https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjspe/2017A/0/2017A_73/_pdf

タイトル(英語と日本語)
Development of integrated cutting information monitoring system
切削情報の統合モニタリング装置の開発

ジャーナル名と出版年
2017年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集, 2017年

第一著者と最終著者
Ichiro Ogura, Hiroyuki Sawada

第一所属
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)

概要
この研究では、工具のその場観察と加工情報の取得を組み合わせたシステムを「統合モニタリング装置」と呼び、これを加工情報収集の基礎デバイスとして確立することを目指しています。本報告では、統合モニタリング装置のコンセプトを提案し、動力計や高速度カメラを用いたフライス盤のデータ取得実験を実施しました。その結果、工具管理の効率化や最適な切削条件の迅速な発見の可能性が示されました。

背景
様々な工作機械での切削加工情報を収集する技術は、遠隔地での加工や加工現象の解明に向けたデータベースの構築を目的に、ますます重要性が増しています。切削時の加工情報には、切削力、振動、音響放出、温度、切削音などが含まれ、これらを工具と被削材の画像モニタリングと結びつけることが有効です。

方法
提案された統合モニタリング装置は、高速度カメラと切削動力計を組み合わせ、切削加工時の工具と試料の様子と、同時に取得された切削力データを同期させて収集しました。実験はアルミニウムのダウンカットを対象に行い、主軸回転速度1100rpm、ステージ送り速度50mm/min、切り込み深さ8mmで実施されました。

結果
実験では、工具のすくい面と切削力の関係が明確に捉えられ、切削力と切りくずの発生タイミングが一致することが確認されました。また、湿式切削モニタリング装置を用いることで、仮想停止状態の高速回転工具の観察が可能となりました。

議論
本研究は、画像情報と加工情報の同期取得により、切削加工時の工具管理や切削条件の最適化において有効なシステムの構築が可能であることを示しています。また、既存の装置を活用し、湿式切削環境でも適用できるモニタリング装置の有用性を示しました。

先行研究との新規性
従来の加工情報収集システムでは、切削力や振動のみのデータ取得が主でしたが、本研究では工具のその場観察を組み合わせることで、より詳細な加工情報の収集と解析が可能となりました。

限界
高速度カメラによるデータ取得周期は限られており、全ての刃の切削力を詳細に評価するためには、より高いサンプリングレートが必要です。

応用可能性
このシステムは、工具摩耗や最適切削条件の迅速な発見が可能であり、ネットワークを通じた遠隔加工や加工データベースの構築にも応用できます。

湿式切削中における工具の状態監視はどのように行っていますか?

湿式切削中における工具の状態監視は、以下の方法で行われています。

1. カメラの組み込み
切削液を供給するパイプの中にカメラを組み込み、切削液の噴流の中から加工点を観察する仕組みが導入されています。このカメラは、高速度カメラを使用しなくても、高速回転する工具の観察を可能にします。

2. 照明用ストロボの同期
照明用のストロボが工具の回転に同期して閃光することで、工具が仮想的に停止しているかのように見えるようにします。これにより、工具の定点観察が実現し、湿式切削中の状態監視が可能になります。

3. レーザマーカを用いた画像取り込み
加工情報との時間関連付けを行うために、外部から半導体レーザをエンドミルに照射します。レーザはTTL信号によってスイッチングされ、加工情報の取得と同期してレーザがオン・オフされます。これにより、レーザの反射光が消えた瞬間を切削力の測定開始時刻として、画像情報と加工情報を関連付けています。

4. 結果の解析
得られた画像情報と切削力データを用いて、例えばチッピングなどが認められた場合、その直前の加工情報を解析することで、損傷の原因を特定することができます。

この一連の方法により、湿式切削中における工具の状態をリアルタイムで監視し、精度の高い加工情報を得ることが可能になっています。

ストロボの使用により高速度カメラが不要になるのはなぜですか?

ストロボの使用により高速度カメラが不要になる理由は、ストロボが工具の回転に同期して閃光を発することで、高速で回転する工具が仮想的に停止しているように見える効果が得られるためです。

具体的には、ストロボの閃光を工具の回転に正確に同期させることで、同じ位置にある工具が連続して撮影されるため、工具が実際には回転しているにもかかわらず、まるで停止しているかのように観察できます。これにより、工具の状態を詳細に確認することができ、高速度カメラのような特別な装置を使用しなくても、高速回転する工具の詳細な観察が可能になります。

この方法は特に、湿式切削のように工具が高速で動いている環境において、効果的な工具監視を行うために有効です。

TTL信号とは何ですか?

TTL信号とは、「Transistor-Transistor Logic」信号の略で、デジタル回路で使用される信号形式の一つです。主に、電子機器やコンピュータでオン・オフの信号を伝達するために使用されます。

特徴としては以下の通りです:

電圧レベル:通常、TTL信号では、0Vが「ローレベル(Low)」を示し、5Vが「ハイレベル(High)」を示します。このように、2つの明確な電圧レベルでオン・オフを表現します。
高速性:TTL信号は、高速でオン・オフの状態を切り替えることができるため、タイミングが重要な電子回路で広く使用されています。
信号の制御:TTL信号は、機器間の同期を取るためにも使用され、例えば、カメラのシャッターやストロボの閃光を正確なタイミングで制御するのに利用されます。
このTTL信号を用いることで、外部の機器(例えばレーザやカメラ)を正確なタイミングで制御でき、加工情報の取得や画像のキャプチャーを同期させることが可能になります。