吉田直立ボール盤 YD3‑65N の使い方と仕様
機械の概要
吉田鉄工所の YD3‑65N は大型の直立ボール盤(upright drill press)で、工作物に垂直な穴を開けることやタップ立て・ボーリング加工などに対応します。一般的な卓上ボール盤よりも高剛性で大きな穴径まで加工でき、金属加工現場や学校の工作室で広く使われています。資料によると、直立ボール盤は卓上型に比べて穴あけ能力が大きく、主軸端はモールステーパ4番(MT4)になっており、大径ドリルはソケットやスリーブを介して取り付けるtech.sci.nagoya-u.ac.jp点が特徴です。
主な仕様
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スイング(テーブル中心と主軸中心の距離×2) – 約 650 mmk-smk.co.jp。これにより大きなワークをセットできます。
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穴あけ能力 – S45C鋼で φ50 mmk-smk.co.jpまで、ボーリング加工は 120 mmk-smk.co.jpまで可能です。
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タップ能力 – S45C鋼で M30k-smk.co.jpのめねじ加工に対応します。
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主軸テーパ – MT4k-smk.co.jp。大径ドリルやタップを直接取り付けられます。
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主軸ストローク – 250 mmk-smk.co.jp。
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回転速度 – 12段変速で 75〜1800 rpmk-smk.co.jp。速度変更レバーによって広い範囲の加工条件に合わせられるtech.sci.nagoya-u.ac.jp。
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自動送り – 6段の送り量(0.05〜0.40 mm/回転)を選択できるk-smk.co.jp。自動送りレバーで送り速度とタッピング動作を切り替えられ、正転・逆転を瞬時に切り替えることができるtech.sci.nagoya-u.ac.jp。
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テーブル – 直径 600 mmk-smk.co.jpの丸テーブルで、上下移動量は 410 mmk-smk.co.jp。T溝付きでステップクランプなどにより工作物を強固に固定できるtech.sci.nagoya-u.ac.jp。テーブルは中心を軸に旋回するため、裏側の固定クランプで回転をロックするtech.sci.nagoya-u.ac.jp。
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モーター – 2.2 kW(4極)k-smk.co.jp。
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寸法 – 機械高さ約 2390 mm、設置面積 540×940 mm、重量 850 kgk-smk.co.jp。
使用前の準備
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設置と安全確認 – 機械が床に固定され、周囲に十分な作業空間があることを確認します。テーブルや主軸に切りくずやゴミがないかほうきやウエスで清掃する。
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工作物の固定 – 小さな部品はバイスに挟み、手で押さえるだけでも穴は開きますが、大きな部品はT溝にステップクランプ、ライナ、ブロック、ジャッキ、Vブロック等を使ってしっかり締め付ける。直立ボール盤のテーブルはT溝付きなのでフライス盤用のクランプを利用できるtech.sci.nagoya-u.ac.jp。テーブルを旋回させる場合は裏側の固定クランプを緩め、位置決め後に確実に固定するtech.sci.nagoya-u.ac.jp。
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ドリルの取り付け – ドリルやタップを付け替える前に主軸、シャンク、スリーブ、ソケット、ドリルチャックを拭き、内部の切りくずを除去する。ドリルのタングを主軸の抜き穴に合わせて力強く押し込んで装着し、ドリルチャックをドライブキーで強く締める。主軸端がMT4なので、大径ドリルは直接装着し、細径ドリルはソケットやスリーブを使用するtech.sci.nagoya-u.ac.jp。装着後、主軸を空回しして振れがないことを確認する。
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テーブルの高さと位置合わせ – テーブルの高さをハンドルで調整し、ドリル先端をポンチマークに合わせる。直立ボール盤のテーブル上下動は左右のハンドルで行い、固定ハンドルを締めて位置をロックするtech.sci.nagoya-u.ac.jp。
回転数と送りの設定
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回転数の選択 – ドリル径が小さいほど回転数を高く、大きい径や硬い材料では遅く設定するのが基本です。直立ボール盤には速度変更用レバーがあり、12段の回転速度(YD3‑65Nでは75〜1800 rpm)を選べますk-smk.co.jptech.sci.nagoya-u.ac.jp。加工する材質とドリル径に合った適切な回転数は機械に貼付されている表や取扱説明書を参照し設定します。
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送り量の選択 – YD3‑65Nは 6段の自動送り(0.05〜0.40 mm/回転)に対応していますk-smk.co.jp。回転速度と同様、ドリル径や材質に合わせて適切な送りを選択します。
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微動ハンドルの活用 – 大口径穴やボーリング加工では、微動ハンドルを使うと送りを均一にできるtech.sci.nagoya-u.ac.jp。微動ハンドルは通常の上下動レバーを外側に倒すと機能し、ウォームギアで微細な送りが行えるため精密なボーリング加工に適するtech.sci.nagoya-u.ac.jp。
自動送りとタップ加工
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自動送り – YD3‑65Nは自動送りレバーで送り速度の設定とモード切替えを行います。ドリル径と材質から適切な回転数と送りを決め、自動送りレバーで機械送りを設定するtech.sci.nagoya-u.ac.jp。自動送りをかけた状態では、作業者は切削状況を監視し、切削油を注油しながら加工を進めます。所定の深さに到達したら、ストップ機構(テーブル側の目盛リングやドッグ)により自動停止します。深さ調整の目盛リングは主軸の側面にあり、下穴深さやタッピング深さを設定します。
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タップ加工(ねじ切り) – 自動送りレバーにはタッピングモードがあり、正転・逆転を瞬時に切り替えることでタップ加工が行えますtech.sci.nagoya-u.ac.jp。タッピングを行う手順は次のとおりです。
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下穴あけ:タップ呼び径の80〜90%程度の下穴径をドリルであけます(KYUSHU大の説明書にも同様の記述があります)。
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タップモードに切替え:切替スイッチをタップ位置に廻し、タップ専用の送りを選択します。自動送りレバーを操作して正転でタップをねじ込み、設定深さで自動的に逆転し上昇しますtech.sci.nagoya-u.ac.jp。
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引き抜きと仕上げ:所定深さまでねじが切れたら自動で逆転して上昇し、タップが完全に抜けた後スピンドルを停止します。残りの山は手回しで切り、めねじを完成させます。
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実際の穴あけ手順
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位置決め – 加工する穴の中心にケガキ線やポンチでマーキングし、正確な位置決めを行う。で示されたように、テーブルの高さとドリルの先端を調整し、ポンチ穴と一致させます。
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回転開始と送り – 主軸を回転させ、ドリルの振れがないことを確認したら徐々にドリルを下ろします。最初は軽く穴をもみつけして位置を再確認し、その後ゆっくりと進めます。自動送りを使用する場合は、所定の送り量に合わせてレバーを設定し、切削油を十分に供給しながら加工します。
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貫通時の注意 – 貫通直前に切削抵抗が減るので送りを減速し、工作物やテーブル・取付具が傷つかないよう注意します。真鍮や銅など柔らかい材料では下穴をあけずに貫通させるとバリが大きく危険なので、必ず下穴加工を行います。
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仕上げとバリ取り – 穴加工後はバリを取ります。穴径より少し大きいドリルや面取りカッターを軽く手で回してバリを取る方法が一般的です。加工が終わったら切りくずを除去し、テーブルや周囲を清掃します。
安全上の注意
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刃物の状態 – 切れない刃物は事故の原因になるため、使用前に刃の状態を技術職員に確認してもらう。
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回転数と送りの適正化 – 穴径に応じて回転数を調整し、確実に注油して潤滑と冷却を行う。
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工作物の固定 – 工作物を手に持ったまま加工してはいけません。万力やクランプでしっかり固定し、特に薄い材料は危険。
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作業中は手や頭を近づけない – 機械動作中は手袋をはめての作業は禁止です。髪や服が巻き込まれないよう姿勢を低く保ち、安全を確保する。
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作業環境を整える – テーブルの上にウェスや工具を置かない。回転部に巻き込まれたり飛散する危険がある。
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整理整頓 – 作業終了後は切りくずを除去し、周囲を整頓して次の作業に備える。
まとめ
吉田鉄工所の YD3‑65N は、最大 φ50 mm の穴あけと M30 のタップ加工を可能にする直立ボール盤です。主軸端が MT4 のため大径ドリルやボーリングツールが使用でき、速度変更用レバーにより 12段の回転数、自動送りレバーで 6段の送り速度 が選択できますk-smk.co.jptech.sci.nagoya-u.ac.jp。微動ハンドルや自動送り機構、正転・逆転切替えによるタッピング機能など、厚板や大口径の穴加工に便利な機能が備わっていますtech.sci.nagoya-u.ac.jp。使用時は工作物をしっかり固定し、適切な回転数・送りと潤滑を選択し、安全に注意しながら作業を行ってください。
タップ加工で深さ設定はできますか?
はい、YD3-65N ではタップ加工時に “実質的に深さ設定ができます”。 ただし方式は機種ごとに違い、YD3 系は タップ専用機のようなリミットスイッチ式ではなく、スピンドル自動送り(オートフィード)側の「ドッグ(ストッパ)」とモード切替で深さを制御する方式 です。✅ YD3-65N のタップ加工:深さ設定の仕組み
直立ボール盤の一般的な構造として、タッピング時は次の機能が使えます:### ① 自動送り(オートフィード)+タッピングモード
名古屋大学の直立ボール盤説明書によると、 直立ボール盤の自動送りレバーには タッピング動作(正転→逆転)を自動切替するモード が備わっています。自動送りレバーでは、送り速度の選択とタッピング動作の切替を行える。 正転・逆転を瞬時に切り替えてタップ加工が可能。この切替が発生するタイミングを決めるものが ストロークドッグ(機械側のストッパ) で、 スピンドルが設定位置に到達すると 自動的に逆転に切り替えて上昇 します。
✅ ② 深さ設定(ストロークドッグ)の構造
YD3-65N は「ギアヘッド直立ボール盤」であり、 スピンドル横に上下位置を制限する「ドッグリング」が付いているタイプ が多いです。 これを上下に回して◾ 下限ストローク(タップの加工深さ)
◾ 上限ストローク(戻り位置)
を設定できます。 タップが下限ドッグに触れると: ➡ 主軸が自動的に逆転 → タップが抜ける → 上限で停止(または正転復帰) という動きになります。🔧 ③ 深さ設定の手順(一般的な YD 系)
- タッピングモードへ切り替え (回転切替レバーを「TAP」へ)
- 送り量 f(mm/rev)を選択 (0.05–0.40mm/rev の6段階)
- ストロークドッグ(ストッパ)を調整
- 加工したい深さ分だけ下のドッグをセット
- 上限位置も任意で調整可能
- 軽く手送りで位置を合わせる (最初のタッチまで)
- スタートすると、設定深さで自動逆転 → タップ抜け
🧩 ④ 注意点(非常に重要)
✴ タップは必ず 専用タッピングチャック を使用
(固定チャックは折損の原因)✴ YD3-65N は深さ設定できるが「タッピングマシンほど高精度ではない」
精密 ±0.1mm の深さ制御は困難。 一般的には ±0.3〜0.5mm 程度の精度。✨ 結論
▶ YD3-65N はタップ深さ設定が可能です。
「自動送り+深さストッパ(ドッグ)+タッピングモード」で行います。必要なら、
- 写真付きでドッグの位置説明
- 具体的な深さ設定手順
- タッピング時の最適送り条件 も作成できます。





