[解答]③
参考
PID制御
PID制御とは
自動制御の主力「PID制御」とは
答え:
ア=「定常偏差の除去」/ イ=「応答性の向上」
なぜ?
- PI制御
伝達関数 (K_P + K_I/s)。(s=0)(定常)でゲインが無限大(積分の極)になるため、目標値に対する定常偏差が 0 になる(タイプ数が1つ増える)。したがって 「定常偏差の除去」 に有効。
- PD制御
伝達関数 (K_P + K_D s)。微分項は位相進み(リード)を与え、位相余裕・減衰比が増えて立上りが速く、オーバーシュートが抑えられる。すなわち 「応答性の向上」 に有効。
※PDは定常ゲインを増やさないので、定常偏差の除去はできない(Pと同程度)。
他の選択肢が不適切な理由
- PIで応答性の向上:Iを強くすると遅れが増え、むしろ応答は鈍りがち(オーバーシュートや振動化の原因)。
- PDで定常偏差の除去:微分は (s) に比例するため低周波(定常)では効かず、定常偏差は消えない。
- むだ時間の低減:コントローラ単体では“むだ時間そのもの”は削れません(影響を軽減して応答を良くすることはあるが、直接の目的語としては不適切)。
以上より、
ア=定常偏差の除去、イ=応答性の向上 が最も適切です。
積分制御ではsでわった形に、微分制御でらsをかけた形になるのですか
結論から言うと:
✅ なぜ I(積分)=「1/s」?
✅ なぜ D(微分)=「s」?
これは
ラプラス変換の性質そのものから自動的に出てきます。
✅ 1. ラプラス変換の基本ルール(超重要)
微分のラプラス変換:
[
\mathcal{L}{ \dot{f}(t) }= sF(s)-f(0)
]
積分のラプラス変換:
[
\mathcal{L}\left{\int_0^t f(\tau)d\tau\right}=\frac{1}{s}F(s)
]
つまり、
| 動作 |
時間領域 |
ラプラス領域 |
| 微分 |
(\dfrac{df}{dt}) |
(sF(s))(初期値を無視すれば) |
| 積分 |
(\displaystyle\int f dt) |
(\dfrac{1}{s}F(s)) |
この対応が
PIDの伝達関数で 1/s や s が登場する理由のすべて。
✅ 2. PID制御の時間領域とラプラス領域の対応
● P制御(比例制御)
[
u(t)=K_P e(t)
]
ラプラス変換:
[
U(s)=K_P E(s)
]
● I制御(積分制御)
[
u(t)=K_I\int_0^t e(\tau)d\tau
]
ラプラス変換すれば
[
U(s)=K_I \cdot \frac{1}{s}E(s)
]
✅ だから
I制御は ( \displaystyle \frac{K_I}{s} ) という形になる。
● D制御(微分制御)
[
u(t)=K_D\frac{de}{dt}
]
ラプラス変換:
[
U(s)=K_D\bigl(sE(s)\bigr)
]
✅ だから
D制御は (K_D s) になる。
✅ 3. PID制御器の伝達関数がこうなる理由
PID制御器は
[
u(t)=K_P e(t)+K_I \int e(t)dt + K_D\dot{e}(t)
]
ラプラス変換すると
[
U(s)=\left( K_P+\frac{K_I}{s}+K_D s \right)E(s)
]
よって PID コントローラの伝達関数は
[
\boxed{
G_c(s)=K_P+\frac{K_I}{s}+K_D s
}
]
この式は「微分は s」、「積分は 1/s」という
ラプラスの変換則から“自然に”生まれた結果。
✅ 4. なぜこうなるのか(直感)
● 微分は“変化の速さを見る”
→ 高周波成分が強調される
→ s が大きいところで増幅
→ →
s倍される
● 積分は“ゆっくりの変化を見る”
→ 低周波成分が強調される
→ s が小さいと効きやすい
→ →
1/s 倍される
すごく直感的に:
| 成分 |
低周波 |
高周波 |
| I(1/s) |
強く効く |
弱い |
| D(s) |
弱い |
強く効く |
だから
- I:定常偏差の除去(低周波が得意)
- D:応答性や安定化(高周波が得意)
という PID の性質につながります。
✅ まとめ
積分 → ラプラスすると 1/s
微分 → ラプラスすると s
だから
- I制御 → (K_I/s)
- D制御 → (K_D s)
- PID → (K_P + K_I/s + K_D s)
となる。
すべて
ラプラス変換の性質そのものから出てくる自然な結果です。
必要なら:
✅ ラプラス変換の証明
✅ PID の周波数特性(Bode線図)
✅ 1/s や s が制御性に与える影響(位相やゲイン)
も続けて詳しく説明できます!
それぞれの特徴がなぜそうなるのか解説して下さい
了解!
ここでは
P / I / D の3つが、それぞれ“なぜ”その特徴を持つのかを、
数学+物理+直感の3つの視点から
しっかり腹落ちする形で解説します。
✅ 全体マップ(まずは結論を一言で)
| 制御 |
ラプラス |
周波数特性 |
どんな働き? |
| P |
(K_P) |
全周波数で一定 |
とりあえず“力を入れる”基礎 |
| I |
(K_I/s) |
低周波で強い |
定常誤差を消す“粘り” |
| D |
(K_D s) |
高周波で強い |
速い変化を抑える“予測” |
では、ここからひとつずつ
**「どうしてそうなるの?」**を深く掘ります。
✅ 1. P制御(比例:Kp)
▶ 特徴:
- 誤差に比例した操作
- 速く反応する
- でも 定常偏差は残る
▶ なぜ?
P制御は
[
u(t)=K_P e(t)
]
つまり
誤差そのものだけを見て動く。
- 誤差が大きい → たくさん力を入れる
- 誤差が小さい → 力が弱まり、0にはならない
だから
系に摩擦や外乱があると“誤差が0だと力を出せない”。
結果:
✅ 応答は速い
❌ でも定常偏差が残る(本質的に)
Pは「とりあえず押す係」。
✅ 2. I制御(積分:Ki / s)
▶ 特徴:
- 定常偏差を必ず0にできる
- でも遅れて動く(動きが鈍くなる)
- 使いすぎると振動・オーバーシュートの原因
▶ なぜそうなるの?
ラプラスでは
[
\frac{K_I}{s}
]
これは
低周波領域で無限大(s→0で∞)。
つまり
に対して
ものすごく強く反応する。
だから
✅ 定常偏差(低周波の誤差)は必ず消える
❌ しかし遅い誤差に強すぎて、
“反応が遅く、ねばっとした挙動” になる。
さらに
ので安定性が悪くなり、振動しやすくなる。
I制御は
“誤差を貯めてドン!”の海の底みたいな力。
しっかり効くが、重たい。
✅ 3. D制御(微分:Kd s)
▶ 特徴:
- 応答がシャキッとし、速くなる
- 振動やオーバーシュートが減る
- ただしノイズに弱い
▶ なぜ?
D制御は
[
K_D s
]
これは
高周波領域で大きくなる。
高周波とは
つまりD制御は
✅ “速い変化” にめちゃくちゃ敏感。
(変化の傾きを見て「ヤバい」と察してブレーキをかける)
その結果:
✅ 応答性が上がる(立上りがよくなる)
✅ オーバーシュートが減る
✅ 系が落ち着く(減衰が増える)
ようするに D は
「未来を予測してブレーキをかける頭の良い制御」
例:
車のアクセルを踏んでいて、
スピードが上がりすぎる“気配”を感じて足を緩める感じ。
✅ まとめ:P/I/D の特徴はラプラス特性そのものから生まれる
● I = 1/s → 低周波で非常に強く効く
→ 定常偏差をゼロにする力を持つ
→ しかし遅れる(位相が −90°)
● D = s → 高周波で強く効く
→ 変化を抑えて応答性アップ
→ でもノイズも増幅する
● P = K → 全帯域で一定
→ 基本の力
→ 単体では偏差を0にできない
✅ 超直感図(文章版)
周波数が低い(ゆっくり) ───────────→ 高い(速い)
│
I(1/s) ←←←←← めちゃ効く 弱い
P(定数) ずっと同じ
D(s) 弱い →→→→→ めちゃ効く
この“効く場所”の違いが
P / I / D の性格そのもの。
必要なら:
✅ PID の Bode線図で見る性質
✅ 物理比喩でのイメージ(バネ・ダンパ)
✅ PIDのゲイン調整がどう影響するか(Kp, Ki, Kd の役割)
なども解説できます!