https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjspe/2020A/0/2020A_139/_pdf

タイトル(英語と日本語)
Visualization of Stress Distribution under Ultrasonic Vibration Cutting (6th. report)
超音波振動切削における被削材内部応力分布の可視化(第六報)

ジャーナル名と出版年
2020年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集, 2020年

第一著者と最終著者
Masataka OKUDA, Hiromi ISOBE

第一所属
Nagaoka University of Technology

概要
本研究では、超音波振動切削における被削材内部の応力分布を可視化する技術を開発しました。特に、切れ刃の運動方向に着目して二次元切削加工を観察し、応力分布の変動と切削力の関係を分析しました。パルスレーザを光源とする偏光高速度カメラを用いて、超音波振動中の応力変動を高精度で撮影しました。その結果、切れ刃の運動方向により、切削力の低減効果が確認されました。

背景
超音波振動切削は、工具または被削材に超音波振動を付与して行う加工法で、表面粗さの向上や工具摩耗の低減といった特性改善が期待されます。しかし、一般的な工具動力計では、切削力の微小変動を測定することが難しく、応力分布の可視化が重要です。

方法
光弾性法を用いて、パルスレーザ光源と偏光カメラにより、切削時の応力分布を高速度で撮影しました。超音波振動の1周期を仮想的に連続した動画として記録することで、応力の時間変動を解析しました。

結果
切れ刃の運動方向による切削力の変動が確認され、特に運動方向が+9.5°のとき、平均切削力が約46%低下することが分かりました。また、切れ刃が被削材から離脱する運動を行う場合、切削力が顕著に減少することが示されました。

議論
切れ刃の運動方向によって、切削力の低減効果が異なることが示され、加工条件の策定時には切れ刃の運動方向に留意する必要があることが明らかになりました。

先行研究との新規性
超音波振動切削中の被削材内部応力の可視化技術を用いて、切削力の詳細な変動を解析した点が新規です。特に、切れ刃の運動方向に着目した研究はこれまでに少なく、本研究はその効果を明確に示しました。

限界
実験は特定の振動条件下で行われたため、他の条件下での応力分布についてはさらなる研究が必要です。

応用可能性
この技術は、超音波振動切削の最適化や加工精度の向上に寄与し、産業界での応用が期待されます。

主応力差と複屈折によって生じた光の位相差の関係について教えてください

主応力差と複屈折によって生じた光の位相差の関係は、以下のように数式で表されます。

\[
\delta = \frac{2\pi t C}{\lambda} (\sigma_1 – \sigma_2)
\]

ここで、

– \(\delta\) は光の位相差
– \(t\) は光が透過する材料の厚さ
– \(C\) は材料固有の光弾性係数
– \(\lambda\) は使用する光の波長
– \(\sigma_1 – \sigma_2\) は主応力差(材料内の主応力の差)

この式は、**被削材に作用する主応力差**(\(\sigma_1 – \sigma_2\))と、**撮影される光の位相差**(\(\delta\))が比例関係にあることを示しています。つまり、材料内部に応力が生じると、その応力によって材料に複屈折性が現れ、この複屈折性が光の位相差として観察されます。

この関係を利用することで、光弾性法によって**材料内部の応力状態**を可視化し、解析することができます。

位相差はどのように計測しますか?

位相差は、光弾性法を用いて計測します。具体的な手順は以下の通りです。

1. 光源の選択と設置
偏光特性を持つ光源(例えばパルスレーザ)を使用します。レーザ光が材料に照射されることで、材料内部の応力が複屈折性を引き起こします。
2. 被削材の設置
測定対象である透明な被削材を光路に配置します。被削材は外力を受けている状態であり、その内部に応力が発生しています。
3. 偏光器と光弾性装置の配置
被削材の前後に偏光器を配置します。これにより、透過光が偏光され、複屈折によって光の位相差が発生します。
4. 位相差の撮影
偏光カメラを用いて、透過光の位相差を撮影します。カメラは複屈折による光の位相差を可視化し、撮影された画像から位相差の分布が解析されます。
5. 位相差の計算
撮影された画像を解析することで、位相差(

δ)を計算します。この位相差は、主応力差に対応しており、材料内部の応力状態を反映しています。
6. 位相差分布の解析
計算された位相差をもとに、材料内部の応力分布を解析します。応力分布は、被削材の加工条件や外力の影響を受けて変動し、この位相差分布を解析することで、加工中の材料内部の応力状態を詳細に理解できます。
このように、光弾性法と偏光カメラを用いることで、材料内部の応力状態を可視化し、位相差を計測することが可能です。

弾性体とはなんですか?

弾性体とは、外力が加わったときに変形し、その外力が取り除かれると元の形状に戻る性質を持つ物質のことです。この性質を弾性と呼び、弾性体はその特性を持つ物質です。

弾性体の特徴
変形と回復:弾性体は、外力(引っ張り、圧縮、曲げなど)が加わるとその力に応じて形状が変わりますが、その外力がなくなると元の形状に戻ります。たとえば、ゴムを引っ張ると伸びますが、引っ張る力を取り除くと元の長さに戻るのがその典型です。

フックの法則:弾性体は、フックの法則に従うことが多いです。これは、材料にかかる応力とその応力による変形(ひずみ)が比例関係にあることを示します。この関係は、弾性範囲内で成り立ちます。

弾性限界:弾性体には、一定の限界まで外力を加えると弾性を保ちますが、その限界を超えると永久的な変形が残るか、破壊されることがあります。この限界を弾性限界と呼びます。


ゴム:ゴムは典型的な弾性体であり、引っ張ったり押し縮めたりするときに弾性がよく観察されます。
金属:多くの金属も弾性体ですが、外力が限界を超えると塑性変形を起こし、元に戻らなくなります。
バネ:バネも弾性体の一例で、力を加えると伸びたり縮んだりし、力を取り除くと元に戻ります。
弾性体のこの性質は、機械工学や材料科学で重要な役割を果たし、構造物の設計や安全性の評価において不可欠です。

ビームエキスパンダはどのような効果がありますか?位相が変化したりはしませんか?

ビームエキスパンダは、レーザビームの直径を拡大するために使用される光学装置です。この装置は、光束の広がりやレーザの集束を制御するために利用され、以下のような効果があります。

ビームエキスパンダの効果
ビーム径の拡大:

ビームエキスパンダは、レーザビームの直径を拡大し、大きなエリアにレーザ光を照射することを可能にします。これにより、広い範囲を均一に照射できるようになります。
集光性能の向上:

ビームエキスパンダを使用することで、レーザビームの集光性能が向上し、焦点距離を調整する際により小さなスポットサイズを得ることが可能になります。これは、レーザ加工や精密測定において重要です。
レーザビームの発散角の制御:

ビームエキスパンダは、レーザビームの発散角(ビームが広がる角度)を制御する役割も果たします。発散角を小さくすることで、遠距離でもビームのスポットサイズを小さく保つことができ、精度の高い照射が可能です。
位相への影響
ビームエキスパンダは、ビームの直径や発散角を調整するだけであり、光の位相には直接的な変化を与えません。したがって、ビームエキスパンダを通過したレーザ光の位相は、装置を通過する前と同じ状態を保ちます。

ビームエキスパンダは、光学系全体の設計において重要な要素であり、光束の広がりや集束の制御に役立ちますが、位相そのものを変化させる装置ではないため、光の干渉パターンや位相差の計測には影響を与えません。