拡大する再エネ市場に求められる「理想的な」蓄電池
再生エネルギー活用がグローバルで加速する中、安定した電力供給実現のため、長周期用途の電力貯蔵用電池へのニーズが高まっている。両社によれば、長周期用途の電力貯蔵用電池の世界市場は、2019年の3000億円規模から2030年には8000億円規模にまで成長することが見込まれているという。

 

ただ、長周期用途の電力貯蔵用電池としては、有力視されているリチウムイオン電池においてもリサイクル性や安全性、コスト面で課題があるなど、求められる要件(エネルギー密度、設置スペース、寿命、リサイクル性、安全性、トータルコスト)を全て満たすものは存在しないという。そうした中で両社は、リチウムイオン電池よりリサイクル性や安全性に優れた特性を持つ鉛電池に着目。これをバイポーラ構造とすることで、エネルギー密度やコストなどの課題を克服し、「全要件を満たす理想的な電力貯蔵用蓄電池を実現した」としている。

 

メリット・デメリット

新たな技術で広がるお客様ニーズにジャストフィット
バイポーラ型蓄電池は、1枚の電極基板の表と裏にそれぞれ正極と負極を有するシンプルな構造が特徴です。そのため、従来の鉛蓄電池と比較して材料削減が可能であり、また、体積当たりの容量の向上により重量エネルギー密度は従来の鉛蓄電池の約2倍となります。さらに、電極基板の積層化により設計自由度の高い電池構成が可能となりコスト競争力改善も期待できます。本製品の投入により、2030年には1.5兆円規模に迫るとされる電力貯蔵用蓄電池市場(長周期用途は約半分程度と想定)をはじめ、これまでにないアプリケーションやシーンとの組み合わせにより新たな価値を提供します。また、本製品は、ピークシフト目的の長周期対応で、0.2CA充放電特性は電力貯蔵用リチウムイオン電池に匹敵し、経済性も持ち合わせた電力貯蔵用蓄電池を求める電力会社様、特定目的会社様、EPC事業者様、機器メーカー様等のニーズに応えます。

電力貯蔵用リチウムイオン蓄電池より優位な安全性とコスト
本製品は、電力貯蔵用リチウムイオン蓄電池との比較において、消費電力量当たりの単価は50%以下となります。また、稼働時も空調レスで、エアコンによる温度管理コストの削減も可能で、トータルコストを1/2以下に抑えることが可能です。さらに、発火や火災という安全性の点で大きな優位性と製品ライフを通じての高い信頼性を備えており、設置スペース性でも優れています。リサイクルのシステムが確立されている鉛蓄電池の利用拡大は、SDGsの達成に向けても有効であることから、古河電工グループでは、主力商品である「UltraBattery™」の技術を適用し、より高性能な製品開発を行っていく予定です。

消費電力当たりの単価は、リチウムイオン蓄電池と比較し50%以下となるうえ、鉛電池の特性から、リチウムイオン蓄電池の場合に求められる空調設備も削減できるなど、初期投資、ランニングコストの面でのメリットもある。これらの結果、トータルコストはリチウムイオン電池と比較し2分の1以下を実現している。このコストについては、揚水発電の設置コストと同等(2万2000円/kwh)を目標としており、「開発が順調に進めば同等のコストのものが提供できる」としている。

 

構造・性能

今回発表したバイポーラ型蓄電池は、1枚の電極基板の表と裏にそれぞれ正極と負極を有するシンプルな構造が特徴。薄い鉛箔を集電体としており、従来の鉛蓄電池と比較し金属材料を削減できることなどから、大幅な低コスト化を実現。同時にその構造から、従来の鉛蓄電池と比べ体積エネルギー密度は約1.5倍、重量エネルギー密度は約2倍を実現するという。単電池のエネルギー密度としてはリチウムイオン蓄電池の方が優れているものの、リチウムイオン蓄電池の場合は離隔距離の規制などがあることから、「設置面積当たりのエネルギー量はバイポーラ型蓄電池が上回る」としている。充放電特性は0.2CAで、リチウムイオン蓄電池に匹敵する。

バイポーラ型の鉛蓄電池の開発自体は以前から行われているが、古河電池シニアフェロー、古川淳氏は、「技術的なハードルから、これまで実用化されてこなかった」と説明する。具体的には主に、「鉛箔の薄膜化と長寿命の両立」「樹脂ポレートの成形と接合技術」「鉛箔と樹脂プレートの異種材料接合」という3つの課題があった。

「詳細は明かせない」(両社)というが、古河電気工業のメタル/ポリマー技術および古河電池の電池/加工技術を駆使することでこれらの課題を解決し、「長年、実用化困難とされたバイポーラ型蓄電池の量産実用化のめどが立った」としている。

もっと知るには・・・https://www.furukawa.co.jp/release/2020/ene_20200609.html