https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/62/2/62_2_236/_pdf/-char/ja
この論文は、「セラミックスとガラスの多目的延性モード加工機械の開発」について述べています。この機械は、硬くて脆い材料(セラミックスやガラス)を延性モードで超精密に加工できるように設計されています。以下は要約です。
1. まえがき
本研究の目的は、セラミックスやガラスを複数の加工方法(切削、研削、研磨)によって延性モードで加工できる機械の試作とその実現です。既存の理論と比較しながら、延性モード加工のための微小塑性領域の利用についても言及されています。
2. 超磁歪アクチュエータの試作
超磁歪材料を用いたアクチュエータを開発しました。これは、微小位置決め装置として機能し、超精密な加工が可能です。特に、高周波数領域での使用を可能にするために材料を薄板積層化するなどの工夫がなされています。
3. 超精密研削加工機械
この機械は、超磁歪アクチュエータと電歪アクチュエータを組み合わせて、広範な加工領域をカバーしています。主軸には東芝機械製の超精密空気静圧スピンドルを用いており、振動絶縁が施されています。
4. セラミックスの延性モード加工
SiC、Si3N4、ZrO2などのセラミックスを用いた研削加工の結果が示されています。これらの材料は、延性モードで加工され、き裂のない表面が得られています。
5. ガラスの延性モード加工
BK7ガラスとZerodurを用いた研削加工の結果が示されています。これらの材料も延性モードで加工され、き裂のない表面が得られていますが、セラミックスと比較して加工領域が狭いことが分かりました。
6. 結言
本研究により、セラミックスとガラスの延性モード加工を可能にする機械の有効性が確認されました。超磁歪と電歪材料を用いたアクチュエータにより、nmオーダーの位置決め精度が実現されました。
この論文は、硬くて脆い材料の加工技術の発展に寄与する重要な研究です。
き裂破壊の過程を教えてください
き裂破壊の過程
き裂破壊の過程は、弾性、塑性、き裂破壊の順に進行します。以下にその詳細を説明します。
弾性変形:
材料に力が加わると、まず弾性変形が発生します。この段階では、変形は力を取り除けば元に戻る性質を持ちます。
塑性変形:
力が増大すると、弾性限界を超えて塑性変形が発生します。塑性変形は永久的な変形であり、力を取り除いても元には戻りません。この段階では、微小な塑性変形が材料内で発生し、延性モード加工が可能になります。
き裂破壊:
さらに力が増大すると、材料内部でき裂が発生し、それが進展していきます。この段階で発生するき裂破壊は、材料が急激に壊れる原因となります。き裂が発生し進展する過程は、延性破壊と脆性破壊に分類されます。
延性破壊は、き裂進展前に大きな塑性変形を伴い、比較的エネルギーを吸収しやすいです。一方、脆性破壊は、塑性変形が少なく、急激にき裂が進展し、エネルギー吸収が少ない特徴を持ちます。
この研究では、延性モードでの加工を実現するために、微小な塑性変形を利用して、き裂が発生しない加工条件を見出しています。
図11に示されているように、加工条件によって塑性流動領域と延性破壊領域が整理されており、これにより延性モードの加工が可能となります。
参考文献
江田 弘, 佐橋 政司, 小林 忠彦: 超磁歪アクチュエータに関する研究, 精密工学会誌, 56, 2, (1990) 388.
P. N. Blake and R. O. Scattergood: Ductile Regime Machining of Germanium and Silicon, J. Am. Ceram. Soc., 73, 4, (1990).
以上が、き裂破壊の過程についての要約です。具体的な詳細や実験結果については、論文全体を参照してください。
超磁歪アクチュエータと圧電式アクチュエータについて教えてください
超磁歪アクチュエータと圧電式アクチュエータは、微小な位置決めや超精密加工に用いられるデバイスです。それぞれの特徴と用途について詳しく説明します。
超磁歪アクチュエータ
特徴
材料: 主にTb-Dy-Fe(テルビウム-ジスプロシウム-鉄)合金が使用される。
変位出力: 100〜1000倍の変位出力が可能。
荷重出力: 10〜50倍の荷重出力が可能。
周波数応答性: 渦電流によるジュール熱損失のため、1kHz以上の周波数領域で使用する際に制限がある。
構造: 薄板を積層することで、渦電流損失を低減し、高周波数での動作を可能にしている。
用途
超精密加工: nmオーダーの位置決め精度が求められる加工に適している。
高周波振動: 高周波での振動アクチュエータとしても利用可能。
圧電式アクチュエータ
特徴
材料: 主にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が使用される。
変位出力: 圧電効果により、電圧を加えると変形する性質を持つ。
周波数応答性: 高周波数での応答が優れており、超磁歪材料よりも高周波での動作が得意。
構造: 一般的に、薄い圧電材料を積層した構造を持つ。
用途
精密位置決め: 高精度の位置決めが必要な応用(例: 光学機器の調整)に適している。
振動制御: 高周波数での振動制御やフィードバック制御に使用される。
比較と応用
超磁歪アクチュエータは、変位出力と荷重出力に優れていますが、高周波での動作には制限があります。主に、広範囲な変位が必要な場合や、強力な振動が求められる用途に適しています。
圧電式アクチュエータは、高周波数での応答に優れ、精密な位置決めや振動制御に向いています。変位量は超磁歪アクチュエータに比べて小さいですが、高速応答が求められる用途で効果的です。
結論
両者は互いに補完し合う特性を持ち、用途に応じて使い分けることが重要です。超精密加工機械では、これらのアクチュエータを組み合わせることで、より高い精度と効率を実現しています。
この論文で位置決めを行うための粗動装置と微動装置について教えてください
粗動装置と微動装置について
論文では、超精密加工を実現するために使用される粗動装置と微動装置について詳細が述べられています。以下にそれぞれについて説明します。
粗動装置
概要: 粗動装置は、比較的大きな移動を行うための装置です。主に粗加工や仕上げ加工など、幅広い加工領域をカバーするために使用されます。
構造: 主軸は超精密空気静圧スピンドル(東芝機械製ABC-60M)が使用されており、振動絶縁が施されています。このスピンドルは、空気静圧軸にモーターを内蔵しており、マグネットカップリングと伝動軸を取り除くことで高い精度を実現しています。
使用目的: 粗動装置は、大きな位置決めが必要な場合や、加工物の大まかな移動を行う際に用いられます。
微動装置
概要: 微動装置は、極めて小さな移動を精密に行うための装置です。nmオーダーの位置決め精度を持つ装置として設計されています。
構造: 超磁歪アクチュエータと圧電式アクチュエータが並列に設置されており、変位量の大小に応じて適宜使い分けができます。圧電式アクチュエータは、主にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)材料が使用され、高周波数での応答に優れています。
超磁歪アクチュエータ: 大きな変位出力と荷重出力を持ち、100〜1000倍の変位出力、10〜50倍の荷重出力が可能です。主に変位拡大器として用いられます。
圧電式アクチュエータ: 高周波数での応答が優れており、nmオーダーの位置決めが可能です。具体的な仕様として、変位は15pm(100V)、最大押し込み力は1000N、剛性は55N/mm、共振周波数は23kHzです。
まとめ
粗動装置: 比較的大きな移動を行う装置で、主に粗加工や仕上げ加工に使用されます。
微動装置: 極めて小さな移動を精密に行う装置で、超磁歪アクチュエータと圧電式アクチュエータが使用されます。これにより、高精度な位置決めが可能です。
両者を組み合わせることで、広範囲な加工から超精密加工まで対応できるシステムが構築されています。