Fusion 360のライセンスと機能の比較
Autodesk Fusion(旧称 Fusion 360)は、クラウドを利用した統合CAD/CAM/CAE/PCBプラットフォームで、用途や利用者の状況に応じて複数のライセンスが用意されています。ここでは、代表的なライセンス(個人利用、スタートアップ、教育、商用、有償トライアル)ごとに利用できる機能と制限を調べました。情報はAutodesk社の公式サイトやサポート記事を中心に確認しました。
ライセンス別の概要
- 個人利用(Personal Use): ホビー用途や個人での非商用プロジェクト向けの無償ライセンス。利用は非営利のプロジェクトに限定され、年間1,000 USD未満の収益が条件とされています。高度な機能には制限があります。
- スタートアップ: 設立3年未満かつ年間売上が10万USD未満の企業を対象とした低料金ライセンス。基本的に商用ライセンスと同等の機能を利用できますが、電話やメールによるサポートと有料エクステンションは含まれません。
- 教育(Education): 学生や教育機関向けの無償ライセンス。ほぼ商用と同じ機能を利用できますが、ジェネレーティブ デザインや高度なシミュレーションに必要なクラウドクレジットが無制限ではないため、大規模な解析には制限があります。
- 商用(Commercial): プロフェッショナルや企業向けの標準ライセンス。CAD、CAM、CAE、PCB機能がすべて利用でき、複数ユーザーによるデータ管理やBOM(部品表)作成、クラウドレンダリングやクラウドシミュレーション等の機能が含まれています。ジェネレーティブ デザインやシミュレーションではクラウドクレジットの購入が必要です。
- 30日間無償トライアル(Free Trial): 商用ライセンスと同じ機能を30日間自由に試せるトライアル版です。CAD/CAM/CAE/PCBすべての機能にアクセスでき、エクステンションの試用も可能です。
個人利用ライセンスの機能と制限
個人利用ライセンスは「基本的な機能を無償で使えること」を目的としており、下記のような制限があります。
主な機能
- 標準的な設計と3Dモデリング – ホビー用プロジェクトに必要なCAD機能を利用できます。
- 基礎的な製造機能 – 2.5 軸・3 軸フライス加工や旋削加工、FFF方式の3Dプリント、板金などの基本的なCAM機能が含まれます。製造ワークスペースのシミュレーションも利用可能ですが、4軸・5軸など高度な機能やマシニングエクステンションは含まれません。
- 基礎的な電子回路設計 – 回路図2枚・基板2層・基板面積80 cm²までという制限付きでPCB設計が可能です。
- ローカルレンダリング – クラウドレンダリングは利用できませんが、ローカルPC上でのレンダリングは行えます。
主な制限
- ジェネレーティブ デザイン・高度なシミュレーション – ジェネレーティブ デザインやクラウドベースの高度なシミュレーション機能は含まれていません。でも、個人利用ライセンスではジェネレーティブデザインと高度なシミュレーションが利用できないと説明されています。
- ドキュメント・図面 – 2D図面は1シートまで、印刷のみ可能。
- ファイルのインポート/エクスポート – STEP、STL、OBJ、F3D、F3Z、IPT、FBX、SMT、SKP、スケッチのDXFなどに限られ、NX、CATIA、SOLIDWORKSなどのフォーマットは読み込み不可です。
- クラウドストレージ – 10件までのアクティブな設計ドキュメントしか編集できません。それ以上のファイルは「非アクティブ」として保存できるが、編集には別のファイルを非アクティブに切り替える必要があります。
- コラボレーション – 他ユーザーとの共同編集は行えず、共有リンクも閲覧専用でダウンロード不可。Product Design Onlineの説明では、他人をプロジェクトに招待できないため、ファイルをエクスポートして別ユーザーがインポートする方法が必要とされています。
- サポート – サポートはコミュニティフォーラムのみ。
スタートアップライセンスの機能と条件
スタートアップライセンスは小規模な製造業向けの特別プログラムで、応募により最大3年間利用できます。Autodesk公式ブログでは、申請要件として法人化済みで、プロフェッショナルなメールドメインとWebサイトを持ち、ベンチャーやエンジェル投資を受けているか自己資金による企業であること、年間売上が10万USD未満であることなどが挙げられています。
利用できる機能
- 完全なCAD/CAM/CAE/PCB機能 – スタートアップライセンスは商用ライセンスとほぼ同じ機能を提供し、設計・解析・製造・電子設計の統合環境を利用できます。
- クラウドベースのコラボレーションとデータ管理 – チーム全体でアイデアを共有し、クラウド上でプロジェクトを管理する機能を備えています。
- ジェネレーティブ デザイン・シミュレーション – 商用版と同様に利用できますが、クラウドクレジットの購入が必要です。
制限・条件
- 申請制であること – 要件を満たすスタートアップ企業のみが適用されます。2024年以降は3年間の利用後に更新できないとProduct Design Onlineで説明されています。
- サポート – 電話やメールによるサポートは付属しておらず、コミュニティフォーラムなどによるサポートが中心です。
- エクステンションは別料金 – マシニング拡張、シミュレーション拡張などの有料エクステンションは含まれていません。
教育ライセンスの機能と制限
教育ライセンスは学生や教育機関向けの無償ライセンスで、基本的な利用条件は非商用であることです。個人用ライセンスより多くの機能を利用できます。
利用できる機能
- 商用ライセンスに近い統合環境 – 設計、CAM、CAE、PCB機能をほぼ制限なしに利用できます。
- 個別または教室用ライセンス – 単一ユーザー用ライセンスとラボ向けライセンスがあり、1年間の利用が可能。
主な制限
- クラウドクレジットの制限 – 教育ライセンスでは無制限のクラウドクレジットが付与されないため、ジェネレーティブ デザインや高度なシミュレーション、レンダリングが制限される場合があります。Autodeskのサポート記事では教育ライセンスでは16クレジットを超えるジョブが実行できないことが記載されています。
- エクステンションの利用 – デザインや製造の有料エクステンションは含まれていない。
- サポート – 教育専用のサポートチームおよびコミュニティフォーラムによるサポートが提供されます。
商用ライセンスの機能
商用ライセンスは個人・法人を問わず利用でき、すべての基本機能と高度な機能を含みます。Autodesk公式サイトの比較では、商用ライセンスは以下の機能を提供すると記載されています。
- 包括的なCAM機能 – 2D加工から5軸まで対応可能なCAM機能を備えます。高度な加工戦略や検査などは別売りエクステンションで拡張できます。
- マルチユーザーによるコラボレーションとデータ管理 – クラウドベースのチーム共有機能を利用し、データ管理および権限管理が可能です。
- 統合された電子設計とPCB機能 – 回路図、基板設計、配線を統合した環境で設計できます。
- 自動化された図面作成とモデリング – 自動図面作成、パラメトリックモデリング、構成管理が行えます。
- 部品表(BOM)作成 – BOMの生成と管理機能が含まれます。
- クラウドレンダリングとクラウドシミュレーション – 高品質なレンダリングや応力解析などをクラウド上で実行できます。ジェネレーティブ デザインも利用可能ですが、トークン(クラウドクレジット)を購入する必要があります。
- サポート – 電話、メール、フォーラムおよびアプリ内サポートが提供されます。
- ファイルインポート/エクスポート – 主要なCADフォーマット(NX、CATIA、SOLIDWORKS、Creo、Inventorなど)を含むすべてのファイル形式に対応。
- 料金 – Autodesk公式サイトでは、1年版で680 USD、1か月版で85 USDなどの価格が提示されています。
30日間無償トライアル
無償トライアルは新規ユーザーがFusionの全機能を体験するためのライセンスです。公式サイトでは「CAD、CAM、CAE、PCBソフトウェアの機能すべてにアクセスできる」と明記されています。トライアル期間中は以下が可能です。
- 完全なCAD/CAM/CAE/PCB機能の利用。
- エクステンションの試用 – 期間中はマシニング、シミュレーション、デザインなど各エクステンションを試用できます。
- 学習リソースとコミュニティアクセス – 製品専門家による学習リソースやコミュニティへアクセスできる。
エクステンション(有料拡張機能)
Fusionには標準機能に加えて、特定分野を強化するエクステンションが用意されています。例えば「Machining Extension(製造拡張)」は3軸以上の高機能な加工や検査ツールを追加し、「Simulation Extension」はジェネレーティブ デザインや高度なシミュレーションの無制限実行を可能にします。商用ライセンスでは別料金で追加できますが、個人利用・教育・スタートアップライセンスには含まれていません。
ライセンス別機能比較表
以下の表に、主な機能や制限をまとめました。丸印(〇)は利用可能、三角(△)は制限付きまたは有料オプション、×印(×)は利用不可を示します。
| 機能/ライセンス | 個人利用 | スタートアップ | 教育 | 商用 | 30日トライアル |
|---|---|---|---|---|---|
| 設計(CAD)/基本3Dモデリング | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| CAM(2.5 軸・3 軸) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 高度なCAM(4軸/5軸・マシニング拡張) | × | △(有料エクステンション) | △(有料エクステンション) | △(有料エクステンション) | △(試用可) |
| 電子設計(PCB) | △(2枚/2層/80 cm²制限) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| ジェネレーティブ デザイン | × | △(クラウドクレジット必要) | △(クラウドクレジット制限) | △(クラウドクレジット必要) | 〇(試用期間中に利用可) |
| 高度なシミュレーション(FEA、CFD等) | × | △(クラウドクレジット必要) | △(クレジット制限) | △(クラウドクレジット必要) | 〇 |
| クラウドレンダリング | × | △(クレジット必要) | △(16クレジット制限) | △(クレジット必要) | 〇 |
| クラウドストレージ/コラボレーション | △(10件まで、共同編集不可) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| ファイルのインポート/エクスポート | △(限られた形式) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| サポート | フォーラムのみ | フォーラム | 教育サポート | 電話・メール・フォーラム | 専門家による学習リソース |
| 料金/期間 | 無料、3年更新制 | 1人150 USD/年、3年間 | 無料、1年ごとに更新 | 約680 USD/年 | 無料(30 日) |
まとめと選択のポイント
- 非商用の個人プロジェクトの場合は、個人利用ライセンスで十分です。基本的な設計・製造機能を利用でき、クラウド機能や高機能CAMなどが不要であれば費用をかけずにプロトタイプを作れます。しかし、10件のアクティブドキュメント制限やファイル形式の制限がある点に注意が必要です。
- スタートアップ企業は、スタートアップライセンスによって安価に商用ライセンスと同等の機能を利用できます。要件を満たす企業は、製品開発の初期段階で機能制限なく利用できるメリットがありますが、3年を過ぎると商用ライセンスへ移行が必要です。
- 学生や教育用途では、教育ライセンスが最適です。商用ライセンスに近い機能を無償で使えますが、シミュレーションやレンダリングのクラウドクレジットが制限されているため、大規模解析を行う場合は別途クレジットの購入が必要です。
- 企業やプロユーザーは、商用ライセンスを利用することで、全ての設計・製造・解析機能と公式サポートを得られます。さらに、高度な加工やシミュレーションが必要な場合は、目的に応じてエクステンションを追加できます。
- 導入検討中のユーザーは、まず30日間の無償トライアルで全機能を試してみると良いでしょう。トライアル期間中に作成したデータは、ライセンスを購入した後も継続して利用できます。
イメージで見るライセンス比較
以下の図は、Fusion 360の主要ライセンスを視覚的に比較したものです。各列はライセンス種別を表し、アイコンで主な機能の有無を示しています。
上記の比較と表を参考に、自身の利用目的や組織の状況に最も適したFusion 360のライセンスを選択してください。





