者にFusionを使ってもらっている感覚に近いです。
設計プロセス:対話で詰まっていく仕様
第1段階:方向性の選択
最初の私の要望は「7号サイズの植木鉢が置けるかっこいいスタンド」だけ。曖昧そのものです。Claudeは4つの方向性を提示してくれました。
- インダストリアル系:黒皮鉄フレーム × 真鍮アクセント
- ミニマル系:片持ち(カンチレバー)構造
- 立体格子系:3Dプリント × ボロノイ構造
- 旋盤主役:ターニング・ペデスタル
特に旋盤主役の提案では「これは完全にコマ製作の延長線上で、Mercari/コンテンツ素材になります」とまで踏み込んでくれていて、私の活動を踏まえた提案になっているのが印象的でした。
第2段階:詳細仕様の対話
「ボロノイ風」を選んだ後、Claudeは3つの質問をしてきました:
- 全体高さは?(350 / 400 / 450mm)
- 格子のスタイルは?(ボロノイ風 / 六角ハニカム / 斜め格子)
- 鉢受け部の形状は?(リング / 底支え / 両方)
CADを直接操作する前に、設計意図を先に固める。これは熟練設計者の進め方そのものです。
第3段階:実装と試行錯誤
最初の試みはPythonスクリプトを生成して、手動でFusionに読み込ませるやり方でした。これは確実に動きますが、フィードバックループが遅い。
そこで「MCPで直接やって」とお願いしたところ、Claudeが直接Fusionに接続して作業を始めました。ただ、ここで一度Fusionが落ちました。原因は「パイプ機能を12本連続で実行する処理が重すぎた」こと。Claudeはすぐに次の手を打ってきました:
「パイプ機能をやめて、もっと軽量な方法に切り替えます:
- 主柱(垂直):エクストルード(円を上方向に押し出すだけ)→ 軽い
- 斜め枝:TemporaryBRepManagerでプリミティブ円柱を直接生成→回転→ボディ追加」
つまりFusion APIの内部仕様を理解した上で、最適な実装手法を選び直してくれる。これは下手なエンジニアより的確な対応です。
完成したモノ:2種類のスタンド
7号鉢用ボロノイ風スタンド
- 全体高さ:150mm
- 外径:280mm
- 上部リング内径:φ190mm(鉢のテーパー中腹を抱える)
- 底支えディスク:φ240 × t10mm
- 主柱:8本 × φ8mm(樽型に内向き傾斜)
- ボロノイ枝:40本 × φ5mm
- 全体結合 + リング部にR1.5mmフィレット仕上げ
低重心の樽型シルエットに、不規則な斜め枝が絡む有機的な構造。トラス橋のような構造美があり、Mercariや作品紹介で映える見た目です。
露珠(ROSHU)専用 腰水スタンド
- 全体高さ:50mm
- 外径:φ120mm
- トレイ内径:φ100mm × 深さ30mm
- 鉢受け部:φ55、深さ3mm(鉢の底径φ50をガイド)
- 露珠装飾:R4mm × 12個(リム周囲)
- 腰水容量:約170ml
こちらはDrosera管理に直結する実用品。鉢底のφ50が中央のφ55凹みにスッと収まり、外周のリングが腰水を保持する構造。さらに鉢のリム上にある12個の露珠と、スタンドの12個の露珠が上下対応するよう設計しました。シリーズもの感が出ます。
何が画期的なのか
これまで3D CADというのは、マウスとキーボードで一つひとつ操作するものでした。プロでも1日かかる作業が、対話だと数十分で進む。
しかも、設計の途中で「やっぱり違うな」と思ったら、その場で「鉢が中に入る設計に変えて」と言えば、Claudeが現状を理解した上で再設計してくれる。仕様変更のコストがほぼゼロになります。
これは町工場のDXでも同じことが言えます。「客先から似たような図面が来るが、毎回パラメータが違うので作り直し」というケース。今までは設計者の工数が大きなボトルネックでしたが、AI × MCPの組み合わせがあれば、営業がそのまま「対話で見積図」を作れる時代がすぐ来そうです。
つまづきポイントと学び
MCPの接続問題
最初、何度試してもFusion MCPに接続できませんでした。設定上は完璧なのに「Tool execution failed」が出続ける。原因はClaude Desktopアプリの内部接続セッションが古くなっていて、Desktopを完全終了→再起動で復活しました。
netstat -ano | findstr :27182 でローカルポートが応答しているか確認するのが切り分けに有効でした。
Fusion API の癖
- ルートコンポーネントの名前は変更不可(
root component name cannot be changed) - 大量のパイプ機能はFusion本体を落とすほど重い → プリミティブ生成系API(TemporaryBRepManager)が軽量
- フィレットの一括適用は鋭角コーナーで失敗しやすい → エッジを種類別(Circle3D / Line3D / Arc3D / NurbsCurve3D)に分けて段階的に適用
これらの「実装上の罠」はFusion APIドキュメントを読んでもなかなか分からない部分です。Claudeはエラーメッセージを見て即座に代替案を出してきました。
仕様の言語化が一番難しい
実は一番難しかったのは、自分が何を作りたいかを言葉で表現することでした。「かっこいいスタンド」だけだと、Claudeは4つの方向性を出してきます。「ボロノイ風」と決めても、「鉢が中に入るのか、上に乗るのか」「底プレートは必要か」と、決めるべきことが次々出てきます。
逆に言えば、Claudeとの対話自体が設計レビューの代わりになっています。一人で設計していたら見落としていた論点が、対話の中で自然に浮上してくる。
副業との接続:このスタンドはMercariで売れるか
私の場合、これは単なる遊びではなく、副業ラインの拡張です。
現状の露珠(ROSHU)鉢:Mercariで単品販売中
今回追加できるもの:
- 露珠専用腰水スタンド(単品 3,500〜4,500円)
- 露珠 × スタンドセット(6,500〜8,000円)
- Drosera capensis 苗 × 露珠 × スタンドのフルセット(8,000〜10,000円)
ボロノイ風スタンド:
- 7号鉢を購入する層 = 比較的こだわりの強い植物愛好家
- 「3Dプリント独自設計」という付加価値で 4,000〜6,000円のレンジを狙えそう
材料費はPETG 1kgで 4,000〜5,500円、印刷時間は7〜10時間程度。電気代込みでも一個あたりの原価は1,000円前後です。
次に試したいこと
バリエーション生成の自動化
ボロノイ風のスタンドは random.seed を変えるだけで別パターンが生成できます。「シリーズで30種類作って、全部違う模様」というMercariの差別化戦略が成立しそうです。これは一人の設計者では到底できなかった発想です。
鉢シリーズ全体のスタンド統一展開
露珠だけでなく、湿原(SHITSUGEN)・繊毛(SENMOU)の各シリーズに合わせたスタンドも対話で作れます。「露珠と同じ構造で、表面パターンを湿原モチーフ(苔の質感)に変えて」と言えば、すぐ別バリエーションが組めるはずです。
YouTubeコンテンツ化
「副業の宮殿」のYouTubeチャンネルで、AI × 3D CAD × 副業展開の実例として動画化したい。タイムラプス的にClaudeとの対話画面を流し、3Dプリンタで実物が出来上がるところまで見せれば、AI時代の物作りのリアルが伝わる教材になります。
まとめ:AIは設計者の代替ではなく、設計の民主化
今回の体験を通じて感じたのは、AIが設計者を奪うとかそういう話ではなく、設計という行為そのものへのアクセスコストが激減したということです。
CADの操作を覚えるのに数十時間かかります。それが「対話できればOK」なら、これまで設計に手を出せなかった人たちが、自分のアイデアを形にできるようになります。





